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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第7章 オリエンテーション編Ⅱ
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第114話 神への挑戦④

前回からの続きです。たぶんこれで「神への挑戦」のサブタイトルを使うのは最後かな。

今回は一誠→有弦視点です。では本編どうぞ。

「駄目だ、行っちゃ……。」


 この試合が始まる前、俺は思わずカナデを止めた。話を聞く限り、今からカナデが行こうとしているところは危険だ。最悪、魂を抜き取られる。

「そうだぞカナデ殿、無策で突っ込んでは勝ち目はないぞ。」

 千草さんも心配して声をかけるが、カナデは言葉を曲げる様子はない。

「もちろん万全の策を打って勝ちに行く。でも万が一負けるとしても、ただで負けてあげるつもりはない。そのために私は一誠や千草とビデオ通話モードにしておくね。」

「ビデオ通話モード?」

「そう、私の腕輪のカメラから動画を取るだけだと消されちゃうかもしれないから、通話モードでの録画にしてリアルタイムで二人も見れるようにする。これで有弦と私との試合で有弦がどんな戦い方をするのか、二人がその録画映像を見せたり、最悪二人の口から話せば、他の人も知れるでしょ。もちろん後で二人が有弦と戦え、なんてことは言わないから。」

「なるほど、やりたいことは分かったのだが……。」

「迷惑をかけることは分かってる。でも、これもみんなを助けるためなの。だから、お願い。」

 カナデは俺たちに深々と頭を下げる。俺も、千草さんも一瞬、間があった。戸惑い、そしてかける言葉を探す間が。

「むむむ……承知した。」

「千草さん……。」

 そういう俺の気持ちを千草さんは分かっていたんだろう。

「拙者はカナデ殿の思いを応援したい。それが友というものだと思うから。」

 友、としてなら。カナデの意思を尊重する、それが正解な気がする。でも、もし負けたら俺は、ノーデと同じように大切な人を失う。それが怖い。

 そんな俺の不安を感じ取ったのか、カナデは俺の手を取って、笑って言った。


「大丈夫、さっきも言ったけれどこれは万が一。私は勝つつもりで行くから。」


 その目にはさっきまでの涙も、それどころか一点の曇りもなかった。

 カナデも覚悟しているんだ。それを俺が受け入れてあげないでどうする。

「……わかった。でも、勝つつもりじゃなくて、勝ってくれよ。」

「うん。」

 たとえ無理して作った表情だとしても、俺はカナデを信じることにした。


 だから。

「頑張れ、カナデ!」

 俺は手元の腕輪、そのディスプレイに移る映像を確認しながらそう叫ぶ。

 雨は止む気配がなく、俺たちはいまだに山小屋にいた。そこで神とカナデとの試合を観戦していた。

 もう勝負は終盤、カナデ渾身の〝ルーレット〟を使った作戦は失敗した。でもまだ、勝負は終わっていない。

 たとえ、絶望的な状況でも。

「勝ってくれ……。」

 そんな時、急に祭壇みたいなものが現れたと思ったら、映像が途切れて。


 Turn 37

 Yugen 0pt   Kanade 1pt 

 【〝2〟】

 R               R

 L●●●●●          L●()()○○


 勝負は決した。

「我の勝ちだ。」

 我の張った祭壇も、娘のそばにいた晴れの神(アマテラス)も消える。そして終わりを悟った娘は膝をつく。

「最後の技、何をしたの?」

「〝土冥印(どめいん)〟のことか。あの空間の中では、我の攻撃は絶対なのだ。もちろん、数あてを含め、な。」

「つまり、相手は防御ができなくなる技ってことね。でもそれだけ知れただけでも収穫はあった。これで情報は……。」

「残念ながらこの情報を他の者が知るのはまだ先の話だ。」

「……まさか、気づいていたの?」

「ああ、この体になってどうやら、電気的な情報に敏感でな。常にお前以外の視線も感じていた。おそらく、カメラ? とやらでこの試合の映像をほかの誰かに見せていたのだろう。」

 我のこの発言を聞いた娘は、力が抜けたように頭を抱え、床に倒れる。

「そこまでお見通しかぁ、私は情報戦でも負けていたのね。」

「そうでもない。我が映像をこの腕輪の放つ邪気で相殺したのは、〝土冥印(どめいん)〟の直前だ。それにお前は、〝土冥印(どめいん)〟発動後、我が数あてに入った際に〝電磁バリア〟を使おうとしたな。」

 そう、最後の娘の刻、初めから数えると36刻の時か。

「あの時、お前は中指は動かなかったはずだが使おうとした。それはつまり使える条件は満たしていたということだ。あの時動いた3本の指のどこか、それが条件であろうが。我を前に条件を最後まで欺き続けた。その年で大したものよ。」

「そこは素直にありがとうって言っておく。」

 何であろうな、久しく忘れていたこの感じは。

「戦ってみて思ったけど、あなたって完全に悪って感じもしない。だからなおさら、なんで人の魂を奪うなんてことするんだろうって思う。」

「神の全てを推し量ることなど、人にはできぬことだ。」

 さて、しゃべりも終いか。

「最後に、何か言い残すことは?」

 我は娘に黄金の腕輪を付けた右手を向ける。しかし、娘はおびえる様子もない。

「私以外にも、仲間を取り戻すためにあなたに挑戦する人が必ずいる。その人たちも強いよ。たぶん私よりも。」

「その未来は既に知っている。知っているが、期待して待つとしよう。」

 我は娘から魂を抜いた。そして生気を失った娘もまた我の傀儡となり、立ち上がる。

「久々に良い試合ができた。礼を言うぞ。」

 娘にはもう、この言葉は届かぬだろうがな。

 さて。

 ずっと動き続けていた駕籠が止まる。ちょうど山頂に着くころに終わったか。

 駕籠から降りる我と4人の傀儡。駅の出口を抜けると、ここからの制圧は早かった。

 まずはこの山頂駅の係員、続いて展望台の従業員を掌握。これで三十分と経たず、この邪薔薇山の山頂にいる人間は一人を除き、すべて我の思うがままだ。

 次にこの山を中心に、この地方全体を邪気で覆いつくす。上から見る我の邪気は、一つの街を飲み込めるほどだ。我ながら知っていても驚きだが、これも年月の重みというものだろう。これであれば目的に必要な魂を確保できる。

 あとはこの部屋だ。展望台のこの部屋には人の声をここら一帯に伝達できる装置があるようだ。

「使い方を教えろ。」

「は、はいっ……。えぇっと、こ、このボタンを押してマイクに話しかければ、この邪薔薇林間学校の施設内全域にえ、園内放送がかかりますぅ。お、音量はここ、ここのつまみで調整できますぅ。」

「ご苦労。ではお前も用済みだ。」

 これで最後の一人も掌握。


 では、神の演説と行こう。


「今生の者たちよ。我は神杉有弦、この地にて復活を果たした、神である。」


 我の声が山林の中に響き渡るのを感じる。このように声を届けられるのは面白い。

「我がこの世界を再び導く。手始めに〝イセノ〟とやらですべてが決まる世界にしてな。」

 そう、すべて。

 嘗て我は一度だけ失敗した。神と呼ばれた我の神託なら誰もが従うだろう、という性善説じみた甘い考えが、勝負中の我を死に追いやった。

 だから中途半端では駄目なのだ。

「明日の正午、その儀式を行う。そしてその儀式には、生贄が必要だ。そして誇るがいい、この演説を聞いているお前たちは我が奪った魂とともに贄となる。そういう未来なのだ。」

 この儀式が完遂される、その未来は見えている。

「とはいえ、これでは一方的な蹂躙にすぎぬ。我の望む世界はそういうものではない。すべてのものが平等に我に挑む権利がある。しかし、我も全ての人間を相手するのは少々骨が折れるのでな。1つ提案だ。」

 ここから面白くなる。

「我が目覚めた時、お前たちは実に面白い十指五人の催しをしていた。そして我の手元にはその催しで使う大量の技板がある。それも現時点でこの催しの頂点に我が君臨しておるのは火を見るより明らかな程な。しかし、我の復活でその催しが中断するのは我の本意ではない。そして、我の持つ魂を取り返したい輩もおるだろう。そこでだ。」

 そしてここからが、始まりだ。

「明日正午、お前たちの中の代表者たちと我とで決勝戦を執り行おう。当然、この催しの規則にのっとり、勝った方の主張が正義だ。そしてお前たちはそれまでに代表者を決めるがよい。」

 当然、我には明日挑む顔ぶれは見えているがな。


「我は、邪薔薇山山頂にて待つ。神に挑む者たちよ、存分にかかってこい。」


神の、宣戦布告――⁉

次回4/12までに更新予定です。よろしくお願いします。

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