第108話 復活②
①があれば②がある。
今回のサブタイトル、おそらく想像がつきやすかったことでしょう。
引き続きノーデ視点で、本編どうぞ。
「【一斉ノ手、〝10〟】」
「く、くそっ……。」
これでA3、A4チームに続きA2チームもD1チームに敗北。その勝因はすべて有弦による数あて。現時点で一度も宣言を外さないその姿は、まごうことなき数あての神。
おそらく私ノーデが勝負するにしても、まともにやればまず勝てないでしょう。対策を講じる必要があります。
「お前たちが勝てば仲間の魂は元に戻す、だったな。」
この滝の岩場に既に10人が意識を失い倒れこんでいます。A2チームはその人たちの魂を助け出そうと果敢に挑みました。しかし。
「結果はその逆だ。お前たちの魂は頂くぞ。」
そういうと有弦は黄金の腕輪をはめた手を掲げ、邪気を解き放ちます。そして同時に苦しみだすA2チーム。一人、また一人とその場に倒れこむのです。
「くそ、地獄に落ちろ……。」
A2チームのリーダーと思しき人物は親指のみを下に向け、暴言を吐きます。今はの際のささやかな抵抗。ですが有弦はこの言葉で一蹴します。
「それは既に死したものには、全く無意味な言動だ。」
そのリーダーも意識を失い、これでA組の犠牲者は15人に。
「さすが有弦様、特性なしでもこの強さ。そして名言の数々、感服いたします。」
賞賛の言葉を贈る阿僧祇。この男の性格はおおよそつかめました。例えるなら忠犬、主人にはしっぽを振り、それ以外にはかみつくような性格です。
「特性が付与された黄金の腕輪の片割れ、所在はわからぬのだな。」
「はい。もう一方は情報がなく……。」
「まあ、それを使う相手は今生には現れまい。」
2人の会話からして、有弦のはめている黄金の腕輪は左右それぞれ存在し、今つけているのはその一方に過ぎないということのようです。つまり今見た有弦の力もほんの一片でしかないのです。
「さて、次はお前たちか?」
有弦が見つめる先にいるのはA1チームの5人。その一人、秋津さんは彼に問います。
「なぜ……なぜこんなことをするの?」
「なぜか、それは快楽以外のほかに、何か理由が必要か?」
有弦は冷徹に、薄ら笑みを浮かべながら答えます。
「悪魔、いや魔王め。」
秋津さんは嫌悪の感情を表に出します。一般的な感性を持つ人からすると考えられないような言葉ですからね。しかしその傍らにいた七塚さんは冷静です。
「落ち着きなさい、美零。今の私たちではまず勝てません。ここは一度退くべきですわ。」
「……姫。」
「我がお前たちを逃がすとでも思っているのか?」
有弦の放つ邪気が広がっていきます。この邪気、先ほど敗北したA2チームもそうでした。触れた途端に、足がすくんで勝負から逃げられなくなるのです。解放される手段は〝イセノ〟の勝負に勝つことのみ。
その邪気がA1チームに迫ります。逃げ出す間もない、しかしここで。
「待った。まずは俺からさ。」
道上さんが飛び出し、邪気に触れました。大きく手を広げA1チームをかばうように盾となります。
「君たちは逃げるのさ。」
「道上さん、でしたっけ。どうして。」
「先輩として後輩を守るのは、至極当然のことさ。」
「その割に、足は震えているようだがな。」
そんな阿僧祇の発言は意に返さず、道上さんは続けます。
「簡単にメールは飛ばしたけど、君たちは生徒会にここで起こってることを伝えるのさ。そして会長を連れてきてほしい。会長ならきっと勝てるのさ。」
確かに、有弦に勝つ可能性が最も高いのは十指選の中でも上位陣、右手勢の人たち。そして今この施設内にいるのは梶田会長だけです。
道上さんの姿を見た七塚さんはA1チームに号令をかけます。
「……いきましょう。」
その号令とともにA1チームはその場から駆け出します。
「追いますか?」
「よい。あの者たちも明日には我が生贄となる、そういう未来だ。では、次の勝負をはじめようか。」
そして――。
道上さんもまた有弦の餌食に。
滝の音だけがこだまする空間に、雨が降り始めます。気づけば倒れている人を除き、この場に残されたのはD1チームと阿僧祇のみ。
「雨か、この雨は我への祝福か、なき者らの流す涙か。お前たちは運がいいな。」
「運が、いい?」
「そうだ。お前たちの目的はこの行事で優勝を飾ることだろう。そして我がいる今、それは約束された未来だ。そしてそのまま我の指示に従っていれば、この男のように自我を失うこともない。」
そういって有弦は東城さんの肩をたたきます。最も東城さんは何の反応も示さない、人形と化しています。
これは脅し。完全にD1チームの主導権は有弦が握っているのです。
「有弦さん、あなたの目的は、いったい何なの?」
「目的か。しいて言うなら復讐だ。我を裏切ったこの世界に対する、な。」
カナデさんの質問にそう答える有弦。おそらく過去に何かあったのは間違いないでしょう。
「有弦様の雄姿を見届けたいですが、私はそろそろお暇しなければなりません。」
そんな中、阿僧祇が残念そうに進言します。
「行くのか?」
「はい、これから私は福ノ山市に向かいます。あなたの復活が完了すればこのAIを届ける、そういう契約ですので。」
届ける契約。つまりこの件には有弦と阿僧祇以外に少なくとももう一人は関わっているということ。まだ全貌がつかめません。
そして有弦は初めてためらう素振りを見せ、言います。
「阿僧祇、お前死ぬぞ。」
「負ける姿でも見えましたか。もっとオブラートに包んでもいいものを。」
「オブラート?」
「いえ、何でもありません。ただそれがあなた様の見た未来ならば、私はそれに従うまで。」
何が阿僧祇をそうさせるのでしょうか。ただ一つだけ言えるのは、阿僧祇の有弦に対する忠誠は本物だということ。
「では。」
阿僧祇はフードを被り、有弦のもとを離れます。カナデさん達が心配ですが、今の私にはどうすることもできません。
私も、無力ですね。
「その通りだな、お前も、九山一誠も。」
阿僧祇が草木をかき分けながら移動中、再び私の声に干渉してきます。
「そんなお前は俺にとっては用済みだが、契約者には必要のようだ。まあ、届けようが届けまいが、どのみちお前は消え去る運命だ。」
そう、私を構築しているデータは今も欠け続けています。早く一誠のもとに戻らなければ私はじきに消えるでしょう。
「そして九山一誠はお前という心のよりどころを失った。あいつは俺が手を下さずとももう、駄目だろうな。」
『そこは心配していません。』
「やけに自信ありげだな。」
『ええ、私は信じていますから。』
思えば半年前、一誠は〝イセノ〟で負け、そして事故にあい死にかけました。そして今まさに同じ状況、違うのはあの時は私がいましたが、今はいません。そういう観点で言えば一誠はもう立ち上がることはできないと捉えることもできます。
ですが。
半年前の交通事故はあくまで不可抗力、一誠自身が死のうとしていたわけではありません。彼は意外と諦めが悪いのです。それに今の一誠は一人ではない、私以外にも支えてくれる人がいる。
彼を半年間見てきた私だからこそ、安心して言えます。
『一誠は、前を見て進み続けられる人である、と。』
一方その頃、一誠は――。
次回は少し時間をください。3/1までに更新予定です。よろしくお願いします。




