表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第7章 オリエンテーション編Ⅱ
111/180

第104話 曇り、のち ①

天候といえば、まあまあ種類がありますが代表的なものは雨、晴れ、そして。

それでは本編、ノーデ&大数視点でどうぞ。


「【いちれんのー〝晴れ〟】」

 先攻はA3チーム、小奴可(おぬか)さんの宣言で始まった試合。滝の脇の岩肌に隠されていた投影装置が映し出す太陽、その光がD1チームの左手4か所を固めます。

「【いっせいなで〝雨〟】」

 続く後攻D1チーム、トップバッターはカナデさん。彼女の宣言により水滴が投下され、相手の小指2つと彼女自身の左親指にまとわりつきます。相手の指は2本しか固まりませんでしたが、D1チームの動いていた自分の左親指1本も固めたあたり、〝最高の手術〟で5か所一気に治すことも想定に入れているようです。

「【いちれんのー〝雨〟】」

 A3チームは掛け声は「いちれんのー」で統一なのでしょう。そしてこの〝雨〟に新たに指はかからず4ターン目。

 早くも勝負が動きます。

「【いっすうのーで〝13〟】」


 Turn 4

 A3 team 0pt  D1 team 0pt 

              【〝13〟】

 R○○○○()          R●●●●●

 L○○○○()          L()()()()()


「当てた!」

「さすが、たいすっちっす。」

「ありがとう。」

 本庄君にこう返し、すべての指が固まっている左手を抜く僕。だけど、この未来は見えていた。

 そして。

「相手はわざわざ自分から動ける指を減らした。今が攻め時だ。」

「うん。【いちれんのー〝晴れ〟】」

 小奴可君に鼓舞されたA3チームの向原(むかいはら)君の攻撃で僕たちの指はすべてかかって。

「【〝最高の手術〟】、しかないっす。」

 本庄君がその技を宣言することも。

 神杉の予知能力、と言われるものが発現したのはちょうど5年くらい前だった。初めはほんの数秒の未来、それが徐々に範囲が拡張され、集中すれば数日、数週間先まで見えるようになった。だから〝イセノ〟の勝負をすれば、僕が負けることはまずない。

 本気を出せば。

 僕は今まで勝負の場でこの力を使わないようにしていた。それは父上が最も嫌うことだ。父上は叔母の死後、僕に何度も言い聞かせていた。

「姉上ほど未来が見えた者も死んでしまった。通例であれば神杉家に予知能力者は現れることはこの先十年はない。いや、神杉家に予知などもう不要だ。大数、もしお前に予知能力が発現しても、それを使うな。それは人を不幸にする力だ。」

 最初僕はその言いつけを守っていた。父上に言って、僕を見る父上の目が変わるのが嫌だったから。でも同時にせっかくの力なのにもったいないと思う気持ちもあって、隠れて何度か使った。怪我しそうな人にそのことを教えたり、予知で見えたテストの問題を勉強したり。でも結局、見えた未来は必ず現実になる。怪我はするし、テストの点数は変わらない。便利そうで、不便な力だ。

 でもそれ以上に。父上の言葉の意味を真に理解したのはあの時だ。神社にやってきたある男の子の未来を見てしまったあの時。そしてその子の見るに堪えない死にざまも見えて。

 耐えられない光景に、僕は思わず吐いていた。

「お主、見えておるな。」

 そしてその姿をおじい様に見られて、このことがばれてしまった。


「【〝イリュージョン〟】」


 いけない、勝負に集中しないと。

 A3チームの宣言で現れる幻惑の霧。それがA3チームを包み込み、小指を包んでいた〝雨〟の水滴を消失させる。

「小指が回復? なんっすか。あの技。」

「説明してやろう、この技は……。」

「おやつさんを黙らせなさい。」

「「はい。」」

「ちょっと、お前ら何をする。」

 小奴可君がしゃべろうとした矢先、七塚さんがチームメイト2人に指示を出し彼の口を塞ぐ。

「あれは、指の状態を一括で変更できる技、見かけ上だけど。だからA3チームの指は回復したように見えるだけ、実際はちゃんと固まっているはずよ。」

「その代わり、使用する条件として自分の技板、レベル1以上の3枚を今後一切使用不可にする必要があるけどね。あと、継続するのは3ターンだけ。」

 代わりに三好さんと僕が本庄君にA3チームの使った技の効果を説明する。

「うーん。〝雨〟の水滴が消えたってことは、自由に動く状態を選択したってことだね。ということは次に来るのは。」

 伊原君は技の本質を理解しているようだけど、東城君は。

「ええい、よくわからんけど攻めあるのみ。」

 と構わずに、自分の名前を掛け声に宣言する。

「【トウジョー〝3〟】」

  しかし上がった指の本数は全部で5。

「大数のようにはいかんな。」

「【〝トリック〟】」


 Turn 9

 A3 team 0→5pt  D1 team 5→0pt 

【〝trick〟Lv.2(S1)】

 R○●●●()          R●●●●●

 L●●●●()          L

 All free


「どうなっているんだ? 〝トリック〟は自分の指がすべて動くときに使えるんだったよな。」

「それはだね。」

 東城さんの疑問に道上さんが得意げに答えます。

「〝イリュージョン〟によってA3チームの指をすべて動く、自由状態に変更したからさ。これで実際の指は動かない状態でも、見かけ上は動くようになった。これにより、技を使うのに必要な条件をクリアすることができるのさ。」

 つまりこの技は、技の使用条件を満たす側面が強そうです。しかし、見え方そのものが変わるというのは脳の混乱を招きます。

「これでポイント、とられちゃったね。」

「ええ、でも所詮見掛け倒し。伊原君!」

「わかってますよ。【ちっちっちのー〝晴れ〟】」

 伊原さんの宣言で放たれた〝晴れ〟の光は確かにA3チームまで届いており、A3チームの指は5本上がっています。しかし、本来なら焼け焦げて変色するはずの指に変化は見えません。そして宣言した本人は悟ったようです。

「そうか。攻撃しても常に全部動くように見えるんじゃ、何本固まったか、いちいち覚えてないといけないのか。」

「はっはっはっ。どうやら、理解したようだな。俺たちA3チームの誇る〝イリュージョン〟戦術を。」

 今度こそ雄弁に語る小奴可さん。しかし、そばには縦ロール少女のチームメンバー二人が黒子のようにしゃがみ待機しています。おそらく次は彼の宣言の番、一時的に解放されただけでしょう。

「そして俺たちは今5pt、そして人差し指を含むすべての指が動く。なら、2回行動を可能にするこの技を使うしかないな。」

 小奴可さん、よほど話したいのか、技の名前より先に条件や効果説明までしてくれます。

「【〝電光石火〟】」


 Turn 11

 A3 team 5→0pt  D1 team 0pt 

【〝lightning speed〟Lv.4】

 R()()()()()          R○●●●●

 L()●●●()          L

 All free


「これで次のターン、1ターンでなんと2回行動だ! ここで攻撃を仕掛け、確実にお前たちの指を全滅させる。そしてポイントを持っていないお前たちは防ぐすべがない。」

 そう小奴可君が語る後ろで七塚さんたちは彼の評価をしている。

「効果を使うより前にべらべらとしゃべってしまうのはたまに傷ですわね。」

「でも教えた戦術をすぐに実践するバカ正直なところはいい。」

「おお、美零が褒めるのも珍しいですわね。」

「そう?」

「そうですわ。まあでも、そろそろお口にチャックをしていたただきましょう。あなたたち。」

「「はい。」」

「ちょっと、俺にはまだ……。」

 と、何か言いたげだったけど再び口をふさがれた小奴可君。

「厄介ね。特に今は片手だけだし。」

「確かに、小奴可っちの言うように2回攻撃されると全滅するリスクは大っす。」

 三好さんや本庄君がそうこぼす。七塚さんに呆れられている小奴可君だけど、やっていることはすごく理にかなっている。

 〝イリュージョン〟で〝トリック〟の条件を満たし、奪ったポイントは〝電光石火〟につぎ込み攻める。つまりこれは、相手にポイントを貯めさせない戦術。

 でも、次は僕が宣言する番だ。

「大丈夫、そんな未来はやってこないよ。」

 そう、僕には見えているから。

 ただ、未来が見える僕でも

「【いっすうのーで〝曇り〟】」

 この試合の結末は見えていない。


雲行きは怪しく――。

ということで〝曇り〟は次回に持ち越しです。

次回1/25までに更新予定、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ