第102話 A1チーム
明けましておめでとうございます。2025年もよろしくお願いします。
今日は1月2日、ということで102話をお届けします。本編は前回の話に引き続き、ナユユ視点。早速本編、どうぞ。
「お前らどこのチームだ?」
「A1チームよ。」
「……A1チーム、だと。」
質問した落合君も隣にいた尾関山さんも、思わず立ち上がり、突然の来訪者の姿を見ています。
A組といえば入学時の成績はトップ、その中のA1チームはこのオリエンでもトップの集団。さぞ、知的で自信に満ちた表情で腕組みしている、そんな姿を想像していました。
「その恰好……。」
しかし目の前にいるのは、息絶え絶えで、服や靴はびしょぬれでところどころ泥がついて汚れている人たち。たとえは悪いですが、敗残兵のようです。
「どうしたんですか⁉」
私が驚いて質問すると、真っ先に答えたのは金髪の縦ロールの女の子。
「本当、雨が降ってきて服もびしょびしょですわ。あなた、タオルはもってるかしら?」
濡れていても見とれるほどきれいな人。
崩れていないお化粧、香水のいい匂い。話し方や振る舞いからいいとこのお嬢様と一目でわかります。同じ中学生であるのが信じられないです。
「す、すみません、も、持ちあわせてなくて。」
「そうですわよね。」
持っていても私ので満足してもらえるか、不安ですが。
続いて黒い長髪の女の子がしゃべり始めます。
「単刀直入に言う。」
一番初めに私たちに声をかけた人、確か入学式でも挨拶していた……。
「私は秋津美零、勇者よ。魔王が復活した。あなたたちにも協力をお願いしたい。」
……。
「ええと……。」
勇者? 魔王? 本好きの私でもさすがに世界観が違いすぎて。頭の処理が追いつきません。
「美零、それじゃ伝わらないですわ。ごめんなさい。そういう設定ですの、せってい。美零、異世界物呼んでから急に、自分は転生した勇者なんだって言い始めたのですから。」
「そう、私は勇者。だから、いつか巨悪が現れた時倒すのは勇者の役目。」
秋津さんってもっと凛とした感じをイメージをしてましたけど、意外と天然な人なのですね。
「そういえばあなたたち、3人だけ?」
「チームは5人ですわよね。千草……塩町家の令嬢の姿が見えないですの。」
「今は、その、いろいろあってですね。」
フード男さんの件は話せば長くなりそうですし、素直にA1チームさんに話していいか迷うところもありますし。それよりも気になるのは。
「で、1位独走中のA1チーム様が、何の用だ?」
落合君が聞いてくれました。
「さっき言った通り、協力を求めに来た。」
「そうですの。美零の言い方はあれでしたが、緊急事態というところは変わらないですの。」
A1チーム、切羽詰まっている状況なのは伝わります。私たちと同じ、何かトラブルが起こったのかもしれません。
「とりあえず濡れるので中に入ってください。」
私たちはA1チームの5人を中に引き入れました。ベンチも詰めて、全員が座ります。
「まずは自己紹介。美零はフライングしたので私から。このチームのリーダーを務めます、七塚舞姫と申します。」
「七塚って。」
「おおご存じ? 塩町グループと双璧をなす我が七塚財閥。私はそこの二女にあたるのです。そして実はこのチーム、私以外の春、夏、冬は全員私の家の付き人ですの。」
「秋津さん以外の3人もですか。」
私たちが見つめると、七塚さんが紹介した3人は軽く会釈。
「おいおい、冗談だろ。」
「冗談ではありません。私のような人物が出歩くには付き人は必須ですの。とはいえ、私が同じ年の子がいいとわがままを言いましたら、まさか4人もつけてくるとはお父様の過保護っぷりには呆れますわ。」
秋津さんは個性が強そうですが、それ以外の3人は、あまりしゃべらなさそうなので付き人と言われると納得できなくもないです。偉い人の子供というのはそういう人がついてくるものなのでしょう。
「千草ちゃんにも、大柄男の人がついとったしな。」
「スリーさんですね。」
「あの方も腕は立つようですが、私の付き人の方が上です。特に美零は優秀でして、勉学もスポーツも私よりできますし、仕事の手際もいい。危険を察知するとすぐに私を守ってくれるまさに完璧な付き人、ですわ。」
私と尾関山さんの会話に思わず机をたたいて雄弁に語る七塚さん。千草さんに対抗意識でもあるのでしょうか。
「姫、私の話はそのくらいで。」
「おっと、失礼しましたわ。」
秋津さんにいさめられ、私たちも軽く自己紹介して、話は本題へ。私から質問します。
「で、さっき秋津さんが言ってた勇者、魔王や協力っていうのはどういう意味なんですか?」
「協力に関しては連合を組みましょう、という意味ですわ。」
「連合?」
「D2チーム、魔王が率いるチームを打ち倒すため手を貸してほしい。」
話が見えません。D2チーム、カナデさんや大数君のいるチームが魔王? それに連合って。
「もともとA組は今回のオリエン、連合を組んでいるのですの。お互いの技板や腕輪を我がA1チームの保有資産にする。そして我がA1チームが優勝した暁には七塚財閥から今後学園生活に必要な技板を提供するというね。」
それってつまり――。
「なるほど、腑に落ちたぜ。お前らがトップを独走しているのは、A組の他のチームを買収したんだな。」
「負けでもして、家の名を貶めるわけにはいきませんもの。」
「すみません、それってつまり、今回のオリエンの優勝はA1チームさんに譲れってことですよね。」
私は自分の理解が正しいのか、A1チームさんに問いかけます。一瞬の沈黙、そして秋津さんの答え。
「A組基準の連合という関係で言うなら、そういうことよ。」
「話にならないな。交渉は決裂だ。」
落合君は話を切り上げようとしますが、七塚さんは食いつきます。
「お待ちください。連合といってもD1チームを倒すまでの間で構いません。あなたたちの腕輪を貸していただけないでしょうか。」
「風のうわさで聞いた。D2チームには特性付きの腕輪を持っている人物がいると。だから貸してほしいのだ。この通りだ。」
A1チーム5人全員が頭を下げます。
「なるほどな、最初から狙いは腕輪か。」
特性付きの腕輪。このチームでそれを持っているのはここにはいない千草さんと、私。
「どうして、どうしてそこまで腕輪を?」
「A組は私たち以外、D1チームに負けて意識を失ったのですわ。」
「えっ。」
「どういう原理かはわからないが、魔王の放つ呪いが、敗者を一人残らず眠りにいざなったのは確かだ。それもそう簡単に目覚めることのない眠りに。」
「それで、さっきから言っている魔王、それって誰のことなんですか?」
私は一番気になっていたことを聞きました。そして秋津さんからその人物の名が明かされます。
「神杉大数。」
「嘘やろ……。」
「あの、キノコ頭がか。」
「あの優しそうな大数君が……魔王?」
私たちが衝撃を受ける中、七塚さんは続けます。
「語らねばなりませんね。私たちとD1チームとの戦いを。」
D1チームとの間に一体何が――。
次回1/11までに更新予定です。よろしくお願いします。
♦♦25年 6/21以下、少し修正♦♦
七塚さんの付き添いに名前を付けたことをすっかり忘れており、123話を掲載してしまいました。そのため、以下に修正します。
内名、西城、和知→春、夏、冬
ボツになった名前は今後の登場人物に使われるかもしれません。よろしくお願いします。




