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第63話 遺された文明――壊れた世界の記憶

風が止んだ。


さっきまで荒れていた空気が、不自然なほど静まり返っている。


「……さっきのとは違う」


リナが小さく言う。


その視線は、遠くを見ていた。


―――


荒野の先。


かすかに見える“影”。


「……あれか」


俺――アルクは目を細める。


ただの岩じゃない。


直線。


構造。


「……人工物だな」


―――


近づく。


歩くたびに、地面の感触が変わる。


砂のようで、石のようで。


どこか“記憶が曖昧な物質”。


「……この世界、ちゃんと固まってない」


リナが言う。


「過去の状態が混ざってる」


―――


その言葉。


引っかかる。


「……過去?」


「うん」


一拍。


「“壊れる前”と“壊れた後”が重なってる」


―――


なるほどな。


だから不安定。


だから存在も曖昧。


―――


そして。


その中心にあるのが――


「……これか」


―――


遺跡。


崩れている。


だが、明らかに“造られたもの”。


石でも金属でもない。


だが、どちらの性質も持っている。


奇妙な構造体。


―――


「……でかいな」


思わず呟く。


―――


柱のようなものが、何本も立っている。


空に向かって。


だが途中で途切れている。


「……未完成?」


リナが言う。


―――


いや。


違う。


「壊されたんだ」


―――


その瞬間。


リナがゆっくりと目を閉じる。


「……ここ」


小さく呟く。


「すごく“濃い”」


―――


「何がだ」


「記憶」


―――


空気が変わる。


「……見えるのか」


「少しだけ」


一拍。


「触れれば……もっと」


―――


危険だな。


だが。


「やるか」


―――


リナが頷く。


ゆっくりと歩き出す。


遺跡の中心へ。


―――


「アルク」


「ん」


「繋いで」


―――


手を取る。


―――


その瞬間。


世界が歪む。


―――


視界が変わる。


―――


荒野が消える。


崩れた遺跡が――


元に戻る。


―――


「……これは」


―――


都市。


巨大な。


空に届くほどの構造物。


整然とした流れ。


人影。


―――


「……生きてる」


リナが呟く。


―――


“過去”だ。


―――


その中で。


何かが動く。


―――


空が歪む。


今の“あれ”と同じ。


―――


「……来た」


リナが言う。


―――


だが。


今の敵とは違う。


―――


「……多い」


無数の歪み。


空間の裂け目。


―――


そして。


そこから。


“観測者”が現れる。


―――


だが。


違う。


今までのより。


「……濃い」


―――


人々が逃げる。


だが。


間に合わない。


―――


「……やめろ」


思わず呟く。


―――


だが。


これは過去。


―――


止められない。


―――


「……っ」


リナが震える。


―――


観測者が。


都市に触れる。


―――


その瞬間。


―――


“消える”。


―――


建物。


人。


流れ。


―――


すべて。


―――


「……なっ……」


言葉が出ない。


―――


「……消した」


リナが呟く。


―――


「存在ごと」


―――


空気が凍る。


―――


「……これが」


―――


“この世界の末路”。


―――


「……観測者が」


俺は言う。


「壊したのか」


―――


リナが首を振る。


「違う」


―――


「……?」


―――


「壊したんじゃない」


一拍。


―――


「“消した”」


―――


その言葉。


意味が重い。


―――


「不要だから」


―――


沈黙。


―――


「……選別か」


―――


リナが頷く。


「可能性が“収束しすぎた”」


―――


「だから」


―――


「消された」


―――


理解する。


―――


この世界は。


“失敗例”。


―――


「……だから壊れてるのか」


「うん」


―――


“消しきれなかった残骸”。


―――


その瞬間。


視界が揺れる。


―――


現実に戻る。


―――


荒野。


遺跡。


静寂。


―――


リナが少しだけふらつく。


「……っ」


支える。


「大丈夫か」


「……うん」


息を整える。


―――


「見た?」


「ああ」


短く答える。


―――


少しだけ間。


―――


「……やばいな」


正直な感想。


―――


リナが小さく笑う。


「うん」


―――


「でも」


一拍。


―――


「面白い」


―――


その言葉に、思わず笑う。


―――


「同感だ」


―――


この世界は。


ただの異世界じゃない。


―――


“選ばれなかった世界”。


―――


その時。


遺跡の奥から、音。


―――


「……まだ何かいるな」


―――


気配。


さっきの獣とは違う。


―――


「……人?」


リナが呟く。


―――


影が現れる。


―――


人型。


だが。


どこか歪んでいる。


―――


「……生き残り?」


―――


その存在が、こちらを見る。


―――


「……お前たちは」


声。


かすれている。


だが。


確かに言葉。


―――


「……外から来たな」


―――


空気が変わる。


―――


第二部。


“探索”が本格的に動き出す。


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