ユリカルートif:エピローグ2
夜の歩道は、昼間よりも静かだった。
公園から少し離れた場所。
街灯の光が落ちて、三人の影だけが長く伸びている。
ユリカは、ずっと黙ったままだった。
ナツメが腕を組む。
「で」
短い一言。
それだけで、逃げ道が塞がれる。
「マリアのこと、どういうつもりで見てた?」
ユリカの喉が動く。
「……別に」
「別に、じゃねえだろ」
ナツメの声は冷たかった。
ユリカの肩が、ぴくりと震えた。
沈黙。
その沈黙を、ナツメが壊す。
「ちゃんと言えよ」
ユリカはゆっくりと息を吸った。
そして、諦めるように吐き出す。
「……恋愛感情だけじゃなかった」
「マリアのこと、性的な目でも見てた」
「は?」
ナツメの眉が動く。
ユリカは視線を落としたまま続ける。
「マリアのこと、ずっと」
アキラの表情がわずかに硬くなる。
「公園も、遠くから見てた」
「会わないって決めた後も、ずっと」
言葉が途切れ途切れになる。
自分でも気持ち悪いと思っているからだ。
ナツメが一歩近づく。
「それ、いつから?」
ユリカは答えない。
代わりに、別の言葉が出た。
「だって、好きだったんだよ……!」
その瞬間、ナツメの顔が歪む。
「……それ、言い訳にならねえからな」
ユリカは小さく頷く。
空気が重く沈み、しばらく誰も喋らなかった。
やがてナツメが、低い声で言う。
「いいか」
ユリカが顔を上げる。
ナツメの目は真っ直ぐだった。
怒りと、警戒と、守る意志が混ざっている。
「頭の中では何考えててもいい、そこまでは止めねえ」
ユリカの肩がわずかに緩む。
しかし次の瞬間、ナツメの声が鋭くなる。
「でもマリアの前には出てくるな」
「あいつ、そういうの向けられるとすぐ壊れるから」
空気がピリつく。
アキラも静かに続ける。
「マリアはね」
「見られてるって感じるだけで、呼吸が浅くなる時があるの」
ナツメがはっきり言う。
「無理矢理迫るなんて、許さないからな」
ユリカは小さく息を吐く。
「……うん」
それしか言えなかった。
声はかすれていた。
完全に納得できたわけではない。
ナツメは少しだけ視線を逸らす。
「まあ、分かればいい」
アキラも静かに頷く。
「ちゃんと線引きして、マリアの人生に必要以上に踏み込まないで」
冷たい夜風が通り過ぎた。
ひとつだけ、はっきりしている。
マリアは、自分の寂しさを埋めるための存在じゃない。
そんなこと、本当は知っていた。
ユリカは俯いたまま、その言葉を胸の奥に無理矢理落とし込むしかなかった。




