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三十八歳、触れないまま恋をする〜重すぎる愛と、静かな恋の間で~  作者: ail38


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ナツメルート後日談EX:禁断の宴

ある晴れた秋の日。

膝に置いていたナツメのスマホが震えた。

画面にはアキラからの短いメッセージ。

ナツメはすぐにメッセージアプリを開く。

そうしてアキラへ返信しながら、自然と笑みを浮かべていた。


「マリア、月末は予定空いてるよな」


「病院はもう済ませたから、今月は大丈夫」


「そうか」


そう返事しながら、ナツメはスマホに何かを打ち込んでいる。

マリアは疑問に思いつつも、特に口にすることなく会話を終えた。

疑問の答えは、月末にもたらされた。


「じゃーん!今日はハロウィンパーティーです」


ナツメとマリアが暮らす部屋にやって来たアキラは、開口一番にそう言った。

マリアは首を傾げる。


「今日アキラが来るって、きいてない」


「それは私からナツメにお願いしたの。マリアには内緒にって」


「……私だけ、仲間外れ?」


「違う違う、サプライズ!びっくりさせたかったの」


アキラは慌てて言い訳を始める。

そんなアキラを横目に見て、マリアの口角がほんの少し上がる。


「冗談。喜ばせようと、してくれたんだよね」


「もー、マリアも言うようになったなあ」


アキラは玄関先で軽く笑う。

そうして来客用のスリッパを勝手に取り出して、「お邪魔しまーす」と部屋にあがる。

マリアはその背中を眺めながら、「どうぞ」と短く答えた。


「これ、ハロウィンパーティー用のお菓子ね」


アキラが両手に下げていた大量の荷物を取り出す。

本当に、お菓子しかなかった。

色とりどりのキャンディ、カラフルなマシュマロ、スナック菓子の山。

それらがどんどんリビングのテーブルの上に積まれていく。

マリアはその量に圧倒されていた。


「こんなにたくさんあったら、夕飯食べられないと思う」


「ああ、それはね、大丈夫」


言いかけて、リビングの扉が開く。

ナツメが顔をだした。


「アキラ、もう来てたか」


「お邪魔してます。そっちはどう?」


「おう、バッチリ」


「何の話?」


そこでマリアが疑問を挟む。


「マリア、今日はハロウィンパーティーだ」


「それは、さっきアキラからきいたけど」


「でね、ここからが本題。今日は夕飯もお菓子で済ませちゃいます!」


「え」


アキラの言葉にマリアが固まる。

構わずにアキラは続ける。


「一年でさ、一日くらいそういう日があってもいいと思うんだよね」


「実はアキラに提案されてさ。家事も大人らしい節度も横に置いて、楽しい夜にしないかって」


「そうだったんだ」


「マリアは嫌かな?」


少し気まずそうにアキラが伺う。

だがマリアは少し微笑んでみせた。


「そんな夜、初めて。楽しみ」


「良かった。私たちも初めてだから、すげえ楽しみにしてたんだ」


ナツメが楽しさを抑えきれない声音で言う。


「買い出ししてきた。甘いのもしょっぱいのもあるぞ」


「私が持って来たのもそうだよ。考えることは一緒だね」


「そうだな」


楽しそうに準備する二人を眺めて、マリアも楽しい気持ちが膨らんでいく。


「二人とも、飲み物はどうしようか」


「私たちはチューハイ買ってきた。マリアはジュース何がいい?」


「コーラと、ミルクティー」


「了解」


短く答えて、ナツメは冷蔵庫に向かう。

コーラとミルクティーのペットボトルを取り出す。


「これ紙コップと紙皿ね。今日は洗い物もナシ!」


「いいね。最高じゃん」


アキラはテキパキと準備を進める。

ナツメも飲み物をテーブルに並べていく。


「お菓子、もう開けちゃって大丈夫?」


「いいよ、どんどん開けちゃって〜」


「……それじゃあ」


マリアはキャンディの袋を手に取る。

テーブルの中央に置く。

マシュマロも開ける。

紙皿の上にカラフルな色を置いていく。


楽しい、そう思った。

まだ準備しているだけなのに、既にワクワクする気持ちが止まらない。


「あ、マリア。今のうちに言っておく」


「なに?」


「私らがチューハイで潰れたり宴会続けてても、マリアは自分のタイミングで寝ていいからな」


そこでマリアは、自分だけがお酒を飲めない理由に思い当たる。


「ああ、睡眠薬飲まないといけないからね」


「そう。医者から毎日のむように言われてるんだから、ちゃんと守ること」


「私たちに遠慮せず、眠くなったら寝ていいからね」


「わかった」


いつもは申し訳なく思う二人の言葉も、今日は素直に受け取れた。


「ふふ」


そんな自分がくすぐったくて、マリアはつい笑い声を漏らす。

それに気づいた二人が顔を見合せて、破顔する。


「今日は、いい夜になるな」


「本当にね」


笑い合う二人を眺めて、マリアも楽しそうに微笑む。


「二人とも、乾杯の準備はいい?」


「オッケー、準備完了!」


「では、思う存分堕落する夜に……」


『乾杯!』


三人の声が、夜を楽しげに揺らしていた。

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