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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第7章 オリエンテーション編Ⅱ
120/182

第113話 神への挑戦③

3月終わりですが暑さと寒さが交互にやってきます。皆さんも体調には気を付けてお過ごしください。

さて話は前回の続き、カナデ視点から有弦視点を、相変わらず交互に行ったり来たりします。

それでは本編どうぞ。

 Turn 22

 Yugen 5pt   Kanade 11→1pt 

            【〝sun shine〟Lv.5(S2)】

 R(・・)(・・)(・・)(・・)(・・)         R○○()()

 L(・・)(・・)(・・)(・・)(・・)         L○○()●●


 晴れの神(アマテラス)が太陽を抱え、その眩い光が有弦を飲み込んでいく。

「この技はS2、今のあなたに防ぎきることはできない!」

 有弦にできるのは〝シールド〟を使って指へのダメージを軽減するくらい。どっちみち彼の指はすべて固まる。

 はずだった。

「【〝刻転(こくてん)〟】」

 有弦の宣言で出現した、針が逆行する時計。そしてたちまち彼の指は回復し、片手を抜いた状態に。言い方は違うけれど、既視感がある。そう、これは〝タイムスリップ〟の一連の挙動。

 この技をさせたということは、確実に追い詰めている。

 そのはずなのに……。

 有弦に、焦りが見えない。もう私のやることはお見通しってこと? 

 でも、おそらく彼はすべての未来が見えているわけではない。そしてとくに昔、彼が生きていた時代にはなかった技の効果はほぼ知らない。それは〝電磁バリア〟の攻略の仕方を見れば、わかる。

 勝機はそこにある。大丈夫。自分を、信じよう。

 有弦は今〝タイムスリップ〟でポイントがリセットされているから、私の数あては防げない。でもたぶん、当てさせてはくれない。だから、ここで。ちょうどこの5ターンのインターバルが空けたこの技で。

 かける! 一途の望みに!

「【〝イリュージョン〟】」

 〝雨〟、〝晴れ〟、〝サンシャイン〟を犠牲に。私の使える技はあと4つ。でもこれでいい。これで選択肢は、最少になった。成功率は格段に上がる。


 Turn 24

 Yugen 0pt   Kanade 1pt 

            【〝illusion〟Lv.5】

 R○○○○○         R○○()()

 L              L○○()○○

      All free


「また、その技か。自分で自分の首を絞めているぞ。」

 技板3枚をまた使用不可にし、再び見かけ上の姿を変える。また、〝電磁バリア〟の条件を満たすため、とは思えんな。我が見通す未来では発動する場面はもうない、それにわざわざ使える技の個数を4つにまで減らすほど使う長所があるとも思えん。

 となれば、この技の意図は――。

「それとも使用不可になる、それ自体が狙いか?」

 今度は我の問いかけにも表情1つ変えぬか。まあ、よい。

「無謀な賭けだ。だが見かけ上でも、お前の指がすべて動くおかげでこの技が使える。」

 そしてこれが、終わりへの第一歩でもある。

「【〝(あかつき)〟】」


 Turn 25

 Yugen 0pt   Kanade 1pt 

【〝dawn〟Lv.5】

 R○○○○○         R○○()()

 L              L●○()●●

All free


 薄暗い車内に小さな光が灯る。

 今度は私の知らない技。といっても有弦にさほど変化は見られない。

「この技はお互いにすべての指が動くときに使える。自身の刻で数えて3刻後、お互い死滅状態の指がある場合、それを下げて固まった状態に変える。3倍固めではあるがな。」

 さっきから聞いていて思ったけど、たぶん「こく」っていうのはターンのことなのでしょう。

「私の〝イリュージョン〟の効果を逆手に取った訳ね。」

 この技はダメージ軽減技。〝タイムスリップ〟の反動による死滅は固まった状態に変わる。完全に治し切るわけじゃない。けれど、おそらくそこからの回復手段を持っていなきゃこの技を使わないでしょう。

 でも3ターン後なんて来させはしない。準備は整った。


「【〝ルーレット〟】」


 出現するルーレット板。そしてセットされる4つの技。

「ほう、また奇怪な技を……。」

 やっぱり。

 この技を有弦が知っているはずもない。私のかすかな記憶だけど、おじいちゃんがまだ現役だったころにできたとか言っていたから。

 〝ルーレット〟は使える技すべてをルーレット板にセットして回し、そのルーレット板が1つの技をさし示す。そう、使える技すべてを。裏を返せば、使えなくなった技はルーレット板にはセットされない。

 私が今まで〝電磁バリア〟や〝イリュージョン〟を駆使して技を使用不可にしていたのは、この〝ルーレット〟を使うため。〝ルーレット〟には〝ルーレット〟自身を含む最低4枚以上のセットは必要っていう条件があるから、その最低枚数まで使える技を減らしていた。最初から4枚にして臨むという戦術もあったと思うけど、この勝負が始まる前には数あてでの勝利も視野に入れていたし、〝ルーレット〟は自分のターンで数えて5ターン経過してからしか使えない制約があるから、その前に数あてで一瞬で終わる可能性もあった。だから、臨機応変に対応できる技を選んだ結果、技板は15枚になった。

 結局最後はこの技に頼ることになったけれど……。何とかここまでこぎつけた。

 〝ルーレット〟が回り始める。

「さあ、あなたがこの〝ルーレット〟を止めるのよ。そして止まった番号の区画にセットされている技を私は次のターン、ノーコストで使える。」

「なるほど、これがお前の切り札か。」

 有弦は相変わらず、不気味に笑っている。

 区画の1が、〝電磁バリア〟、2が前のターンで使った〝イリュージョン〟、3が〝ルーレット〟、ここまでは私的に全部外れ。そして。

「とまれ。」

 その言葉を合図にゆっくりとルーレットの円盤が止まる。

 針がさし示すのは4。〝ドラゴンフレア〟、使えば一発勝ちの大当たり。

 勝てる。次のターン、油断さえしなければ。


「【一斉(いっせい)()()、〝曇り〟】」


 Turn 27

 Yugen 0pt   Kanade 1pt 

【〝cloudy〟Lv.4(S1)】

 R○●●●●         R●●()()

 L              L○○()●●

All free


「3本……。」

 娘は言葉を失う。それもそうであろう。〝曇り〟でお互いの上がった指の本数が奇数であれば、娘は次の一刻を失う。つまり、〝ルーレット〟やらの点の肩代わり効果も無に帰すというわけだ。

 そして次も我の番。〝刻転(こくてん)〟の効果が終わり、右5本が死滅状態、左5本は〝サンシャイン〟、おそらく〝日照り〟のことだろうが、それで2倍固めとなっている。そして〝暁〟の光が徐々に強まっていく。

「【一斉(いっせい)()()、〝雨〟】」

  娘はかろうじて3か所上げたか。しかし、 (はち)()(れい)。良い形だ。

「【いっせいなで〝5〟】」

 これは当てられる。我の手は動かないのだから当然だ。ここで我の得点を奪われでもしたらまた状況は変わったのであろうが、おそらく娘は得点を奪う技を使えない。〝ルーレット〟とやらで使える技を極限まで絞ってしまった今となってはな。

 娘は片手を抜く。しかしこれで条件は満たした。〝暁〟の光は今、最高潮に達した。

「夜明けの光が満ちるこの瞬間を待っていた。死したものは復活する、この技によって完全に。」

 まさに我が使うにふさわしい技だ。


「【〝神の手術〟】」


 Turn 31

 Yugen 5→15pt   Kanade 1pt 

【〝god operation〟Lv.9】

 R()()()()()          R

 L()()()()()          L○()()●●


 有弦の左右の指全てが青い光に包まれて。

「全部の指が回復した⁉」

「それだけではない。これは1度きりの〝手術〟。治した箇所だけ得点が入る。」

「じゃあ、今のあなたのポイントは、10ポイント追加されて15ポイントってことに……。」

 〝神の手術〟、使用条件や効果の全貌は分からないけれど、このターンで使うことを見越して〝暁〟を使ったんでしょう。〝手術〟っていう名前を冠する以上、固まった状態にしか適用できないから。

 非常にまずい状況。有弦が大技を使えば、私はそれを防ぐ手段がない。もう私に残された勝ち筋は、ない。


「だってこのゲームは数あてゲームだろ。数あてさえすれば勝てるんだ。」


 なんでこんな時、一誠の言葉がよぎったのかしら。ちょうど1か月前に試合したときの。あの時私が追い詰めていたけれど一誠はあきらめなかった。そしてそれは今もそう。


 まだ終わりじゃない。

「【いっせいなで〝7〟】」

 外れた。でもまだ。

「見苦しいな。お前の勝ち筋はすべてつぶされたというのに。強者とは負けを悟った瞬間に潔くそれを受け入れるものだぞ。」

「なら私は強者じゃなくていい。たとえみっともなくても、私はやり続ける。いつか来る勝利の時まで。」

 そう、保険はかけておいた。たとえ私がここで負けても、次につながるように。

「まあ、戦術自体は悪くはなかった。娘、お前には敬意を表し、特別に拝ませてやろう。我の切り札を――。」

 切り札――⁉

 有弦は手を掲げ、一つの技板が光りだす。たぶんこの試合でまだ1回も使っていない技だ。そして。

「なに、これ……。」

 出現する、円形に配置された松明(たいまつ)。薄暗い車内を怪しげに照らす、儀式の祭壇のような空間で神は宣言する。


「【〝土冥印(ドメイン)〟】」


神の放つ、未知の技――。

次回4/5までに更新予定です。よろしくお願いします。


♦♦以下、少し裏話♦♦

今回は完全な作者都合の話を1つ。長くなるので気にしない人は読み飛ばしても結構です。

実は〝ルーレット〟という技なのですが、当初の設定では今回のお話のような使い方は想定していませんでした。ただ設定を改めて見直す機会があった際、気になることが出てきまして。

 〝ルーレット〟、作中の投影装置がない場合に使う際、机に技板を直接並べて相手に指定してもらうというのが作者のイメージでした。しかし、ここで使用不可の技板を選択肢に入れた際、設定上黒くなっているためその技板はまるわかりになってしまうということに気づきました。そこでどうしようかと考えまして。これまで書いてきた文言を見返したのですが、101話以後の設定集には「自分の技板すべて」となっていましたが、幸い作中では「使える技すべてを枠に収める」(第100話)としか書いていませんでしたので、作中準拠に合わせようということで今回のお話のように、使用不可技板は効果対象外とすることといたしました。(設定集も「自分の使える技板すべて」と修正いたしました。)そしてその設定修正を逆手にとって今回の試合を組んだわけです。

連載しているとどうしても当初の想定とは違ったり、そこまで細かく練れていない箇所もありましてこういう風につじつま合わせすることも今後増えるかもしませんが(そうならないよう努力はしますが)、ご了承願います。

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