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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第6章 オリエンテーション編Ⅰ
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第98話 震え

入学編のころは夕飯前に更新していましたが、いつの間にか夕飯食べてから更新が当たり前になりました。

そんなどうでもいい前置きはさておき、本編どうぞ。

 俺の頭の中に、あるもの……。

『私のこと、でしょうね。』

「ノーデ、大丈夫か。」

『はい、今は。』

 そう話すノーデだが、つらいのは違いない。大量の汗をかいているし、さっき痛くなって思わず目を閉じたとき、ノーデの姿がかなり乱れていた。

「でも奪うって、そんなことできるのか。」

『私も具体的な方法はわかりませんが、先ほど干渉されたことを加味すると、まず間違いなくあの人はその方法を知っているでしょうね。』

 確かに。Operation(オペレーション) code(コード)、俺とノーデしか使えないものだと思っていたけど、フード男は使ってきた。

『とはいえ、彼は危険です。まずは逃げるか、助けを呼べればいいのですが……。』

「俺もフラフラだし、みんな気絶してるんだ。置いてはいけない。だからまず……。」

 大声で叫ぼうと、大きく息を吸って

「おっとそれは無駄だ。」

 フード男は俺の行為を見越したかのように制止する。

「今この周囲には貴様ら以外誰もいない。それに助けを呼ぼうと大声を出す、もしくはその腕輪で連絡しようものなら……。」

 フード男は倒れている尾関山さんの肩に足を近づけて、言い続ける。

「貴様の仲間を一人一人、この橋から突き落とす。」

 その言葉を聞いた瞬間、俺の恐怖が失せて別の感情がこみ上げてきて。

「卑怯、だぞ!」

「この橋の倒れている奴らを人質にとったことか。この世界なんて、そんなもんだ。」

 くそっ。本当に何なんだ、こいつ。

『一誠、感情的になったら彼の思うつぼです。情報を聞き出す方にシフトしましょう。時間を稼ぐのです。』

 ノーデは瞬き合間に冷静に次の手を考え出す。俺も湧き上がる怒りをぐっとこらえる。

「俺の頭の中にあるものって言ってたな。それはなんのことだ。」

「とぼけても無駄だぞ。お前の中にあるんだろ。すべてをつかさどるAIが。」

 すべてをつかさどるAI? ノーデが?

「そんなに、すごいものじゃないぞ。」

『一誠?』

 いや確かにノーデはすごいけど、万能じゃない、人間らしいやつだから。

「お前が自覚していないだけだ。それは大事な鍵なんだ。」

「カギ? 何のカギだ?」

「この世とあの世をつなぐ鍵さ。」

 言っていることの意味が分からない。話題を変えよう。

「俺は気絶させないのか?」

「お前の中のものを奪うには〝イセノ〟で勝利しなきゃいけないんだ。それがロック解除の条件だから。」

「奪ってどうするんだ?」

「それは教えられない。」

 肝心なところは聞き出せないか。

「勝負なんてできない。俺の今の状態じゃあまともに〝イセノ〟なんてできっこない。」

「それは手が震えてか? それとも精神的にか?」

 フード男に言われて気づく。俺の頭は怒りでいっぱいになりそうだが、体はまだあいつを恐れて震えている。

「……両方だ。」

「ならお前は今から俺の宣言する数字を上げさえすればいい。勝負の体さえとって成立すればいいんだ。」

 要は八百長か。

『一誠、誘いに乗るべきではありません。原理はわかりませんが、少なくとも私は――。』

「いいのか、ほらこの女が橋から落ちても。」

 フード男はナユユの体をつかみ上げて脅す。

「くっ……。」

 ノーデの気持ちはわかる。でも、人質に取られた時点で、大事な仲間を守るためにはどのみち選択肢は1つ。戦うしかない。

 それに俺とノーデと2人なら勝てるはずだ。

「ああ、1つやり忘れていたな。」

 そういったフード男はナユユを下ろし、刀を取り出した。いや、あれは千草さんと同じ有弦刀か。

「お前何を。」

「こうするのさ。」

 そういうと男はナユユに向けて振り上げた刀を。

「やめ……。」

 いや、刀はナユユのわきにある橋げたに突き刺さった。そして直後。

『うああああああ。』

 ノーデの絶叫。俺は何ともないのに。もしあれが、千草さんが俺の家で使った有弦刀だったら強力な電波が出ているはず、たぶんそれがノーデを苦しめている。でも。

「ノーデだけなんで……。」

「少し波長を変えてるからな。それに相当強めの電波だ、これで貴様は中からの手助けを借りられなくなった。」

「正々堂々、戦えよ。」

「おいおい、それはそっくりお返しするぜ。2対1なんて卑怯だろ。」

 くそ、そこは言い返せない。

「そして、この電波が長引けば、そのAIは壊れるだろうな。」

 ノーデが、壊れる……。

「やめろ、お前もノーデのことが欲しいんじゃないのか。」

「鍵は道具だ、自我はいらない。」

 冷徹に、フード男は吐き捨てる。そしてそれが俺の琴線に触れた。

「おまえぇぇぇ。」

 俺はいてもたってもいられなくなって、とびかかる。実際は体が思うようについていかず橋げたに膝をついてしまったが、それでも少しでもこいつに一発入れたくて前進し。

『……一誠。』

 かぼそい声。だけどその一言が俺を踏みとどまらせる。

『冷静に……。』

 つらそうなのに。ノーデは自分よりも俺を思って。


 しっかりしろ、俺。


 俺は足を奮い立たせる。

「俺が勝ったら、おとなしく退け。誰も傷つけずに。そして二度と現れるな!」

「いいだろう。何なら俺の命もかけよう。負けたら俺は、ここで死ぬ。」

 本当に何なんだこいつ。軽々しく命って。それに死ぬって。

「だが、俺が勝ったらわかってるな。お前がノーデと呼ぶそのAIを、もらう!」

 フード男の言葉の真意はおいていても、こんな奴に、負けちゃいけない。

 お互いに技板を自分のリングに引っ掛ける。俺はこのオリエンで集めた技板ではなく、自分の持ってきた方を選んだ。使い慣れている方が絶対いい。

 風が吹いて揺れる橋。フード男はロープをつかまず直立し、俺は肘をまげてロープを絡ませて何とか手を開けるように体を安定させる。

 これで、震えも止まった。

「さあ、始めよう。」

 互いに見合って、俺の決意も固まる。


「上等だ。お前なんかに、ノーデは絶対渡さない。」


少年は戦う、大切なものを守るため。

次回は11/30までに更新予定です。よろしくお願いします。

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