第117話 5人で1つ
今日の更新は21:21というなんとも特別間のある更新のはず。
今回も前回からの続きです。というより実は前回と今回で1話にまとめる予定でしたが、思ったより長くなり分割というなんか久々のパターンです。
それでは一誠視点で本編どうぞ。
「もちろん、これはチーム5人で合意し、神に勝てる自信のある者たちだけだ。負けた時の無事は保証できない。それを踏まえてだ。」
会長がさっきの自身の発言に補足を入れる。しかし想定外の割り込みをされた八田先生も黙ってはいない。
「梶田君、考え直した方がいい。生徒を、ましてや一年を危険な目にあわすわけには……。」
「もちろん、俺たち生徒会で事態の収拾は図ります。が、相手は神と呼ばれた男だ。万が一ということもある。そこで次点での策も、打っておいただけですよ。」
「君の実力は認めている。だが、私は正直に言うと君たち生徒会を行かせるのも反対だ。実際何人かは様子を見に行って帰ってきていないそうじゃないか。私はね、生徒を危険に巻き込みたくはない。それに我々には守るべき生徒が大勢いる。だから教師陣として、宿舎で守りを固めつつ、周辺の情報を集めるということで決定した。今さらそれを覆さないでほしい。」
珍しく感情的になる八田先生。対して会長は冷静に諭し始める。
「先生は将棋とかお好きでしたよね。」
「そうだが、それが何だというのかね。」
「ならわかるはずでしょう。先生、〝イセノ〟を含めどんなことにも通ずることですが、守っているだけでは勝てませんよ。」
語尾を強める梶田会長、八田先生は多少うろたえつつも反論する。
「言わんとすることはわかるが、相手が何をしてくるかわからない以上これしか……。」
「いや、想像は付きます。少なくとも奴は〝イセノ〟ですべてを決める世界にする、そう放送で言っていました。それはつまり、〝イセノ〟で俺たちが勝てば当然、俺たちの要求が通るということでしょう。そして奴に対してそれができるのは、この場で最も強い者、俺は当然として、オリエンの決勝という意味では、それは一年の中からも選んでおくべきだ。」
「……しかし、そもそも危険の中心に飛び込んでいこうとするものなどここには……。」
「いますよ。」
一瞬、会長と目が合った気がする。
「責任は俺がとります。生徒会長、いや十指選の座を返上しても構わない。だから、お願いです。」
会長の周りがざわついている。あの梶田会長が頭を下げているから。
普通の人なら八田先生の言う通り、この危機を起こした張本人のもとに行きたいなんて思わないだろう。だが俺にとってはすべてを取り戻せるかもしれない、またとないチャンスでもある。
もしかして会長は俺のために、頭を下げてくれているのか……。と思った矢先、先生にも、俺にも会長は釘をさす。
「もちろん、あくまで保険です。基本、俺で終わらせます。」
「君がそこまで言うのなら……。」
八田先生もついに折れた。
「ありがとうございます。」
そう礼を言った会長は俺たちの方を向き、改めて宣言する。
「見苦しい口論を見せてしまったが、君たちの中から1チームを選別するのは変わらない。5分与える、チームで話し合って決めてくれ。」
今度は、一年全員がざわつき始める。もちろん、俺たちD2チームもだ。
「ど、どうですか、皆さん。」
ナユユはリーダーとしてチームに問いかける。が、すぐに答えを出すものはいない。みんな迷っている。
実際俺もそうだった、今の今までは。
フード男に負けて、どうするべきなのかわからず、それでも気持ちだけが空回りしてあてもなくさまよった。でも今、ようやく光が見えた気がする。
「俺は出たい。勝って失った大切なものを、取り戻せるのなら。」
正直、カナデも、ノーデも、そのほか知っている魂を奪われた人たちも、神に勝つことで戻ってくるなんてうまい話、疑う気持ちも0じゃない。でも、この機会を逃しちゃだめだ、俺の直感がそう告げている。
それに――。
「君は明日の決戦で勝つことだけを考えろ。勝てば、君の大切なものは必ず戻ってくる。」
神戸さん、あなたの言葉、信じさせてもらいます。
「迷惑をかけることは分かってる。でもこのオリエンで、今の俺には足りないものがたくさんあるって思い知らされた。だから、俺一人じゃダメなんだ。みんなの力を貸してほしい。」
俺は頭を下げる。これが精一杯の謝罪と、お願いの気持ちだ。
「迷惑などではない。拙者も同じ気持ちだ。」
千草さん……。
「拙者も途中から一誠殿と行動して、カナデ殿と会った。そしてカナデ殿を行かせてしまった。そして画面越しだが、負けそうになる瞬間をこの目で見た。もし拙者も一緒に行っていれば、また結果は変わったかもしれぬ。だから、拙者も友を助けに行きたい。」
「俺も決戦にはいきたいぜ。」
落合君……。
「あの放送を聞く限り、どうせここでアクションを起こさなければ魂とられるんだろ。それに俺もこのまま終わるのは不完全燃焼だと思っていた。やるからにはオリエン優勝、妹への土産話もそれが一番よさそうだからな。」
ここまで3人が代表になりたいと意思表明してくれた。しかし、これはチーム戦。
「うちは、正直言ってやりたくはない。」
一人でも否定派がいれば、前に進むことはできない。
「本当は怖いねん。今だって思い出したら震えがする。」
左右の手を互い違いに抑える尾関山さん。震えを止めようと必死なのだろう。
俺は拳をぐっと握りしめる。
フード男の残した傷は、大きい。あんなことがあってすぐ立ち直れという方が無理がある。やはり、ダメか……。
「ごめん、無茶だってわかってたんだ。」
「九山君、人の話は最後まできいてほしいもんやな。」
そういう尾関山さんの顔に迷いはなかった。
「ごめん。」
「まあええよ。今の流れやと出たくないって思うやろうし、うちも正直、その気持ちもあるんやから。でも、今ここに四苑、弟がいないんや。たぶんA1チームの話のように、魂を取られた可能性は高いって英兄もいっとって。」
ロープウェー乗降場ではC4チームの姿は見なかった。でも、俺たちが捕縛した人たち以外にも犠牲者はいるだろうな。
「もし四苑になんかあったらうちは……。少なくともこのままじゃあかんって思うとる。だからうちは怖いねんけど、それでも自分のできることがあるんやったら、それを精一杯やりたいんや。」
「尾関山さん、ありがとう。勇気を出してくれて。」
これで最後は。
「私はふがいないリーダーです。」
ナユユだ。
「つらいときにどう声をかけるのが正解なのかわからなくて、それで判断が遅れて。それを後悔してました。でも、やっと……。」
ナユユは涙を浮かべている。
「奈湯ちゃん大丈夫、涙……。」
「大丈夫です、これはその、うれしい方のですから。」
涙をぬぐって彼女は続ける。
「私も同じです。友達を助けたいし、このままオリエンを終わりたくもありません。ただ、リーダーとして1つだけ確認させてください。九山君、神に勝つ方法は何か、ありますか?」
そうだ、会長が出した条件は5人での合意のほかにもう1つ、神に勝てる自信のあるチームというものだった。俺は有弦とカナデとの試合を見た。そして――。
「1つ、ある。」
「なら、私も異論はないです。むしろやっとチームで、1つにまとまれた気がするのでその、いい試合をしたいです。」
「そうだね。」
「うむ。」
「そりゃそうだ。」
「うちも。」
全員の意思は固まった。
「みんなありがとう。じゃあ……。」
「何しきってんだ、リーダーは近田だぞ。」
俺は落合君にいさめられる。なんかこのやり取りも、時間はそんなに立ってないはずなのに久々に感じる。
そして各々の顔色を確認したナユユはリーダーとして指示を出す。
「行きましょう!」
5分が経った。
俺たちは会長のいる前の方に出る。真向いにはもう1チーム。
「A1とD2、2チームだけのようだな。」
そうつぶやいた会長は全体に向けて宣言する。
「それではこの場でどちらが行くかを決め……。」
ぐ~。
ここで俺の腹の音が鳴った。そういえばお昼の寿司から何も食べてない。
「す、すみません。」
どうしてここでなったんだ、恥ずかしい。でも不思議と笑いも起きて、張りつめていた空気が少し和らいだ。
「少し時間を置いた方がよさそうだな。」
会長も若干の笑みをこぼし、声を張り上げた。
「前に出たチーム以外は、教師や我ら生徒会が全力で守り、必ず福ノ山まで送り届ける。そして……。」
今度は俺たち2チームに向けた言葉だ。
「代表選抜試合は今晩午後十時、この場所で行う。それまでに各々、準備をしてくれ!」
思いは1つにまとまり、少年少女は一歩を踏み出す!
次回は1週お休みしまして、5/10までに更新予定です。よろしくお願いします。




