第107話 復活①
今回は掲載時間ギリギリの仕上げ。
というか2025年に入ってからそんな感じです。改善せねば。
さて今回はノーデ視点、それでは本編どうぞ。
「大数っち……?」
凍り付く空気。その中心にいるのは髪を逆立て目つきを変えた大数さん。いやおそらく大数さんではなく、彼はもっと別の、禍々しい存在。
「どうしたんだよ。そんな目つきも悪く、髪も少し逆立って。」
東城さんが彼の肩に触れようとして手で払いのけられます。
「気安く触れるでない。我は神杉有弦、この世界を再び導くものであるぞ。」
神杉有弦――。確か神杉家の始祖にして、数あての神。
「な、何言っているんだ。君は大数君じゃ。」
伊原さんも、いやD1チームのメンバーは全員動揺しています。無理もない、文字通り急に人が変わったような態度なのですから。
「神杉大数という名の人間が、この世に出てくることはもうない。」
「なんだよ、それ。大数は大数、そうだよな。」
東城さんはそう言って再び大数さんの体に触れようとしますが。
「忠告した、二度はない。」
有弦が黄金の腕輪を付けた右手を東城さんの顔にかざします。すると、東城さんは、目は生気を失い、手をだらんと下げるのです。
「何をしたの、あなた。」
「意思を奪って我の手足とした。お前たちもそうされたくなければおとなしくすることだ。」
カナデさんの質問にそう答えた有弦。全員が一瞬言葉を失う中、ただ一人拍手しています。
「さすがでございます、有弦様。」
そうそれはあのフード男。膝をつき、改まった態度になっています。
「誰だ貴様、いや貴様、阿僧祇か。」
「そう阿僧祇です。お久ぶりです。」
フード男はそのフードを脱ぎ、初めて顔をあらわにします。川の水面に映るその姿は、黒髪に黄色いメッシュをつけた高校生くらいの男性です。
「やはりあなた様こそがこの世界に君臨すべきお方。私はずっとこの復活の準備を整え、ついに成就したのです。」
わざわざ一人称も俺から私と言い換えているあたり、相当敬意を払っていますね。そしてにわかに信じがたいですが話の流れからして、フード男改め阿僧祇の目的は神杉有弦の復活。そのために私が必要だったと考えるのが妥当でしょう。
「ご苦労であったな。」
「はい、ただ一つご配慮願いたいことがございます。」
「ほう、申してみよ。」
「有弦様の復活にはこの邪薔薇湖に眠っていた金色の腕輪、そして素体となる神杉家の体の他に、そのお体に定着させるための作業が必要でした。そのためOperation codeなるものを用いたのですが、このコードは電脳空間に接続できるもの、例えばAIなどを対象としています。」
私、ノーデも知らない情報ですね。Operation codeが一誠以外のものに適用できるなんて初めて知りましたし。私より阿僧祇の方が使い方に関しては上と言わざるをえません。
「そこで有弦様も我々と同じAIと認識されるよう、簡単なプログラムを忍ばせております。ですが一つ欠点がございまして……。」
「十指占の敗北、それが死を意味する、のだろう。」
「さすが有弦様、我々は敗北により自分を構成しているプログラムも消滅するようにできているのです。この仕組みもいずれは変えるつもりですが、現状はできておらず。ご不便をおかけし、申し訳ございません。」
「案ずることはない。お前も知っておるだろう。我に敗北はない。」
絶対の自信に満ちた表情。有弦も神杉家である以上、その予知の力で未来が見えているのでしょうか。
「いいことを聞かせてもらったぜ。要はお前を〝イセノ〟で倒せば万事解決らしいな。」
そんな二人の会話にあって入った小奴可さん。フード男にやられた腹を抱えつつ、立ち上がります。
「〝イセノ〟?」
「今は十指占ではなく〝イセノ〟と呼ぶのです。」
「随分と安っぽい名だ。掛け声を縮めただけとは、名づけの主の底が知れる。」
「何話しているかはわからんが、まだ勝負は終わってないぜ。」
小奴可さんは戦う意思を示し、手を構えます。しかし、A3チームの他のメンバーは弱腰です。
「や、やめた方がいいんじゃない。普通じゃないよ。」
「それに有弦ってあの伝説の……。」
「ハッタリだ、ハッタリ。千年以上前の奴が今になって復活とか、普通ありえないだろ。」
意外と冷静にチームメイトを諭す小奴可さん。A3チームのリーダーなだけはありますね。
「目覚めたてのちょうどいい慣らしだ。少し遊ぶか。そして断言しよう、次に我が宣言する数が必然となる。」
有弦は次のターン、数あてで勝つ宣言。審判である道上さんも確認を取ります。
「えっと、勝負、続けるのさ?」
「当然、ただし。」
有弦は天に左手を掲げ、黄金の腕輪から放たれる邪気がA3チームさんを包み込みます。
「なんだ、体が重い。」
「命がけの遊びだ。お前達が負ければ、魂は頂くぞ。」
魂を? 一体どういう原理かわかりませんが、危険であることは間違いない。
「ちょっと待って。」
カナデさんもこのままいくのはまずいと判断したようで。
「道上さん、1分だけ、時間をちょうだい。」
「わ、わかった。」
こうして短い作戦タイムが生まれます。
D1チームは、有弦を前に東城さん以外の他のメンバーが委縮しています。それでもリーダーであるカナデさんが声をかすかにふるわせながら切り出します。
「あなたが大数君じゃないってことは、まだ呑み込めないけれど。まずは勝負に勝つことが優先よ。次は大数君の番だったから、順当にいけば有弦さん、あなたが宣言することになるけれど。」
「娘よ、そうおびえることはない。我が宣言し、四八零で決着だ。」
「しはちれい、ってなんっすか?」
恐る恐る手を上げて質問する本庄さん。私には見当がつきますが、普通の人にはわからない言葉でしょう。
「言葉を慎め。理解できないのならお前は所詮その程度。」
「阿僧祇、よせ。的確に相手の嫌なところを突くのはお前の長所であり、悪い癖でもある。」
「す、すみません有弦様。」
あの阿僧祇もこの有弦の前では頭が上がらないようです。
「そういえば、審判はいるようだが記し手はいないのだな。」
有弦のこの発言にピンと来ていないチームの皆さん。確かとある書物のデータによると、記し手とは技板の管理やログを取ったりする人のこと。
「はい。今は記録などせずとも有限様が左手につけていらっしゃる腕輪ですべて行ってくれるようです。」
「ほう、便利な世の中になったものだ。」
阿僧祇の説明を受け、有弦は自分の左手にあるものに興味を持ったようです。
この反応、昔の知識。そして彼の言う通りで決着であれば、大数さんの体を乗っ取った存在は間違いなく、神杉有弦その人と言っていい。
一方、A3チームは。
「これ、本当に続けてよかったやつかな。」
「なに弱気になってる。冷静に考えてみろ。俺たちは〝サニーレイン〟でD1チームの指をすべて固めているんだぞ。しかも相手は小難しい言い方してるが、要は数あてをするって言ってるんだろ。なら、このターンしのげば片手はまず抜けられる。勝機はある。」
そう小奴可さんは仲間を鼓舞します。その様子を見て七塚さんも態度を改めたようです。
「おやつさん、私は少しあなたを見直しました。」
「見直したんなら、ちゃんと名前で呼んでくれよ。」
「勝てたら検討しますわ。」
七塚さんはそう言い、横に目をそらした直後、大きく目を見開きます。
「美零、大丈夫ですの?」
秋津さんがよろよろと歩きながらAチーム連合に戻ってきたのです。
「なんとか、それより小奴可。さっきの一瞬は小奴可が勇者だった。」
「お前名前……。」
「だから、勝て。」
「……当然だ。俺たちが勝つ。」
「一分経ったのさ。勝負再開、D1チームから。」
道上先輩の言葉を合図に、有弦は宣言します。
「【一斉ノ手、〝6〟】」
Turn 24
A3 team 0pt D1 team 0pt
【〝6〟】
R●●●●● R○●●●○
L○○○○● L
「当てられた……。」
「そんな。」
動揺広がるA組連合。
「何をそんなに驚くことがある。これは数あての遊戯。」
そんな中、有弦は手を広げ、言い放ちます。
「数あての神たる我に、勝てるはずなどないだろう。」
勝負は一瞬で。
次回は2/15までに更新予定、よろしくお願いします。




