第80話 その先にあるもの――選択すら越えて
静寂。
―――
何もない。
―――
空間も。
時間も。
―――
“定義”すら。
―――
「……ここ」
リナが小さく呟く。
―――
「何も……ない」
―――
「いや」
俺――アルクは目を細める。
―――
「ある」
―――
“何か”が。
―――
感じる。
―――
だが。
―――
掴めない。
―――
「……分からない」
リナが言う。
―――
「見えない」
―――
その言葉。
―――
初めてだ。
―――
「……そうか」
―――
ここは。
―――
“見えない場所”。
―――
“選べない領域”。
―――
その時。
―――
「――到達確認」
―――
声。
―――
だが。
―――
どこからでもない。
―――
「……来たな」
―――
振り向く。
―――
そこに――
―――
“何もいない”。
―――
だが。
―――
“いる”。
―――
「――最終層」
―――
「――観測終了領域」
―――
その声。
―――
すべてを包む。
―――
「……お前が」
―――
「最上位か」
―――
「――違う」
―――
一拍。
―――
「――“上”はない」
―――
空気が変わる。
―――
「……は?」
―――
「――ここが終点」
―――
沈黙。
―――
「……じゃあお前は何だ」
―――
「――結果」
―――
その言葉。
―――
重い。
―――
「――すべての選択の終着」
―――
理解する。
―――
「……全部の答えか」
―――
「――そうだ」
―――
空気が止まる。
―――
「……つまんねぇな」
―――
思わず言う。
―――
「全部決まってるなら」
―――
「意味ねぇだろ」
―――
沈黙。
―――
「――意味はある」
―――
「――収束することで完成する」
―――
「……完成ね」
―――
少しだけ笑う。
―――
「それ、楽しいか?」
―――
一瞬。
―――
“揺れる”。
―――
「――不要な概念」
―――
「……だろうな」
―――
一歩、前へ。
―――
「でもな」
―――
「それが全部だ」
―――
その瞬間。
―――
リナが隣に立つ。
―――
「アルク」
―――
「うん」
―――
「分かる?」
―――
「分かる」
―――
ここは。
―――
“終わり”。
―――
だから。
―――
「変える」
―――
その瞬間。
―――
錬金術を展開。
―――
だが。
―――
「……効かない」
―――
当然だ。
―――
ここには。
―――
“干渉する対象がない”。
―――
「……どうする」
―――
リナが聞く。
―――
少しだけ考える。
―――
そして。
―――
「簡単だ」
―――
「ここに作る」
―――
「え?」
―――
「終わりじゃなくする」
―――
その瞬間。
―――
何かが動く。
―――
「――異常」
―――
「――未定義」
―――
「――発生」
―――
その言葉。
―――
初めての反応。
―――
「アルク」
リナが言う。
―――
「これ……いける」
―――
「だろ」
―――
その瞬間。
―――
“何もない場所”に。
―――
“何か”が生まれる。
―――
揺れ。
―――
可能性。
―――
「――矛盾」
―――
「――収束不可」
―――
「それでいい」
―――
「決めたからな」
―――
その瞬間。
―――
さらに広がる。
―――
“終わり”が崩れる。
―――
「……不可能」
―――
「――終点が……」
―――
「終わりじゃない」
―――
「ここも途中だ」
―――
その瞬間。
―――
すべてが揺れる。
―――
「――定義崩壊」
―――
「――再構築不能」
―――
その声。
―――
初めて。
―――
“消える”。
―――
静寂。
―――
だが。
―――
今度は違う。
―――
“何かがある”。
―――
風。
―――
光。
―――
そして。
―――
“続き”。
―――
「……できた」
リナが小さく言う。
―――
「ああ」
―――
「終わりが消えた」
―――
その瞬間。
―――
空が広がる。
―――
どこまでも。
―――
「……アルク」
―――
「ん」
―――
「これ」
―――
「終わり?」
―――
少しだけ考える。
―――
そして。
―――
「違う」
―――
首を振る。
―――
「始まりだ」
―――
その言葉に。
リナが笑う。
―――
「だね」
―――
そのまま。
―――
並んで立つ。
―――
何もない場所に。
―――
だが。
―――
すべてがある場所に。
―――
「……どうする?」
リナが聞く。
―――
少しだけ笑う。
―――
「全部やる」
―――
その答え。
―――
最後まで変わらない。
―――
リナが頷く。
―――
「一緒に」
―――
「当たり前だ」
―――
その瞬間。
―――
新しい“流れ”が生まれる。
―――
終わらない。
―――
選び続ける。
―――
その先へ。
⸻
――完――
――そして、物語は続く――




