第110話 復活③
②があれば③がある。といっても1話あいてのサブタイトルだから、予想しづらかったかな。
今回はカナデ視点です。
それでは本編どうぞ。
振り返れば、不吉な予感はあった。
「もし僕が変になったら、ごめんね。」
D1チームで初めて作戦会議したとき。大数君がつぶやいていた。
「何よ、変って。」
あの時私はそう流してしまったけれど。もっと詳しく聞いていれば、何かできたかもしれないのに。
「こいつの記憶を見た。」
有弦は自分を指してそういう。こいつっていうのはたぶん、大数君のことね。
「娘、お前特性を持っているな。」
A1チームやフードの男が去った後。雨が降る滝の前で、有弦は私に話しかける。
「特性とは本来人に宿る特別な力、だったのだが今は違うようだ。しかし好都合、この先我は強者と戦わなければならないが、ちょうど我本来の特性を切らしていてな。左手に着けているその腕輪、我に預けろ。」
「これは、その……。」
私は左手の腕輪を、もう片方の手で強く握った。
これは私が大会での結果が評価されて得た、私の実力で勝ち取ったもの。そう簡単に手放したくはない。でも。
「どうした? 早くしろ。それとも、我に逆らうつもりか?」
気味悪く笑う有弦。
逆らえば私も東城君みたいに意識を奪われ、こいつの手先になる。おとなしく従った方がいい。
そのはずなのに――。
「それは駄目っす。カナデっちの特性はカナデっちのものっす。」
「ほう、お前はかばうのか。」
「本庄君だけじゃないよ。」
伊原君と本庄君が私の前に立っていて。
「2人とも、何言ってるの。」
私は困惑していた。対して有弦は発言の信を問う。
「ほう、拒むのか。なら、わかっているな。」
「勝負だ。」「勝負っす。」
二人は声をそろえて言う。
「てことで今から俺たちはこいつと勝負する。カナデさんはここから逃げて、早く。」
「さっきのA組チームのように謎現象で足が動かなくなる前にっす。」
「二人とも無茶よ。勝負しても勝てるわけ……。」
「俺っちたちでは無理っす。でもカナデっちならやれる、俺っちはそう信じてるっす。」
「俺もだ。」
そんなの過大評価よ。
私が今この人に挑んでも、勝てるイメージがしないんだから。
「愚かだな。逆らっても何の得もない。それにお前たちでは我に勝てぬことくらい、さっきまでの試合を見ていればわかることだろう。」
しかし、二人は勇敢だった。私よりも。
「そうかもね。でも、少なくとも人の魂を平気で奪うような奴に俺たちはついていきたくはない。」
「そうっす。それに今度こそ、道上先輩の仇は取るっす。」
「そうか、残念だ。」
有弦は黄金の腕輪をはめた右手を天に掲げる。目に見える動きはそれだけ、でも確実に何かしている。直後。
「今俺っちの足が動かなくなったっす。早く逃げるっす!」
本庄君が叫んだ。
ここで二人の覚悟を無駄にしてはだめな気がする。
「ごめん……。」
私はそれだけ言い残して、無我夢中でその場から離れた。
「娘、これだけは言っておこう。」
最後に聞こえたのは有弦の言葉。
「お前は我のもとに戻ってくる。そういう未来だ。」
「そんなことが……。」
そして今。薄暗い山小屋で一誠たちにそのことを話している。さっきまでの涙はぬぐって。
「二人は私を逃がしてくれた。たぶん今頃、二人もあいつの手先に……。何とかしてチームメイトを助け出したい。もちろん、あの神に乗っ取られている大数君も含めてね。」
それがD1チームのリーダーとしての責務。いやそれ以上に、私自身がそうしたい。
「生徒会にもこのことは伝わっているのであれば、もう動き出しているだろう。何とかしてくれるやもしれぬぞ。」
「それはあいつの力を直に見てないから言える言葉よ。」
思わず声が大きくなり、千草はうろたえている。
「千草、ごめんなさい。でもそれだけあいつは強いの。強制的に相手を逃がさず、勝負にひきづりこみ、負ければその魂を奪う謎の力。そして予知の力をつかった完璧な数あて。あいつに勝っている人の姿を私は想像できない。」
ああ、駄目だ。手が震えてきた。
「私は……あいつが怖い。」
思い出したらまた涙も出てくる。
私では勝てないと本気で思ってしまった。そして何より私には本庄君や伊原君みたいな勇気がなかった。
「私は、弱い……。」
「俺も。」
ここで再会してからしばらく黙っていた一誠が口を開く。
「俺も弱かったよ。フード男に勝負で負けて大切な奴を取られた。無力だった。」
「フード男に……。」
あの有弦と一緒に居た、阿曽儀とかいう人のことね。あいつも得体が知れなかった。たぶん一誠も相当大変な目にあったのでしょう。服装も、体もぼろぼろだし。でもそれなら。
「なんで一誠はそんな目をしていられるの?」
「目?」
「そう、なんていうんだろう。」
うつむいている私とは正反対。
「まっすぐ前を見据えているっていう感じの目をしてる。」
「なんで、か……。」
一誠はすごく悩んでいる。答えづらい質問しちゃったかな。
「ごめん今のは答えなくて……。」
「この困難を乗り越えなきゃ大切なものは戻ってこない。」
私の言葉を遮るように一誠は答える。
「この壁を乗り越えないと、新しい自分にはなれない。そう、思ってるから。」
新しい、自分か。
そういえば一度、自分を見つめなおした時期があった。それは〝イセノ〟の大会で思うような結果が出ずに行き詰った頃のこと。
あの時は無限の巫女さんへのやり方にとらわれすぎていて。どうすればいいんだと思った。でも逃げずに向き合った。そして最終的に変なプライドを捨ててでも、おじいちゃんのやり方を取り入れた。いつか一誠とまた勝負する、その日を見据えて。
ああ、そうだ。
私も案外、あきらめが悪かったんだ。
「ありがとう。ちょっと吹っ切れた。」
A組や道上先輩、本庄君や伊原君は立ち向かった。でも私はまだ、勝負すらしていない。一誠も立ち上がっているのに、私がうつむいたままでどうするのよ。
有弦は怖い。怖いけれど。
「私決めた。行くよ。」
「行くって……どこに?」
大切なチームメイトを取り戻す。そのために私は行く。
「神のもとに、勝負を挑みに。」
少女は、立ち上がる!
次回3/15までに更新予定です。よろしくお願いします。




