第99話 封殺の番犬
最近のあとがきは引きを意識してシンプル目、ちょっと中二っぽい?
それでは本編どうぞ。
「俺の先攻!」
瞬きをすれば、苦しむノーデの姿。助言や憑依での入れ替わりは期待できない。俺一人の手で、一刻も早く、助け出さないと。
「【いっせいのーで〝雨〟】」
俺の宣言とともに、フード男が橋に突き刺した刀から投影される灰色の雲。しかし、肝心の〝雨〟は降らず。お互いに下げている指が1つもないからだ。〝ツインパワー〟、これで俺に5ptが入る。
だけどこれは。
「【〝トリック〟】」
「【〝シールド〟】」
こうやって、ポイントを消化されて振り出しに戻るやつだ。ただし、相手のターンからになるが。
「見えにくいな、お前の指。なら。」
フード男は指をパチンと鳴らす。直後、俺の目の前に出現した4、5倍はありそうな大きな両手。フード男の方も同様に手が出現している。
「これで見やすくなった。」
自分の指を動かすと連動して目の前に投影された手も動かせる。湖のときと同じ、あの刀の投影装置、結構ハイスペックのようだ。
「【いッしんのーで〝0〟】」
Turn 4
Issei 0pt hood man 0pt
【〝0〟】
R○○●●● R●●●●●
L○○●●● L●●●●●
「上げたか。」
フード男の数あては外れます。
「【いっせいのーで〝雨〟】」
5ターン目。一誠の技は今度こそちゃんと発動し、上空の雲から2つの水滴がフード男の右親、人差し指に降り注ぎます。
一誠はさっきより冷静ではありますが、宣言のスピードが速い。おそらく私の様子を見て焦っているのでしょう。しかしこれもあのフード男の作戦のうち。あの人は一誠の平常心をかき乱しています。
『い……。』
本当は、『一誠、私のことなど気にせずに、冷静に戦ってください。』といいたいのですが。もうまともに声も出せない私は、ただ戦いを見守ることしかできません。
「【〝ビーム〟】」
Turn 6
Issei 0pt hood man 0pt
【〝beam〟Lv.1(S1)】
R○●●●● R●●○○○
L○○○○● L●●●●●
光は俺の右親指に着弾。この位置……。
「〝ツインパワー〟対策か。」
この人、身体能力だけでなく〝イセノ〟の腕も手馴れている。ここは〝手術〟すべきか、いや、まだ所詮1か所かかっただけだ。
攻める。
「【いっせいのーで〝雨〟】」
かかったのはフード男の左中指より下3本。
「【〝最高の手術〟】」
しかし呆気なく治され、フード男の指は全回復。まるでこの技をしたいがために追加で3本かかったような。
「【いっせいのーで〝4〟】」
俺の数あて、しかしフード男のあげたのは2本。俺と合わせて合計は3。
「危ない、危ない。」
「全然危なそうに聞こえないな。」
「お、やっと勝負が始まって宣言以外で口を開いたな。少し慣れてきたか。」
「なれるわけないだろ。」
ロープ巻き付けてやっとだぞ。橋が揺れてまともに立ってすらいられないのに、これで指の上げ下げをするのも何倍も体力を使う。
「【いッしんのーで〝雨〟】」
Turn 10
Issei 0pt hood man 5pt
【〝rainy〟Lv.1(S1)】
R○○○○○ R○○○○○
L●●○○○ L○○○○○
「〝ツインパワー〟は避けたか。」
フード男はこういっていますが、彼が一誠に指を下げさせたの方が正しいでしょう。〝雨〟を避けるためにはすべての指を上げるしかないですが、それでは〝ツインパワー〟となってしまいます。そうなれば、フード男のポイントは一気に10pt、大技を出されるのはまず間違いないと言っていい。
「【いっせいのーで〝雨〟】」
一誠は続けざまに〝雨〟を放ちますが。攻撃はかわされます。
いけない。この極限状況下、一誠の癖が出ている。
「さあて、ここからが面白いところだ。見せてやろう。」
あの自信ありげな口調。
これは、何か来ます。おそらくフード男の切り札が。
「【〝流星〟】」
彼の技の宣言とともに上空から落ちてくる青白い光。それは徐々に大きくなり、隕石そのものがはっきりと目視できたのも束の間、一誠の右親指に着弾。黒く、死滅させます。
Turn 12
Issei 0pt hood man 5→0pt
【〝meteor〟Lv.3(S1)】
R×●●○○ R●○○●●
L●●●○○ L●●●●●
「くっ。」
「〝流星〟は相手の固まっている指1か所を指定し,3ターンの間死滅状態に変える技だ。」
死滅状態、厄介だな。
この状態になった指は〝手術〟系の技では治せない。俺の持ってる技だと治せるのは万能回復効果のある〝タイムスリップ〟か〝ゴッドウォール〟くらいだろう。だけどそうするより、時間がたつのを待つのが得策か。
「そしてこれで、条件を満たした。」
条件?
フード男の背後に何か、まさか。
「特性、発動。」
フード男は右腕を天に掲げる。その瞬間、まがまがしい邪気とともに現れるのは3つの頭を持つ、空想上の生物。
「封殺の番犬、顕現!」
今にも襲い掛かってきそうに、よだれを垂らしながら俺をにらみつける黒い番犬。
「さあ、食いちぎれ!」
フード男の宣言で吠える封殺の番犬。そして獲物を見つけたかのように俺に襲い掛かる。
「うわあああ。」
思わず右手で頭をガードするほどだ。投影された俺の右親指は番犬に食いちぎられ、血しぶきを上げて赤黒く壊死する。
「たぎるな、映像といえど、血が流れる瞬間は。」
「お前……。狂ってるな。」
「そうか? お前らの時代が生ぬるいんだろ。」
時代? こいつ、かなり昔の人物かもしれない。千草さんの帯刀にさほど驚く様子もなかったし、ノーデだってもとをたどれば〝無限の巫女〟の生まれ変わり。それにOperation codeも扱えていた。
そうか。
「お前、もしかしてノーデと同じAI、それもかなり昔の人物なんじゃないか。」
「へえ、察しはいいんだな。」
声色が変わった。ゾッとする声。でも核心に触れている証拠だ。
「まあ、俺のことを詮索するより先に、自分の手元を見たらどうだ?」
「なにっ。」
封殺の番犬はすごかったけど、所詮は映像、俺の体に傷はない。ただ、特性だ。〝イセノ〟をするうえでなにか影響はあるはず。
俺の手元、よりグロく死滅した右親指。見るのもためらわれるがここに何か……。
いや違う。
そこよりもっと根元、右手の腕輪に垂れ下がっている俺の透明な技板たち。そのうちの1つが。
「黒くなってる――。」
フード男の特性、封殺の番犬。その権能とは。
次回12/7までに更新予定,よろしくお願いします。




