第77話 もう一人の自分――選ばなかった未来
静寂。
―――
だが、次の瞬間には崩れる。
「行くぞ」
同時に動いた。
―――
速い。
―――
だが。
「……同じか」
互いに同じ速度で、同じ軌道を描く。
―――
“完全な鏡”。
―――
「チッ……!」
一瞬で距離を取る。
―――
「……やっぱそうなるか」
目の前の“もう一人の俺”が笑う。
―――
「当然だろ」
―――
「同じだからな」
―――
沈黙。
―――
「……いや」
首を振る。
―――
「同じじゃない」
―――
そいつが少しだけ笑う。
―――
「そうだな」
―――
「だから面白い」
―――
その瞬間。
再び衝突。
―――
錬金術。
―――
「創る」
―――
同時。
―――
空間が歪む。
―――
だが。
―――
“相殺”。
―――
「……っ!」
―――
同じ力。
同じ構造。
―――
だから。
―――
通らない。
―――
「……どうする?」
そいつが言う。
―――
「このままじゃ決まらないぞ」
―――
「分かってる」
―――
一歩引く。
―――
思考する。
―――
同じ力。
―――
なら。
―――
「違いは何だ」
―――
「簡単だろ」
そいつが言う。
―――
「“選択”だ」
―――
その言葉。
―――
核心。
―――
「……お前は」
俺は聞く。
―――
「何を選んだ」
―――
一瞬の沈黙。
―――
そして。
―――
「“効率”だ」
―――
空気が変わる。
―――
「無駄を削った」
「分岐を減らした」
「最短で上に行く道」
―――
その言葉。
―――
観測者と同じ。
―――
「……なるほどな」
―――
「だからお前は弱い」
―――
「は?」
―――
「無駄が多い」
「揺れすぎてる」
―――
一歩、踏み込む。
―――
「だから遅い」
―――
その瞬間。
―――
消える。
―――
速い。
―――
今まで以上。
―――
「……っ!」
―――
反応が遅れる。
―――
「遅い」
―――
衝撃。
―――
吹き飛ばされる。
―――
「……くそ」
―――
立ち上がる。
―――
「……確かに速いな」
―――
無駄がない。
―――
完全に“最適”。
―――
「でもな」
―――
少しだけ笑う。
―――
「それだけだろ」
―――
「何?」
―――
「選択が一つしかない」
―――
その瞬間。
―――
空気が揺れる。
―――
「……リナ!」
―――
「うん!」
―――
リナが動く。
―――
「分岐展開!」
―――
空間が揺れる。
―――
「……っ!」
相手が一瞬止まる。
―――
「ここ!」
―――
「分かってる!」
―――
踏み込む。
―――
「創る」
―――
揺れを叩き込む。
―――
「……チッ!」
―――
初めて。
―――
“崩れる”。
―――
「やっぱりな」
―――
「……なるほど」
相手が言う。
―――
「それがお前の強みか」
―――
「そうだ」
―――
「全部選ぶ」
―――
「だから強い」
―――
沈黙。
―――
そして。
―――
相手が笑う。
―――
「面白いな」
―――
「だろ」
―――
その瞬間。
―――
相手の空気が変わる。
―――
「じゃあ」
―――
「もっと削るか」
―――
「は?」
―――
その瞬間。
―――
“分岐が消える”。
―――
「……っ!?」
―――
リナが目を見開く。
―――
「アルク!」
―――
「分かってる!」
―――
だが。
―――
「……やべぇな」
―――
完全に。
―――
“潰しに来てる”。
―――
「どうする?」
相手が言う。
―――
「選べよ」
―――
「一つに」
―――
その言葉。
―――
挑発。
―――
だが。
―――
「……選ばない」
―――
「何?」
―――
「全部持つ」
―――
その瞬間。
―――
リナの手を取る。
―――
「いけるか」
―――
「いける」
即答。
―――
その瞬間。
―――
分岐が戻る。
―――
いや。
―――
“増える”。
―――
「……なっ!?」
―――
相手が揺れる。
―――
「そんなこと……!」
―――
「できる」
―――
「ここではな」
―――
その瞬間。
―――
踏み込む。
―――
「終わりだ」
―――
揺れを叩き込む。
―――
存在そのものに。
―――
「……っ!」
―――
崩れる。
―――
完全じゃない。
―――
だが。
―――
確実に削れる。
―――
「……なるほど」
相手が呟く。
―――
「そういうことか」
―――
少しだけ笑う。
―――
「負けたな」
―――
「……ああ」
―――
「今はな」
―――
その言葉。
―――
重い。
―――
「また来る」
―――
「いいぜ」
―――
「何度でもやる」
―――
その瞬間。
―――
相手が消える。
―――
静寂。
―――
「……終わった?」
リナが言う。
―――
「一回な」
―――
少しだけ笑う。
―――
「また来る」
―――
「だね」
―――
そのまま。
少しだけ近づく。
―――
「……アルク」
―――
「ん」
―――
「勝ったね」
―――
「ああ」
―――
「一緒だからな」
―――
その言葉に。
リナが笑う。
―――
新しい戦い。
―――
その“形”が、見え始めた。




