第94話 終わるまで
今回で話数は94ですが、設定集など含めエピソードとしては100個目になります。読者の皆さんには感謝いたします。
では記念すべき100回目の掲載、本編どうぞ。
Turn 27
D2 team 6→1pt C4 team 0pt
【〝fog〟Lv.4】
R●●●○● R
L●●●●● L?????
自分の提案した技を、まさか自分で言うことになるとは。
〝霧〟は手術ポイント5ptに、〝雨〟、〝晴れ〟1回ずつの条件で使用できる。効果は、自分の指の状態を自分のターンで数えて3ターンの間、相手に確認できなくさせる。
今、俺たちD2チームの指はすべて動く以上、ここから新たに固められたとしても、C4チームはどこが固まっているのかを目視できないわけだ。そしてこれは3ターン経過後の次の相手ターンが終わるまで続く。だからもし、C4チームが〝タイムスリップ〟を〝追い風〟で4ターンに延長させていたとしても、〝タイムスリップ〟中は〝霧〟の効果は続くことになる。
『視覚的情報から読み取れることはたくさんありますからね。それをなくすことはC4チームが数あてするのには痛手でしょう。さすがですね、一誠。』
「そうだろ~。もっと褒めてもいいんだぞ、ノーデよ。」
と、俺は脳内空間でノーデに褒められ、気分が高揚中だ。
それにしても。
「上の〝イセノ〟の表記、なんだよ、相手チームの指『?』って。」
俺はこの空間の天面に現れる見慣れない表記が気になり、ノーデに尋ねると。
『見えないということを表現しているんですよ。』
見えない?? それはC4チームから見てだよな。
直後、現実で落合君からの質問。
「この技を使うと、俺たちも相手がどの指が動くのか見えないよな。九山、そこは何か考えているのか?」
「そこは……。」
――しまった、考えてなかった。
『〝霧〟はお互いの指の状態を3ターン見えなくする技ですよ。詰めが甘いですね。』
初めて使ったからなぁ、そういう効果だったのか。あと、褒めた後落とすとは、ノーデは相も変わらずいやらしい。
「知ってたなら言ってくれればいいのに。」
『基本私はオリエン中は介入しない、最初にそう決めたでしょう?』
こういう時に限って。さっきは助言とか言ってたくせに。
『あくまでゲームの中身までは助言しません。そこは線引きしています。』
ノーデにそう論破されてしまった。
さて、チームにはどう説明したものか。
「えっと、その、相手は5本しか動かないけど、こっちは10本全部動くから……。」
ああ、自分でもわかる。考えがまとまってない。
「私たちは10本に対して、相手は〝タイムスリップ〟で5本しか指が動きません。ですから、〝雨〟、〝晴れ〟で固めていけば否応にでも相手の動く指の本数はさらに減ります。なので最初は固める技を打って、数あてしていけば勝てるでしょうし、〝タイムカプセル〟で戻ってくるポイントを使わせることもできるんじゃないかと、そういうことですよね、九山君?」
「え、ああそう、そういうこと。」
ナユユありがとう、なんか深読みしてくれて。
「考えはわかった、が。」
落合君は理解してくれたようだが、同時にC4チームの方を向いている。言いたいことは、なんとなく察しが付く。
「これじゃあ、指どころか相手の顔さえ見えないよ。」
今度はC4チームからも声が上がる。たぶん〝霧〟は本来指だけを隠すものだけど、今回はパドルの動きも連動している都合上、ボート全体を隠しているから次の宣言をしようにもしていいのか戸惑ってるんだろう。実際、俺も戸惑ってるし。
「そこについては。」
戸惑う両チームに英二さんの助け舟。そして俺たちの顔の高さくらい、何もなかった空間にC4チームの船の上の様子が映し出される。
「互いのチームの首から上だけの映像を出す。これでいいか。」
「さすが英二兄やな、仕事が早い。」
これならお互い、顔色をうかがうことができる。
「では、気を取り直して。【ちょれいっ〝晴れ〟】」
吉田さんは卓球独特の掛け声をつけて宣言する。これにかかったのは尾関山さんの左、つまり上空の左中指1本のみ。
「またか、やっぱりな。みんな聞いてくれ。」
落合君、何か気づいたな。俺たちは彼の近くに体を寄せる。
「今までのあいつらの攻撃、全部〝晴れ〟だった。もしかしてあいつら、〝雨〟の技板を持ってないんじゃないか。」
そういわれて俺もこの試合を振り返ると。
「確かに、使ってなかったね。」
いくら〝晴れ〟がこの試合では有効でも、もう28ターンも経過している。不自然といえば不自然だ。
「確かC4チーム、技板12枚って言ってたんですよね。で、出たのが確か〝晴れ〟、〝手術〟、〝最高の手術〟、〝タイムカプセル〟、〝トリック〟、〝追い風〟、そして〝タイムスリップ〟。もう7つは使っています。残り5枚が何かはわかりませんが、使いにくい技という可能性もあります。」
ナユユは指を折りながら言う。
「それに尾関山の弟が指示出していた時、八幡に攻撃です、って叫んだのが聞こえたんだが、それだけだと普通〝雨〟か〝晴れ〟か迷うだろ。少なくとも俺は迷う。」
「確かに。」
「でもあいつらそれがなかった。あの言葉が合図だったという可能性もあるが、あの状況で数あてを除いた攻撃の手段が〝晴れ〟しかなかったのなら腑に落ちる。」
「そうとわかればこちらは一層固まることはないな。要は指を上げすぎなければいいのだろう。」
確かに千草さんの言う通り。だけど。
「さっきみたいに全下げで〝ツインパワー〟が起こってポイントが増えるのも危険だから、最低1、2本は上げておくべきだね。」
「うむ。」
全員で方向性を再確認し、千草さんは〝晴れ〟を放った。C4チームが何本かかっているかは、この〝霧〟で見ることはできない。
「【ナイッサー〝5〟】」
西見さんはバレー特有の掛け声で数あて。こっちの上がっているのは4本。
当たったか? いまここで当てられていたら俺たちの防ぐ手段はないが。
「惜しいかどうかもわからないじゃん。」
全く持ってその通り。
「今さらやけど、これ当たったとかどう判定するんやろ? 〝霧〟でお互い確認できんやろ。」
「当たったら腕輪に抜けられるかどうか表示がでるよ。それに相手は片手だから勝負も終わるはず、つまりこの投影も終わるはず……。」
これは生徒集会で万倉先輩とやった時も思ったことだな。
でも見たところ、〝霧〟も上空の手も消える様子がない。
「まだ、終わっちゃいないってことですね。」
ナユユの言葉にD2チーム全員が胸をなでおろす。
しかし、次のナユユの番。数あては最初の理由で外れたと分かった。
32ターン目に突入。ふと腕輪を確認すると。
「これは!」
どういうことだ?
直後、高君の宣言。
「【オーエッす〝台風〟】」
――しまった!!
白波が立ち始め、それはどんどん大きくなる。それに連動して船が揺れ、霧が渦を巻く。
「これって映像、なんですよね……。」
ナユユがそういうのも無理はない。湖全体を灰色の雲が覆っている。上空の1点、中心部分を除いて。
やがて霧は雨粒に代わり、その粒は俺たちのボートと上空の指に叩きつけるように降ってくる。
Turn 32
D2 team 1pt C4 team 10→0pt
【〝typhoon〟Lv.5(S1)】
R●●●○● R○○○○○
L●●●●● L×××××
『やはり、そう来ましたか。』
この32ターン目の〝イセノ〟表記はあくまで私の予測ですが、おそらく間違いないでしょう。
一誠が驚いた理由、それはC4チームのポイントがこのターンの初めに一気に10ptに増えたから。〝タイムカプセル〟で送ったポイントは7ptですからね。
では。
『一誠に問題です。今、何が起こったのか、わかりますか?』
「なんで目を閉じたらクイズの回答席が用意されているんだよ。」
『それは私の趣味嗜好です。それで回答は?』
「えっと、たぶん。」
『ボタンを押して回答してくださいね。』
「変なこだわりだな。まったく誰に似たんだ。」
一誠、あなたにですよ。
さて、一誠は回答席のボタンを押し、天面の〝イセノ〟表記を見て回答します。
「〝タイム〟コンボ、だな。」
『何となく察しは付きますが。自分にだけわかる言葉では視聴者には伝わりませんよ。それはなんでしょうか?』
「この空間に視聴者はいないだろ。」
まあ、そこはそういう体で。
「〝タイムスリップ〟の終了と〝タイムカプセル〟のポイントが同時に来た。」
『正解!』
私がこの勝負で懸念していた点は2つ。
1つは〝タイムカプセル〟で送ったポイントです。
私の把握する限り、7ptできるのは一部の動きを制限するか、相手の指のあげ方に固まる箇所が依存する技。対して確実に相手の指すべてを固める技は10ptは必要です。この3ptの差、普通は貯めにいくでしょう。そしてC4チームがそれをしたのは〝タイムスリップ〟の直前。つまり、〝タイムスリップ〟中ではなく〝タイムスリップ〟後に仕掛けるだろうと読み取れました。そして〝タイムスリップ〟終了で戻ってくる3ptに〝タイムカプセル〟で送った7ptが合算され10ptとなったわけです。
そして、もう一つの懸念点は技板の枚数です。
一誠たちは18枚、その中には高レベルの技も何枚かありました。対して相手は12枚。一見すると一誠たちの方が有利ですが、このゲームは、ターン数込みで入れられる技のレベルの合計が100まで。
「待てよ、それじゃああっちのチームの狙いは最初から……。」
と、どうやらすべては把握したタイミングで、一誠は退場。
さて、クイズ番組の体を取ったからには視聴者に最後まで語りましょうか。といってもC4チームが使った技がすべてを物語っています。
〝台風〟は10ptでできる技。その効果は宣言時に相手が下げている指を固め、下げている指の本数分,相手の持ちターンを削るというもの。
もう、わかりましたね。
私の導いた結論はずばり。
「C4チーム、ターン切れを狙ってたんですね。」
ナユユさん、大正解です。
高レベルの技を多く入れるほど、自分の持ちターンは減っていきます。もしC4チームが一誠たちの技板の枚数を把握していたのなら、そこを突いてくるのではないかと推測しました。とくにあの四苑さんであれば。
「やられたな。だが、俺たちの下げているのは9本、つまり9ターン削られた。だが、9ターンなんて痛くもかゆくも……。」
「弼殿、ちがうぞ。それは。」
弼さんの言葉を千草さんが否定し、追い打ちをかけるかのように四苑さんの声が轟きます。
「D2チームさん、どうですか。〝追い風〟を受けた〝台風〟の威力は。」
「なん、だと。」
つまり、削られたのは9の2倍で18ターン。
そして。
「皆さん、落ち着いて聞いてください。」
ナユユさんは現状を口にします。
「私たちに残されているのは、残り2ターンです。」
前書きでの100と関連して、「ターン数込みでレベルの合計は100まで」と何度か作中で書いていましたが、この伏線をようやく回収できたなという感じです。
次回10/26までに更新します。よろしくお願いします。




