第120話 運命
前回の続き、ノーデと阿僧祇の視点を交互にいきます。
なお鵜飼君は中二キャラなので、フリガナが増えます。
それではどうぞ。
「何をするかと思えば……。」
阿僧祇から見て、今の鵜飼さんの手は死滅していない、通常状態。しかし、〝イリュージョン〟、その効果は阿僧祇も、私も知っています。
「それは見かけだけを変える技だろう。お前の指がすべて死滅している事実は変わらない以上、無駄なあがきだ。」
そう、阿僧祇の数あては確実に当たる。
「【一心ノ手〝1〟】」
Turn 8
Tatumi 0pt Asogi 0pt
【〝1〟】
R××××× R●●●●●
L××××× L●●○●●
All free
しかし、一筋縄とはいかぬようだ。
「【〝電磁装甲〟】」
鵜飼の前に電気のシールドが展開、数あては無効化される。ポイントを消費しないで使える防御技のようだな。
だが、そんな特別な防御技、何かしら種はある。
「【一心ノ手〝1〟】」
「【〝電磁装甲〟】」
このやり取りがさらにもう一度、繰り返される。もしや〝ブラックホール〟終了まで耐えるつもりかとも思ったが。
「【一心ノ手〝1〟】」
やっと数あてが通り、俺は左手を抜いた。というより、鵜飼の方が守れなくなったが正しいか。〝イリュージョン〟の効果は3ターン、それが切れ、奴は死滅した指があらわになっている。
「〝電磁バリア〟、それもおおよそどこかの指、もしくはすべての指が動かないと発動できない技とみた。だが所詮はただの時間稼ぎか。」
「ああ、時が来るのを待っているのさ。」
俺の言葉にそう返した鵜飼は、次の技を宣言する。
「【〝時間遡行〟】」
Turn 15
Tatumi 0pt Asogi 0pt
【〝time slip〟Lv.3〟】
R○○○○○ R●●●○○
L L
「まだその時ではない。」「時が来るのを待っている。」等の発言から、鵜飼さんは何かを狙っているのは間違いありません。その時というのが単にターン数のことを言っているのか、あるいは――。
「【一心ノ手〝雨〟】」
阿僧祇の右中指以外がすべて上がります。右中指も上げれば〝ツインパワー〟で阿僧祇が5pt獲得できて有利だったはずですが、あえてそれをしないのは彼が、鵜飼さんの特性が〝ツインパワー〟が発動条件と踏んでいるからでしょう。
「【デウスエクスマキナ、〝晴れ〟】」
今度は阿僧祇の右親指だけが上がり、焦げ茶色に変わります。
「その技は俺の指をかけるために放ったのか、それとも。」
そして彼はかかった指をそのまま下げて宣言。
「【〝手術〟】」
鵜飼さんはどこも上げず、代わりに阿僧祇が中、薬指を上げています。
「〝ツインパワー〟を狙って放ったのか。たぶんお前は後者だろ。」
「なぜそう言い切れる?」
「今の〝手術〟、お前は一切指を上げる動きをしなかった。それに1ターン目に起こったのも〝ツインパワー〟だしな。加えて俺の〝ブラックホール〟もあえて受けた、もしそう考えればその理由は明白だ。お前の指が死滅すれば、俺が〝ツインパワー〟を起こしやすくなるからだろ。」
「どうやら、悪党は頭がよく回るようだ。」
「その言葉は肯定、と捉えるぞ。」
「なんか、二人とも絶妙に中二感があってない?」
高木さんのつぶやきは、私ノーデも同感です。
「【デウスエクスマキナ、〝2〟】」
Turn 19
Tatumi 0pt Asogi 1pt
【〝2〟】
R●●●●● R○○●○○
L L
「種を見破られてやけくそになったか。が、残念だったな。」
鵜飼の数あては外れ、そして。
「お前の特性も、発動しなければどうということはない。」
今の十指選は大したことはないらしい。この程度であれば俺に敗北も、死すらも来ない。有限様の予知が外れたことなどないのが気がかりだったが、永い眠りから目覚めたのだ。久しぶりに使う予知能力に勘も鈍っていたに違いない。
「この小僧の次はお前だ、覚悟しとけよ、女。」
「ええ……。負けるな鵜飼、アタシこいつちょっと苦手だ。」
「案ずるな、敗北という2文字は、我の辞書には載っていない。」
女の弱音に鵜飼が返すが、ただの強がりだな。
とはいえ、今ここで数あてしても、〝電磁バリア〟がある限り、防がれるのは容易に想像がつく。どうせ、奴の〝タイムスリップ〟も終いだ。なら、このターンは少し遊んでもいい。
「【〝ルーレット〟】」
この宣言で俺の前に円盤が現れ、回り始める。
「さあ、選べ。お前の運命をな。」
セットされた技は15ケ、普通は当たりが来ること自体、少ない。
「ストップ!」
だが勝負に関しては、今日の俺は運がいい。
「どうやら貴様にとってはいい技だったようだな。」
「ああ、とてもな。」
「だが、それは次の貴様のターンで来る話。次は我のターンだ。」
「確かに。が、お前のターンが始まったこの瞬間。」
鵜飼の〝タイムスリップ〟が終了する。
「お前の技の反動で死滅箇所が新たに増える。つまり、先に俺の特性が発動する。」
「くっ、番犬が死の匂いを嗅ぎつけるか。」
「そうだ。」
封殺の番犬が再び、鵜飼に向かい牙を向ける。狙いは奴の死した手と、あの忌々しい防御の技板。
「ぐああああああああああああああああ。」
毎度、いい反応をしてくれる。
「〝電磁バリア〟、封印!」
「……【〝最高の手術〟】」
鵜飼は少しよろけながら宣言。いまさら、左手を治してポイントを得たか。だが、5ptを得ようが指が多少動こうが問題はない。不安要素はすべて消えた。
「お前の運命は決まった、敗北、そして死だ。」
「ふふ、フハハ、フハハハハ。」
ここでまた高笑いか。
「もともとおかしかったが、ついに壊れたか?」
「違うな、貴様はすごく当たり前のことを勘違いしているぞ。」
「なにっ。」
「運命と読めばそれは決まった宿命だ。だが運命ならば、変わらないように見えて、実際は刻一刻と変わり続けられるものだ。あんなちっぽけな円盤や、犬っころなどで完全に決めきれるほど単純なものじゃない。」
それはお前の辞書の中でだけでの定義だろ。
「減らず口を、なら食らうがいい、絶望を。」
さっきの〝ブラックホール〟とは比にならぬ闇だ。
「【〝ダークマター〟】」
暗黒がこの場のすべてを包み込む。鵜飼やその背後の龍、そしてそばの女も、俺のバイクも奴らの車も、うっすらと見えていた月明かりでさえも。
そして同時に封殺の番犬も動く。〝ダークマター〟は相手の指を永久的に死滅させる技。当然、食らった相手の指は死に、こいつの格好の餌食となるのだ。
「時は満ちた。龍よ、今こそその翼を広げ、わが身を守り給え。」
なんだ、詠唱……?
「【〝全能の光壁〟】」
「ギャオオオオオオオオオ。」
この場にこだまする咆哮。発生元は鵜飼の背後の龍、そいつがまとっていた光が消え、形があらわになる。
「こいつは……。」
5、6メートルはあるか。ワインレッドのような体色に鋭い眼光、大きな翼に、頑丈そうな鱗、鋭利な爪に長い尾。それはまさしく龍そのもの。そいつがその巨大な翼を広げ、自らを中心に球状の光の壁を構築する。
直後、闇がその壁に衝突。こちらにも風圧が跳ね返ってくる。
「くっ……。そんなもので、防げると思うなァ!」
〝ダークマター〟はS3だ。そう簡単に防ぐことなどできるはずが……。
「そんなもの、だからこそ防げるのさ。」
しかし、鵜飼は動じない。
闇は、その壁を突破することができず、徐々に霧散していく。そして封殺の番犬もなすすべなく、その壁に跳ね返され戻ってきた。
「〝ダークマター〟が防がれた、だと。」
「そうだ、俺も使ったのさ、特性の効果を。」
使った? 〝ツインパワー〟は発動していないぞ。
「教えてやろう、今この瞬間、運命を切り開く龍の名を。」
奴は自分の龍を見上げながら言う。
「それは、〝相反の覇龍〟だ!」
ついに鵜飼の特性がベールを脱ぐ!
次回5/31までに更新予定です。よろしくお願いします。
※26年6/21追記
阿僧祇の掛け声、読み方は「いッしんのーで」なのですが、「一心ノ手」に変えます。こっちの方があとあと登場する奴らと統一性があるためです。なお、これより前にも阿僧祇は1度バトルをしていますが、この時は一誠&ノーデの視点だったため、彼らが聞いた言葉という意図で、変えずに残すことにしています。よろしくお願いします。




