第103話 連合
年末に一度、友達と試しに作中のイセノをしてみました。そして気づきました。
複雑、使いにくい技多いなと。自分で設定考えておいてなんだけど。
さて、本編も複雑になっておりますが、今回はノーデ視点から、どうぞ。
私は暗闇の中にいる。この感じ、おそらくフード男の脳内空間といったところでしょう。
『一誠……。』
私と突然の別れ、恐らくかなりショックなはず。立ち直れるかどうか――。でも、一誠ならきっと。
なら私は。
『まだ消えるわけにはいかないですね。』
一誠と無理に引きはがされたため、私、ノーデを構成するデータは徐々に欠け落ちていっています。AIである私がこういう言い方をするのもなんですが、私の命はもってあと1日、明日の午後2時までとみていい。それまでは私という存在が崩壊しないように努めなければいけません。そしてあわよくば、外部との連絡、さらに私をこの空間に閉じ込めているフード男の目的を知れれば。
「そんなに俺のことが気になるのか。」
この空間に響き渡るフード男の声。どうして私の考えていることが。
「接続でつながっているからな。お前の考えは筒抜けだ。外との連絡は俺が主導権を握っている以上不可能だ。」
『なら率直に聞きます。あなたの目的は何なんです? 私を奪って何を……。』
と、急に視界が開けます。
「それは見てれば分かる。」
これは、フード男の見ている光景。一誠と別れた吊り橋からいくらか移動し、目の前に見えるのは大きな岩に囲まれた滝。そして滝の周りに何人か人が。
『あれは……。』
カナデさんや大数さんたちD1チーム。川を挟んで相対しているのは総勢20人、あまり面識のない方が多いですし、後方には入学式で挨拶していた秋津さんもいますのでA組とみて間違いないでしょう。この人数、連合でも組んでいるのでしょうか。
時折見える草木などから、おそらくフード男は茂みに隠れて気をうかがっています。そして彼の目的は。
「いたな、神杉の小僧。」
大数さん、のようですね。
「俺っちたちが勝ったらあなたたちの持っているレベル7以上の技板をすべていただくっす。もちろんそこの滝の洞窟でゲットした技板も含めてっす。くぅ~、こんなセリフ一度言ってみたかったんすよ。」
本音込みで啖呵を切る本庄さん。滝の洞窟、確かに流れ落ちる水に隠れていますが、その向こうに洞窟らしき空間が見えます。
そして本庄さんに応じるのは金髪の縦ロールの少女。彼女は1枚の技板を見せつけながら発言します。
「それはこの、〝アルティメットタイムスリップ〟のことですかしら。」
「〝アルティメットタイムスリップ〟!」
思わず反応するカナデさん。大数さんは思いつめたような顔。それ以外のD1チームの方はそわそわしている様子。発動すれば一発逆転も狙えるレベル10の上級技、おそらく誰もが欲しいに違いない技ですから当然の反応でしょう。
「ですがこれはあそこでへばっている上級生さんを倒し得た正当な対価、しかもこのオリエンでは1枚しか存在しない貴重なものですの。そう簡単にお譲りするわけにはいきませんわ。」
「だから勝負するの。それとも、逃げるの?」
カナデさん、煽りますね。
「逃げはしない。挑まれた勝負には正々堂々応じる。勇者なのだから。」
A組で唯一名前のわかる秋津さんは、この発言の感じ、鵜飼さんと同じような中二病というやつでしょうか。
「見ての通り、私たちA組は全員で動いています。いうなればA組連合、当然技板も共有資産ですわ。ですからもしほしいというのであれば、私たち全員に勝っていただかないと筋が通らないのでなくって?」
「そんなの不公平だ。」
縦ロールの少女に大数さんは不満を漏らしています。
「もちろん私たちが勝ったら、あなたたちの技板をもらいますわよ。私たちが1回でも勝てばそこでこの試合は終了、あなたたちの高レベル技板4枚を差し出していただきますわ。」
「4枚も。」
「私たちA1、A2、A3、A4各1枚ずつの配分ですわ。」
「こんな提案、乗らなくていい。僕は反対だ。」
大数さんは乗り気ではないようですが、D1の他のメンバーはそうではないようで。
「いや、悪くない提案だと思う。」
「4回勝たなきゃいけないが、負けても俺らが失うのは最大でも技板4枚。対してあっちは高レベル技板を全部差し出すわけだろ。」
「それに勝ったら〝アルティメットタイムスリップ〟は確実に手に入るっすよ。確か劇強技っすよね。」
「どうせA組のチームとはトップ争いで当たらなきゃいけない。それが早くなっただけ。大丈夫、私や大数君がいるんだから、絶対勝てる。」
「そう、かな……。」
「大数君的には公平じゃないところが不安なんでしょう? そこは確認して決めるから。」
カナデさんにも説得され、大数さんもそれ以上は言いません。
一方、A組連合の方は。
「よかったの? 相手は世界3位に神杉家でしょう?」
「いいのですわ。他の方々がだめでしても最後私たちA1チームに敗北はありません。この私と美零がいますしね。」
どうやら縦ロールの少女は秋津さんを相当信頼しているようですね。
「おい、俺もいるぞ。俺も。」
そこに威勢よく割って入ったA組の人物。様々な色の髪が渦を巻いている独特な髪形をしています。恐らく真上から見ればグルグルキャンディーのような形でしょう。
「そうでしたわね。えっと、おやつさんでしたっけ?」
「小奴可だ、お・ぬ・か! そんな3時に食べる奴じゃない!」
威勢のいい小奴可さんはD1チームの方を向きます。
「まず戦うのは俺らA3チームだ。そして俺らで終わりにしてやるよ。」
堂々宣言。小奴可さんはA3チームのリーダーっぽいですね。
「まだ、戦うって言ってないけど。」
「えっ、流れ的にバトルする感じだったろ。」
「それは一つだけ確認してからね。」
「確認、何をだ?」
「あなたたちの持っている高レベルの技板、4枚以上ある?」
「もちろん、レベル7以上なら確か5枚はあったな。さっき言った〝アルティメットタイムスリップ〟にり……。」
「ちょっとちょっと、ストップですわ。」
「ならこの勝負、受ける。」
縦ロールの少女は取り乱し、カナデさんはこの言葉を聞いて決断したようです。
「バ、バカですの? わざわざ自分から技板枚数、技名までさらそうとして。そういう情報は隠しとくものでしょうに。あなた本当にA組?」
するとそばのメンバーが縦ロールの少女に耳打ち。さらに縦ロールの少女の表情が歪みます。
「入試もコロコロ鉛筆で突破したですって。」
「バカにはつける薬はない。所詮はおやつ……。」
「バカで悪かったな。あと俺の名前は小奴可だ。」
冷静な表情の秋津さんからもいじられ、彼はそういうキャラなのでしょう。
「ちなみに審判はそこにへばっている上級生さんということで。」
カナデさんのご指名に息を吹き返したように立ち上がる上級生。
「審判、もちろんやらせてもらうさ。こんな熱い勝負、見逃すわけにはいかないさ。」
「先輩の仇は俺が打つっすよ。」
「いやまだ死んでないから。」
この声、本庄さんとのこのやり取り、よく見たら道上先輩ですね。なるほど、本来のイベントの上級生はちゃんと上級生が来ているようです。
「面白いものが見れそうだな。」
そして肝心のフード男、この試合を静観するようです。
A3とD1、互いのチームが技板を腕輪にセット。無言の中、滝の音だけがこだまして。
「試合、かいしぃぃぃぃ。」
道上先輩の声を皮切りに、オリエンのトップを走るチーム同士の勝負が始まります。
前書きの続きですが
皆さんがイセノをする場合は複雑な処理をしてくれる腕輪を持参することを推奨します。
(たぶん誰も持っていない。)
次回1/18までに更新予定です。よろしくお願いします。




