第78話 無数の可能性――正しさの揺らぎ
静寂が続く。
―――
さっきまで確かに“そこにいた”気配が、完全に消えていた。
「……消えたね」
リナが小さく言う。
―――
「ああ」
短く答える。
―――
だが。
―――
「終わってない」
―――
空気が違う。
―――
“残っている”。
―――
「……アルク」
リナが少しだけ声を低くする。
―――
「来る」
―――
その瞬間。
―――
空間が裂ける。
―――
一つじゃない。
―――
二つ。
三つ。
―――
「……は?」
―――
そこに現れたのは――
―――
“俺”。
―――
「……マジかよ」
思わず笑う。
―――
「増えたな」
―――
三人。
―――
いや。
―――
「……もっといる」
リナが呟く。
―――
空の奥。
無数の気配。
―――
「……全部、分岐か」
―――
「うん」
―――
その中の一人が前に出る。
―――
さっきの“効率を選んだ俺”。
―――
「学習した」
―――
その一言。
―――
空気が変わる。
―――
「……だろうな」
―――
「次は勝つ」
―――
その言葉。
―――
確信がある。
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「……やってみろよ」
―――
少しだけ笑う。
―――
その瞬間。
―――
全員が動く。
―――
「……っ!」
―――
速い。
―――
しかも。
―――
「……連携してる?」
―――
完全に。
―――
「……個じゃないな」
―――
“集合体”。
―――
「アルク!」
―――
「分かってる!」
―――
回避。
だが。
―――
「……やべぇな」
―――
全方向。
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隙がない。
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「削る」
効率アルクが言う。
―――
「分岐を」
―――
その瞬間。
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空間が収束する。
―――
「……っ!」
―――
分岐が削られる。
―――
「アルク!」
リナの声。
―――
「耐えろ!」
―――
だが。
―――
「……きついな」
―――
分岐が減る。
―――
つまり。
―――
“選択肢が消える”。
―――
「……アルク」
リナが呟く。
―――
「これ……」
―――
「分かってる」
―――
このままだと。
―――
「詰む」
―――
その瞬間。
―――
一体が踏み込む。
―――
「……っ!」
―――
衝撃。
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吹き飛ばされる。
―――
「ぐっ……!」
―――
「遅い」
効率アルクが言う。
―――
「無駄が多い」
―――
「……そうかもな」
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立ち上がる。
―――
だが。
―――
「でもな」
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「それが“俺”だ」
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その瞬間。
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リナの手を取る。
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「リナ」
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「うん」
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「どう思う」
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一瞬の沈黙。
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そして。
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「……迷う」
―――
その一言。
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重い。
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「正直」
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「どっちも正しい」
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空気が変わる。
―――
「……だろうな」
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効率。
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最短。
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無駄なし。
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それも正しい。
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「でも」
リナが続ける。
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「私は」
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一歩、前に出る。
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「全部見たい」
―――
その言葉。
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揺れが広がる。
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「……っ!」
―――
分岐が戻る。
―――
いや。
―――
“増える”。
―――
「……なっ!?」
効率アルクが揺れる。
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「そんなはずは……!」
―――
「ある」
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「選んだからな」
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その瞬間。
―――
踏み込む。
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「行くぞ」
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「うん!」
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二人で。
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一気に距離を詰める。
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「創る」
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揺れを叩き込む。
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一体。
二体。
三体。
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「……っ!」
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崩れる。
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完全じゃない。
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だが。
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確実に削れる。
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「……まだだ」
効率アルクが言う。
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「次で終わる」
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その言葉。
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強がりじゃない。
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「……来るな」
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空の奥。
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さらに大きな気配。
―――
「……アルク」
リナが言う。
―――
「これ」
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「分かってる」
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まだ上がいる。
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そして。
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「“選択そのもの”を否定するやつだな」
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少しだけ笑う。
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「面白い」
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リナも笑う。
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「だね」
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その瞬間。
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無数の分岐が、さらに広がる。
―――
戦いは。
―――
まだ終わらない。




