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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第7章 オリエンテーション編Ⅱ
127/183

第120話 運命

前回の続き、ノーデと阿僧祇の視点を交互にいきます。

なお鵜飼君は中二キャラなので、フリガナが増えます。

それではどうぞ。

「何をするかと思えば……。」

 阿僧祇から見て、今の鵜飼さんの手は死滅していない、通常状態。しかし、〝イリュージョン〟、その効果は阿僧祇も、私も知っています。

「それは見かけだけを変える技だろう。お前の指がすべて死滅している事実は変わらない以上、無駄なあがきだ。」

 そう、阿僧祇の数あては確実に当たる。


「【一心ノ手(いッしんのーで)〝1〟】」


 Turn 8

 Tatumi 0pt   Asogi 0pt 

             【〝1〟】

 R×××××         R●●●●●

 L×××××         L●●()●●

 All free


 しかし、一筋縄とはいかぬようだ。


「【〝電磁装甲(バリア)〟】」


 鵜飼の前に電気のシールドが展開、数あては無効化される。ポイントを消費しないで使える防御技のようだな。

 だが、そんな特別な防御技、何かしら種はある。


「【一心ノ手〝1〟】」

「【〝電磁装甲(バリア)〟】」


 このやり取りがさらにもう一度、繰り返される。もしや〝ブラックホール〟終了まで耐えるつもりかとも思ったが。


「【一心ノ手〝1〟】」


 やっと数あてが通り、俺は左手を抜いた。というより、鵜飼の方が守れなくなったが正しいか。〝イリュージョン〟の効果は3ターン、それが切れ、奴は死滅した指があらわになっている。

「〝電磁バリア〟、それもおおよそどこかの指、もしくはすべての指が動かないと発動できない技とみた。だが所詮はただの時間稼ぎか。」

「ああ、時が来るのを待っているのさ。」

 俺の言葉にそう返した鵜飼は、次の技を宣言する。


「【〝時間遡行(タイムスリップ)〟】」


 Turn 15

 Tatumi 0pt   Asogi 0pt 

【〝time slip〟Lv.3〟】

 R○○○○○         R●●●○○

 L              L


「まだその時ではない。」「時が来るのを待っている。」等の発言から、鵜飼さんは何かを狙っているのは間違いありません。その時というのが単にターン数のことを言っているのか、あるいは――。


「【一心ノ手〝雨〟】」


 阿僧祇の右中指以外がすべて上がります。右中指も上げれば〝ツインパワー〟で阿僧祇が5pt獲得できて有利だったはずですが、あえてそれをしないのは彼が、鵜飼さんの特性が〝ツインパワー〟が発動条件と踏んでいるからでしょう。


「【デウスエクスマキナ、〝晴れ〟】」


 今度は阿僧祇の右親指だけが上がり、焦げ茶色に変わります。

「その技は俺の指をかけるために放ったのか、それとも。」

 そして彼はかかった指をそのまま下げて宣言。


「【〝手術〟】」


 鵜飼さんはどこも上げず、代わりに阿僧祇が中、薬指を上げています。

「〝ツインパワー〟を狙って放ったのか。たぶんお前は後者だろ。」

「なぜそう言い切れる?」

「今の〝手術〟、お前は一切指を上げる動きをしなかった。それに1ターン目に起こったのも〝ツインパワー〟だしな。加えて俺の〝ブラックホール〟もあえて受けた、もしそう考えればその理由は明白だ。お前の指が死滅すれば、俺が〝ツインパワー〟を起こしやすくなるからだろ。」

「どうやら、悪党は頭がよく回るようだ。」

「その言葉は肯定、と捉えるぞ。」

「なんか、二人とも絶妙に中二感があってない?」

 高木さんのつぶやきは、私ノーデも同感です。


「【デウスエクスマキナ、〝2〟】」


 Turn 19

 Tatumi 0pt   Asogi 1pt 

【〝2〟】

 R●●●●●         R○○●○○

 L              L


「種を見破られてやけくそになったか。が、残念だったな。」

 鵜飼の数あては外れ、そして。

「お前の特性も、発動しなければどうということはない。」

 今の十指選は大したことはないらしい。この程度であれば俺に敗北も、死すらも来ない。有限様の予知が外れたことなどないのが気がかりだったが、永い眠りから目覚めたのだ。久しぶりに使う予知能力に勘も鈍っていたに違いない。

「この小僧の次はお前だ、覚悟しとけよ、女。」

「ええ……。負けるな鵜飼、アタシこいつちょっと苦手だ。」

「案ずるな、敗北という2文字は、我の辞書には載っていない。」

 女の弱音に鵜飼が返すが、ただの強がりだな。

 とはいえ、今ここで数あてしても、〝電磁バリア〟がある限り、防がれるのは容易に想像がつく。どうせ、奴の〝タイムスリップ〟も終いだ。なら、このターンは少し遊んでもいい。


「【〝ルーレット〟】」


 この宣言で俺の前に円盤が現れ、回り始める。

「さあ、選べ。お前の運命をな。」

 セットされた技は15ケ、普通は当たりが来ること自体、少ない。

「ストップ!」

 だが勝負に関しては、今日の俺は運がいい。

「どうやら貴様にとってはいい技だったようだな。」

「ああ、とてもな。」

「だが、それは次の貴様のターンで来る話。次は我のターンだ。」

「確かに。が、お前のターンが始まったこの瞬間。」

 鵜飼の〝タイムスリップ〟が終了する。

「お前の技の反動で死滅箇所が新たに増える。つまり、先に俺の特性が発動する。」

「くっ、番犬が死の匂いを嗅ぎつけるか。」

「そうだ。」

 封殺の番犬(ケロべロス)が再び、鵜飼に向かい牙を向ける。狙いは奴の死した手と、あの忌々しい防御の技板。

「ぐああああああああああああああああ。」

 毎度、いい反応をしてくれる。

「〝電磁バリア〟、封印!」

「……【〝最高の手術〟】」

 鵜飼は少しよろけながら宣言。いまさら、左手を治してポイントを得たか。だが、5ptを得ようが指が多少動こうが問題はない。不安要素はすべて消えた。

「お前の運命(うんめい)は決まった、敗北、そして死だ。」

「ふふ、フハハ、フハハハハ。」

 ここでまた高笑いか。

「もともとおかしかったが、ついに壊れたか?」

「違うな、貴様はすごく当たり前のことを勘違いしているぞ。」

「なにっ。」

運命(さだめ)と読めばそれは決まった宿命だ。だが運命(うんめい)ならば、変わらないように見えて、実際は刻一刻と変わり続けられるものだ。あんなちっぽけな円盤や、犬っころなどで完全に決めきれるほど単純なものじゃない。」

 それはお前の辞書の中でだけでの定義だろ。

「減らず口を、なら食らうがいい、絶望を。」

 さっきの〝ブラックホール〟とは比にならぬ闇だ。


「【〝ダークマター〟】」


 暗黒がこの場のすべてを包み込む。鵜飼やその背後の龍、そしてそばの女も、俺のバイクも奴らの車も、うっすらと見えていた月明かりでさえも。

 そして同時に封殺の番犬(ケロべロス)も動く。〝ダークマター〟は相手の指を永久的に死滅させる技。当然、食らった相手の指は死に、こいつの格好の餌食となるのだ。


「時は満ちた。龍よ、今こそその翼を広げ、わが身を守り給え。」


 なんだ、詠唱……?


「【〝全能の光壁(オールシールド)〟】」


「ギャオオオオオオオオオ。」

 この場にこだまする咆哮。発生元は鵜飼の背後の龍、そいつがまとっていた光が消え、形があらわになる。

「こいつは……。」

 5、6メートルはあるか。ワインレッドのような体色に鋭い眼光、大きな翼に、頑丈そうな鱗、鋭利な爪に長い尾。それはまさしく龍そのもの。そいつがその巨大な翼を広げ、自らを中心に球状の光の壁を構築する。

 直後、闇がその壁に衝突。こちらにも風圧が跳ね返ってくる。

「くっ……。そんなもので、防げると思うなァ!」

 〝ダークマター〟はS3だ。そう簡単に防ぐことなどできるはずが……。

「そんなもの、だからこそ防げるのさ。」

 しかし、鵜飼は動じない。

 闇は、その壁を突破することができず、徐々に霧散していく。そして封殺の番犬(ケロべロス)もなすすべなく、その壁に跳ね返され戻ってきた。

「〝ダークマター〟が防がれた、だと。」

「そうだ、俺も使ったのさ、特性の効果を。」

 使った? 〝ツインパワー〟は発動していないぞ。

「教えてやろう、今この瞬間、運命を切り開く龍の名を。」

 奴は自分の龍を見上げながら言う。


「それは、〝相反の覇龍(パラドクス)〟だ!」



ついに鵜飼の特性がベールを脱ぐ!

次回5/31までに更新予定です。よろしくお願いします。


※26年6/21追記

 阿僧祇の掛け声、読み方は「いッしんのーで」なのですが、「一心ノ手」に変えます。こっちの方があとあと登場する奴らと統一性があるためです。なお、これより前にも阿僧祇は1度バトルをしていますが、この時は一誠&ノーデの視点だったため、彼らが聞いた言葉という意図で、変えずに残すことにしています。よろしくお願いします。

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