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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第7章 オリエンテーション編Ⅱ
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第118話 トンネルの向こう側

今回は短め、ノーデ視点から。

それではどうぞ。

 2031年4月14日午後8時、旧邪薔薇(じゃばら)トンネル。その北口から、1台のバイクがトンネル内部に侵入します。

「やっとまともに動き出したな。」

 バイクに乗っているのはフード男こと、阿僧祇(あそぎ)。まあ今は黒いライダースーツに身を包んでいます。そしてその頭の中にいるのが私こと、ノーデです。

「まさか、有弦様の力でこのバイクとやらも動かなくなって、ここに来る直前まで押すことになるのは想定外だったが。」

 そんな阿僧祇の愚痴とは関係なく、バイクは突き進みます。このトンネルはもう使われていないため、照明はありません。バイクのヘッドライトのみが暗闇を照らします。

『あの邪気、いったい何なのですか?』

「さあな。俺も詳しくは知らないが、あの金色の腕輪には人の魂を保管できる。それはつまり、魂に紐づく特性をいくつかストックできるってことだ。だからあれも物体を止める力を持つ特性かなんかだろ。だからあれに触れれば人は動けない、物は動かない。」

 一仕事終え、目的の大半を果たしたからか、阿僧祇は口が軽くなっていますね。

「でもまさかこんな広範囲に、しかも電気的な信号を扱っている物体にも不調をきたすなんて、本当想定外だ。いや、さすが有弦様、か。ともかく今ごろ、邪薔薇と外をつなぐ他の道は、車が動かなくて大混乱だろう。」

 なるほど、だから人の全くいないであろう廃道を選んだわけですね。

『おかげで路面は最悪ですがね。』

「贅沢言うな。人目も気にしなくていいから一石二鳥だ。」

『しかし邪気が展開されたのは夕方、5時前でしたね。対してあなたが有弦と別れたのは2時半ごろ、普通にそこから一直線にくれば、遅くともここを3時半ごろには通過できたはずでしょう。それに幹線道路なら大事になる前でしょうから、もっと早く通過できたでしょうに。なぜわざわざ寄り道したのです?』

「いちいちうるさいな、お前。それともあれか、俺にとらわれている不満をぶつけたいのか。」

『それは……あります。』

「そこは認めるんだな。まあ、今は気分がいいから話してやるが。昼飯食べてなかったんだよ。それに俺はそばが好物だ。こんな山奥に行列のできる絶品そばの店があると知れば、食べに行かないわけがないだろう。」

 とはいいますが。A組やD1チームの次にまともに会うのは、阿僧祇の協力者だろうと踏んでいましたので、まさか行列に並んでいる人たちだとは。私の方が想定外です。

「それに、食べておきたかったのさ。人生最後かもしれないからな。」

 阿僧祇はこう嘆きます。恐らく彼は気にしているのでしょう。彼が敬愛する有弦から直々に死亡宣告を受けたことを。

「しゃべりすぎたな。これ以上は話さん。お前を福ノ山まで届けるまでは。」

 それ以降は私の言葉に耳を傾ける様子もなく、トンネルで反響するバイクのエンジン音と風切り音だけとなりました。

 今頃、一誠はどうしているでしょう。通常のオリエンであれば大浴場で湯につかる時間ですが、今はそれどころではないでしょうね。

 一誠のことだから最初はおそらく私を取り戻そうと動くはずです。しかし、一誠一人の力ではこの位置を見つけ出すのはまず不可能。加えてA組をはじめ魂を奪われる事象も発生し、スケールが思った以上に大きくなってきています。もしかすると、一誠ももう魂を奪われているなんてこともあり得ます。そうでないことを願ってはいますが。

 おそらく学校側も総力を挙げて学生を守り、現状打破を図るでしょう。一誠もチームで話し合い、一度頭を冷やして対策を練ってくれればいいのですが。一誠は前を見据えることはできますが、進む方向を間違える傾向はありますからね。

 まあここまでは一誠が私を助けたいと思っていることを前提に話を進めましたが、私としては私にかまわないで自分の安全を第一に考えてほしいものです。一誠が無事でさえあれば、私としてはそれで十分ですから。

 そうこう考えているうちに。

「長かったトンネルも出口だ。」

 南口の薄明かりが見えます。

 全長3キロのトンネル、それを抜けた先は――。


「車っ!」


 道一杯に行く手を塞ぐ、白いバン。

 阿僧祇は思わず大きくハンドルを切り、道の中央から大きくそれ、あわや崖から落ちる寸前のところで止まりました。

「誰だ! こんな場所に止めやがった奴は。」

「来たな、悪党っ!」

 この声、左目の眼帯、あの羽織っている上着、包帯を巻きつけた右手、すごい既視感。これは間違いなく、現十指選の左中、鵜飼さんです。

「うわっ、本当に来たよ。神辺さん、すごっ。」

 そしてもう一人、こちらは初見です。黒髪ポニーテールに、同じく黒のケースを肩から背負った成人女性があきれ顔で立っています。

「どうやら偶然ここに来た、ってわけではないようだな。」

 阿僧祇はバイクから降り、警戒しながら聞きます。対して鵜飼さんはマイペース。

「右手がうずいたんでな。」

「ほう……。」

「邪悪なる波動、それを感じた瞬間に、右手の力が抑えられなくなった。そして俺のこの左目が見せた。貴様とここで相まみえるこの瞬間がなァ。」

「……。」

 さすがの阿僧祇も返答に困っている模様。かくいう私も右手なのか、左目なのか彼の設定がよくわからないので戸惑ってはいますが。見かねて女性の方が説明します。

「あー、その反応、気持ちはわかる。アタシらはある人に言われてきた。不審人物がここを通るだろうから近くにいるアタシらで見張ってくれないかってね。」

「で、用件はなんだ。俺は先を急ぐんだが。」

「先を急ぐ必要などない。」

「なにっ」

 鵜飼さんのペースは乱れません。むしろ謎の安心感を覚えるくらいです。


「貴様は、ここで通行止めなのだから。」



思わぬ場所で、遭遇エンカウント

次回5/17までに更新予定です。よろしくお願いします。

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