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いっせいノーデ!  作者: 乙島仟
第6章 オリエンテーション編Ⅰ
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第97話 危ない橋

本日の更新時間は21時、つまり午後9時です。9といえば不吉な数字ですが。

それでは本編です。

 上級生の壁。俺でも内容、ある程度想像つくぞ。

「これよりぃ、高レベルなレア技板を持った先輩たちがこの園内を巡回しまぁす。その中には私たち生徒会もいますよぉ。確か、会長も巡回されるんですよね。」

「まあな。」

 園内放送で初めて聞く上戸先輩以外の声。梶田会長のたった一言だけど。

「皆さんはその先輩たちに勝利することができれば、レア技板をゲットできますぅ。レア技板はレベル7以上の技を選定していますのでぇ、獲れば獲るほど上位チームとの点差をひっくり返すことがぁできます。ただしぃ、レベル10の技ともなると、当然入手は難ですがぁ。」

 なるほど、あらかた予想通り。想像できてなかった部分といえば入手難易度だけど、今の放送の感じだと、会長とか強い人はレベル10の技板を持っているってことなのかもな。

「「でも、上位チームが勝てば点差は開く一方なんじゃ。」」

 C4チームと放送の声が重なるが、放送の声だけがそのまま続く。

「という懸念もご心配なく。誰がどこを巡回しているかの位置情報は最下位のチームから順に開示していきます。というかもう、最下位のチームにはそのメール送りました。ここから5分ごとに1チームずつ開示しますのでぇ、トップのA1チームに情報開示されるのは今から75分後となりますぅ。」

「それなら僕たちにもまだチャンスはありますね。」

 隣のテーブルに座っているC4チームも活気づいていく。

「皆さんが楽しめるようにするのも生徒会のお仕事ですからねぇ。それでは午後も頑張ってくだぁさい!」

 とこれで、2回目の園内放送は終了。と同時にC4チームの高君が立ち上がる。

「こうしちゃいられないな。俺たちも動くぞ。」

「ええ、もうですか? まだメール、来てないですよね。」

「それに食事中なんですけど。」

「D2チームさんにあとつけられると困りますからね。できるだけ早く、ここから離れた方がいいんです。」

 と渋る吉田、西見さんたち女性陣に四苑君が理由を説明する。

「ああ、そういう手もあるのか。ほんと頭いいな、四苑。高も気づいてたのか?」

「……ま、まあな。」

 ああ、高君わかりやすく目をそらして。これ勢いで言ったやつだな。

「そういうことなら……。」

「でもまだ食事が。」

「西見、パンは移動しながらでも食える。」

 と高君が西見さんを説得してC4チーム全員が立ち上がる。

「ということでお先です。ご健闘お祈りします。」

 四苑君がお辞儀しながらそう言うと、C4チームはパンを片手に持ちながら、足早に休憩所から去っていった。

「せわしないやつらだな。」

「でもうちらも呑気に食べとる場合やないなあ。」

 落合君や尾関山さんがそんな彼らを横目につぶやく。

 さて、俺たちのチームも食べながら次の方針決めだ。

「今3位の俺たちが上級生の位置情報を知るのって今から65分後ってことだよね。今が13時30分だから14時35分ごろか。」

「むむむ、結構時間があるな。となるとC4チームが言ったようにどこかのチーム、A1、D1以外を見つけて尾行するのが得策か。」

「まあ、そういう手もありますけど。園内を巡回しているって言ってましたし。たぶん上級生さんを見つけること自体はそこまで難しくないとは思うんですが。」

 ナユユの言うことも一理あるか。

「じゃあ、ここは初心に帰って残りの技板を探し出すか。」

 と、俺の提案にD2チームの女子たちは賛成する。

「結局、九山が仕切ってんじゃねえか。」

 と、落合君は愚痴をこぼす。

「そうなると一番近いのは、この橋を渡って川の方を上っていくんが最短コースやな。」

「どのコースだ?」

「ああ、うち一人やわからんよな。そうや! 誰もいないから投影装置使わしてもらおうか。ちょうど英二兄もおることやし。できる? 英二兄。」

 と、尾関山さんは英二さんに呼び掛ける。彼はぶつぶつ何か言いつつ、部屋の投影装置を起動させ、2Dのマップが部屋の壁に投影される。

「現在地の邪薔薇湖がここ、でここからこういって、橋を渡った先に1つ、そこから上流の方に向かえば残りの技板もあるで。」

 マップを指さしながら尾関山さんはしゃべる。なんか発表してるこの感じ、ザ・チームワークっぽくてワクワクするな。

『そう思える今がうらやましいですね。大人になればいやというほど体験するかもしれませんよ。』

 ノーデはどうした、皮肉モードか。寿司が食べられなかったこと、根に持ってるのかな。

「じゃあ、そのルートで行きましょう。皆さん、異論はないですか?」

 ナユユがチームに確認し、全員がうなづいて、次の進むべき道が決まった。

 俺たちは寿司を食べ終え、板前さんや木戸先生、英二さんたちに礼を言って湖を後にする。そして10分ほど歩いてたどり着いたのは。


「吊り橋!」


 森の木々を抜けた先、ロープでつるされ中央がたわんだ橋がお出迎え。橋げたは木、向こう岸まで全長は100メートルくらいありそうだ。

「今時、こういう橋あるんだな。」

「ミステリーだったら、真っ先に落とされそうな橋ですね。」

 ナユユ、初見の感想がそれか。本好きのナユユっぽい例えだ。

「向こうから、誰か来るぞ。」

 落合君の言う通り、黒いフードに身を包んだ人が橋の反対側からやってくる。

「むむ、なんか、いかにもという感じだ。」

「あの人が、イベントの……。」

「確かこの施設って貸し切っとるんやろ。なら、間違いないやろうな。」

「でも。」

 この橋は2人がすれ違える程度しか幅がない。

「と、とりあえず、指の順番で一列で渡りましょう。」

 とナユユが先行して一歩を踏み出して、足を戻す。

「おお、もしかして奈湯ちゃん、怖いん?」

「そ、そんなことはないですが横のロープもってゆっくりでないと。」

「足震えたまま、強がらへんでも。」

「す、すみません……。」

 尾関山さんに言われて赤面しながら足を抑えるナユユ。リーダーとして頑張ろうとしてるんだな。

「大丈夫、うちも高いところ苦手やから。」

 尾関山さんに言われて橋の下を見ると。川はあるがそこまでかなり距離があるし、ごつごつした岩も多い。落ちたらただじゃすまない。ああ、こういう場所。

「バンジー……。」

「バンジー?」

「ああいや、俺も。高いところは苦手なんだ。」

 脳内空間での特訓の時の罰ゲーム、バンジージャンプが思い出されて。よくこういう場所からノーデに突き落とされて、ああやばい。思い出すと余計怖くなる。

「おいおい、あのフード男は何もつかんでないぞ。俺も手放しで渡り切れるぜ。」

 と自信満々の落合君。

「じゃあ、先頭と2番目交代してもらってもいいですか。」

「仕方ねえな。」

 と言いつつ内心嬉しそうな落合君。しかし、彼もわたり始めると顔が引きつっていき、横のロープに手をかけた。

「手放しで渡れる、とか言ってなかったか?」

「うるさいぞ、九山。意外と揺れるんだよ。」

 と、ちょっといじると怒られてしまった。

 落合君に続いてナユユ、尾関山さん、そして俺も橋を渡り始める。ボートの時とはまた違う不安定な足場。足元を見れば板と板の間がすけていて、角ばった岩の隙間をぬぐうように水が速く流れている。

「一誠殿も、皆こんなことで臆していては武士の名折れだ。」

 と最後に威勢よく一歩を踏み出した千草さんも

「むむむ!」

 を連呼する始末だ。

 ともあれ俺たちは一歩一歩踏みしめながらなんとか橋の中央までやってきた。同じペースでフードの人もやってきていたのか、ここで相対する。

「お前がイベントの上級生、であってるか?」

 開口一番、先頭の落合君がフードの人に声をかける。しかし、その人は落合君には目もくれない。それどころか。

「その1の髪型のお前。」

 えっ、俺のことか。

「お前が九山一誠、であってるよな?」

 あっちの方から質問してきた。しかも落合君ではなく俺に向かって。声的には男っぽいが。

「は、はい、そうですが……。」

 俺が答えた瞬間、フード男は俺の方に手を向けて唱える。

「Operation code」

 !!!


接続(コネクト)!」


 直後、俺の頭に電流が流れたような衝撃。

『「ああああああ。」』

 俺は咄嗟に頭を抱えて横のロープにしがみつく。痛い、痛い、かなり痛い。しかもそれは俺だけが感じてるわけじゃない。脳内空間のノーデも叫んでいる。

「九山君!」

「おい九山、どうした。」

 ナユユや落合君が心配する声。でも息をするのがやっと。ロープをつかんでいるが、足はさっきよりもふらつく。

「いったい、何を……。」

 10秒くらい立ってやっと言葉が出た。今、痛みは徐々に引いている。

「やっぱ、ロックがかかってるな。そう簡単にとらせてはもらえないか。」

「あなた、九山君に何を……。」

「いい子はおねんねしてな。」

 ナユユがフード男の手刀で気絶させられた。こいつ、さっきまで落合君の前に立っていたのに。見失ったと思った次の瞬間、ナユユの背後に。

「この野郎!」

 落合君は振り返りざまに拳を繰り出す。が、この揺れる橋の上ではたやすくいなされ同様に手刀の餌食に。

「あいつは危険だ。スリー、いるか。」

 千草さんは顔色を変えて叫び、後ろを振り返る。でも応答がない。

「スリー……?」

「スリーってのはあの男か?」

 フード男は彼が元来た方を指さしている。向こう岸、茂みの方に倒れている大柄な男はマークスリーさんか。

「先攻して偵察していたんだろうが、あらかじめ気絶してもらった。」

 このフード男、相当な手練れだ。

「かくなる上は。」

 千草さんが体操服の腰のあたりから取り出したのは脇差のような短刀。

「ほお、今の時代に帯刀してるとはな。」

 フード男も驚いている。護身用に着けているのか。俺と初めて会った時に使っていた有弦刀に似ている。たぶん刃先は危なくないやつだが、当たればただではすまなさそう。

「すぅ、やああああ」

 深呼吸の後、上段の構えで勢いよく切り込む千草さん。が、彼女が思い切り振り下ろした刀はいとも簡単に避けられて。

「威勢はよし。が、隙だらけだ。」

 背後を取られて手刀を首筋に。

「不覚……。」

 そう言い残して千草さんも気絶。そしてフード男はその近くにいた尾関山さんに一歩ずつ近づいていく。橋の揺れをもろともしない。

「やめろ……。」

 そんな俺の声もむなしく、後ずさる尾関山さんは橋の揺れで足を滑らせて。

「なんで、こんなことするんや?」

「貴様たちがそれを知る必要はない。」

 尾関山さんも、俺以外全員が気絶させられた。

 こいつ、ヤバイ。

「お前何者だ! 何が目的なんだ⁉」

「何者と聞かれても名乗っちゃいけないものでな。まあ目的はうすうす気づいてるだろ、小僧。」

 小僧? 年上っぽいけど、この学校の上級生じゃなさそうだ。

「まあ、あえて言うなら。」

 フード男は口元に笑みを浮かべ、自らの目的を述べる。


「貴様の頭の中にあるものを、奪いに来た。」


波乱、始まる!

次回は11/23までに更新予定です。よろしくお願いします。

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