第119話 相容れぬもの
今回はノーデ→阿僧祇→ノーデでの視点です。そしてここまで見ていただいた人にはおなじみの、例の表記で切り替わります。
それでは本編、どうぞ。
「通行止め、だと。」
「そうだ。今から貴様は、この混沌とした世界を救う十勇士が一人、左中の守護者、鵜飼辰巳に、〝イセノ〟で敗北を喫する運命なのだ!」
鵜飼さんは堂々宣言、たいして阿僧祇は
「バカらしい、さっさとその車をどけろ。この道はそんなに広くないんでな。」
鵜飼さんの言葉を鼻で笑い、再びバイクに戻ろうとします。しかし、女性の方が引き留めます。
「おっと、それは困るなぁ。せめて話だけでもきかせてくれないと。」
「お前らに話すことはない。」
「そっちに話す気がなくても、こっちにはある。知ってる? 今、邪薔薇方面の道路は軒並み大混乱、こっちから邪薔薇にはいけないし、あっちからきた人も、アタシの知る限りあなただけ。せめて何が起こっているか、情報はしゃべってもらわないと。」
「俺は急いでいるといっただろ、それとも痛い目を見ないとわからないか。」
阿僧祇はバイクの後方に忍ばせた有弦刀に手をかけます。が、女性の方も強気です。何やら胸ポケットから取り出し私たちに見せます。
「アタシ、こう見えて警官なの。」
どうやら本物の警察手帳ですね。名前は、高木百舌。どこか見覚えがあると感じていましたが、鵜飼さんより一つ上の十指選、左人の方でしたか。
「今はまだ内々だから本部に報告はしてないけど、いざとなったらする。それに武力行使というなら……。」
そういうと彼女は背負っているケースを開けます。中身は細長い、管楽器のようなもの。それを刀のようにもち、阿僧祇に向けて言います。
「この場で拘束する。」
「おいおい、ただの楽器か。」
「そう見えるでしょ。でもこれは楽器兼警棒。かなり丈夫な自慢の一品ものよ。」
「チッ、女はみんなそういうのもってるのか。厄介だな。」
それが阿僧祇の本音。
彼はいくら相手が未知数でも、千草さんや秋津さんの剣をさばききる腕前なので、リアルの戦闘では勝てるかもしれません。しかしそれでは時間や体力を浪費します。私の知り得た情報(主に阿僧祇が自ら語ってくれた内容)でも、阿僧祇は今日一日で、金色の腕輪を湖から見つけ出し、おそらくその際にそれを守っていた主を始末、そして一誠の前に現れ私を奪取、その私を使って有弦復活と、実は相当な仕事をこなしています。ですから、面倒ごとは避けたいと考えているのです。
ゆえに導き出した答えは強硬突破。バイクにまたがり、エンジンを点火させます。しかし。
「逃げるのか?」
「……逃げる?」
「ああ、今のお前は我からも、自分の運命からも逃げているように見えるぞ。」
鵜飼さんのこの言葉に何か引っかかるところがあったのでしょうか。
「気が変わった。」
「勝負をする気になったか。」
「女の方はともかく、眼帯のお前は十指選だろ。まずはお前から、分からせてやるよ。」
「俺が勝てば、お前の知っていることすべて吐いてもらうぞ。」
「それはない。お前たちは俺に負け、その魂を有弦様の作る未来に捧げてもらおうか。」
ここでこの2人を処理する方向に舵を切ったようですね。「えっ、魂……?」と高木さんは動揺しているようですが鵜飼さんは相変わらずのマイペース。
「それはすべてこれが決めてくれるさ。」
彼は右手の包帯を外すと、腕輪とすでにセットされている技板があらわに。そして彼はそのうちの1枚、色つき技板を起動させます。
「さあ、選べ。表か裏か。当たった方が先攻だ。」
コイントス技板により出現した巨大コイン。これを映し出す装置はどうやら、あのバンに内蔵されているようです。
「裏だ。」
「では俺は表!」
そして出たのは……表。
「後攻か。」
そうつぶやき、阿僧祇も腕輪に技板をセット。
「そういえば、まだ貴様の名を聞いてなかったな。」
「お前に名乗る名などない。」
「そうか、ならナナシとでも呼ぼう。誇れナナシよ、お前が我の右手の九十一番目の餌食になる!」
先攻は鵜飼さん、勝負が始まります。
「【デウス、エクス、マキナ〝晴れ〟】」
Turn 1
Tatumi 0→5pt Asogi 0pt
【〝sunny〟Lv.1(S1)】(T.P)
R●●●●● R●●●●●
L●●●●● L●●●●●
変な掛け声だ。絶対こいつ、意味わかって言ってないだろ。
まあそれは置いといて。
「〝ツインパワー〟か。」
「ふふ、フハハハハハ。」
鵜飼は急に笑い始める。なんだコイツ、そんなに5pt得たのがうれしいのか。それとも、もう――。
「何を笑っている?」
「いやナナシ、本当に貴様は運がいい。まさか、1ターン目から我が特性を披露する日が来ようとは。」
特性か!
「天界の光明、地獄の業火、相反する力をその身に宿し龍よ、今ここに顕現せよ。」
わざわざ詠唱するのか。
「特性発動! パラドクス!」
鵜飼の詠唱により、背後に出現する巨大な龍、というよりは鳥に近いか。眩い光を放ち、形が定まっていない。特性発動のトリガーはおそらく〝ツインパワー〟だろう。
効果は、なんだ?
「そう身構えることはない、今はお披露目しただけだ。こいつは反発する力を制御できぬ、いわば不完全な状態だ。だが、いずれ完全となる。」
どうやらまだ効果は発動できないようだ。おそらくまだいくつか条件を満たす必要があるタイプか。特性がなにかは厄介だが、引き金になった〝ツインパワー〟が起こらないように警戒はしておくべきだな。
「【〝トリック〟】」
そしてまず、奴のポイントを奪う。
「【デウスエクスマキナ、〝晴れ〟】」
奪い返したり、〝シールド〟でポイントを消化したりもしないか。しかし、それは悪手だ。今の攻撃で俺は右手5か所がすべて固まった。
「【〝最高の手術〟】」
これで俺は10pt、対する鵜飼は0。
「【デウスエクスマキナ、〝晴れ〟】」
この攻撃で鵜飼も右手5か所をかける。俺と同じやり口をしようとしているんだろうが、一手遅い。
「【〝ブラックホール〟】」
暗黒よ、呑み込め。奴の手をすべて!
Turn 6
Tatumi 0pt Asogi 10→0pt
【〝black hole〟Lv.5(S1)】
R××××× R●●●●●
L××××× L○○○○○
阿僧祇の宣言で発生した黒い霧。そしてそれを見た鵜飼さんの背後の光の龍は
「ゴォォォォ。」
とうなります。何か、効果を発動できるということでしょうか。
「パラドクスよ、今はまだ、その時ではない。」
しかし、鵜飼さんは龍をなだめるかのようにそういいます。これで正式に攻撃が通り、鵜飼さんの指はすべて死滅。
「なんだ、その特性はこけおどしか?」
そして死滅した指が増えたということは。
「なら、こちらも特性発動だ。」
阿僧祇の宣言とともに出現する、3つの頭を持つ冥府の番犬。
「封殺の番犬!」
「なるほど、邪悪な波動はそいつから発せられていたのか。」
私にはただの迫力ある映像にしか見えませんが、鵜飼さんにはそう感じるのでしょう。
「お前の〝シールド〟を封じる。さあ、行け!」
阿僧祇の命令とともに、番犬は走り出し、あっという間に鵜飼さんの目の前に。3つある口の1つで鵜飼さんの右手にかぶりつきます。
「ぐあああああああ。」
直後あがる血しぶき。番犬が離れると鵜飼さんの右手は赤く、そしてもちろん技板1枚が黒く染まります。
「右手、右手があああ。」
「映像なのに大げさだな、だがその反応は見ていて爽快だ。」
一連の2人のやり取りを聞いて。
「なんだろう、この場にまともなのアタシしかいない気がする。」
思わず正直な感想を吐露してしまう高木さん。一応阿僧祇の頭の中に私もいるのですがね。
「どうした? このままじゃすぐに勝負はついてしまうぞ。」
阿僧祇は余裕が出たのか、煽り始めます。対して、鵜飼さんは右手を抑えながらも、闘志は消えていないようです。
「焦ることはない。勝負はまだ始まったばかりだ。」
するとまた、鵜飼さんは詠唱を開始。
「天界から降り注ぎし3つの光よ、今交わりて幻想を見せよ。」
彼が次に繰り出すのは。
「【〝幻惑の霧〟】」
特性VS特性の幕が上がる!
次回5/24までに更新予定、よろしくお願いします。
♦♦以下、少し裏話♦♦
また長くなります。読み飛ばしてくれても構いません。
今回はなんと22か月振りの登場、ブラックホールのお話。
今回の試合を組むにあたり、出そうと思って効果を見返したのですが、そこでほんの些細な問題が起こりました。
効果は25話以後の設定集を見ればわかりますが、相手の指すべてを5ターンの間死滅させる技です。しかしこの5ターンが設定集の修正前は相手のターン参照となっていました。でもそれはおかしい。なぜなら37話で一誠が自分のターン参照であるといっているからです。(作者もそのつもりで書いていました。)つまり、作者は2年近く設定集にうそを書いていたことになります。この場でも謝罪させてください。申し訳ございません。
あのときは連載始めたての頃でしたので、なかなかチェックが甘かった部分もありまして。しかし、「自分の」というたった3文字の修正でもこの作品にとっては結構重要で、特にこの先自分か、相手かの違いで大きく変わってくる場面もあるかも? しれませんので修正しておきます。また、他に修正箇所があれば気づき次第、適宜修正していく所存です。よろしくお願いします。




