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第62話 異世界適応――壊れた法則の中で

風が――重い。


エルドラとは明らかに違う空気が、肌にまとわりつく。


「……っ」


一歩踏み出しただけで、違和感がはっきりと分かる。


「……重力が違う?」


リナが小さく呟く。


だが、それだけじゃない。


「違うな」


俺――アルクはゆっくりと周囲を見渡す。


「“流れ”がバラバラだ」


―――


荒野。


だが、ただの荒野ではない。


地面はところどころ歪み、まるで溶けたあとに無理やり固め直したような不自然な質感をしている。


遠くの空は、色がまだらに変化していた。


青ではない。


赤でもない。


「……混ざってる」


リナが言う。


その目は、もう“観る側”のそれだ。


「複数の層が重なってるみたい」


―――


その瞬間。


遠くで“それ”が動いた。


低く、重い咆哮。


空気が震える。


「……来る」


リナの声。


―――


巨大な影が、地平線の向こうから現れる。


一歩。


踏み出すたびに地面が歪む。


「……でけぇな」


思わず口に出る。


だが、それ以上に――


「……おかしい」


リナが言う。


「存在が安定してない」


―――


確かに。


形が揺れている。


輪郭が、定まっていない。


まるで。


「……“確定してない存在”か」


俺は呟く。


―――


それが、こちらを認識する。


視線。


―――


次の瞬間。


消えた。


「――っ!?」


―――


背後。


気配。


反応が一瞬遅れる。


「アルク!」


リナの声。


―――


振り向く。


すぐそこにいた。


「……速いな」


反射的に、錬金術を展開する。


「構造――」


―――


違和感。


―――


「……っ!」


術式が、噛み合わない。


「効きが……弱い?」


―――


その一瞬のズレ。


敵の一撃が来る。


―――


「……っ!」


ギリギリで回避。


だが。


頬をかすめる。


「……初めてだな」


小さく呟く。


“当たるかもしれない”感覚。


―――


「アルク、無理しないで!」


リナが前に出る。


その瞬間。


流れが変わる。


「……ここ!」


一点を指す。


「この空間、安定してる!」


―――


なるほど。


完全に壊れてるわけじゃない。


“まだ使える場所”がある。


―――


「合わせる」


短く言う。


―――


踏み込む。


安定している領域へ。


その瞬間。


「……戻った」


錬金術が“繋がる”。


―――


「そこだ」


術式展開。


「分解」


―――


だが。


―――


「……っ!?」


完全には効かない。


敵の構造が“定まっていない”。


分解しても。


「再構成される……?」


―――


「アルク!」


リナが言う。


「こいつ、流れに乗ってる!」


―――


理解する。


この存在は――


「この世界の“歪みそのもの”か」


―――


つまり。


普通に壊しても意味がない。


―――


「なら」


思考を切り替える。


―――


「止める」


―――


構造じゃない。


流れに干渉する。


―――


「……いける?」


リナが聞く。


「やる」


即答。


―――


その瞬間。


リナが動く。


「接続補助」


光が広がる。


「ここ、繋いだ!」


―――


一点。


流れが固定される。


―――


「……今!」


―――


「捕まえた」


錬金術を流す。


―――


今度は違う。


“流れごと”固定。


―――


敵の動きが止まる。


完全に。


「……止まった!」


リナが声を上げる。


―――


「終わりだ」


一歩。


踏み込む。


―――


「分解」


―――


今度は通る。


完全に。


―――


崩れる。


形が。


存在が。


ゆっくりと消えていく。


―――


静寂。


―――


「……倒した?」


リナが小さく言う。


―――


「一体はな」


俺は答える。


一拍。


「だが」


―――


遠く。


同じ気配。


複数。


―――


「……マジか」


思わず笑う。


―――


「でも」


リナが言う。


その目。


楽しそうだ。


「やり方分かった」


―――


「ああ」


頷く。


―――


「ルールが違うなら」


―――


「合わせればいい」


―――


その言葉。


シンプルで。


本質的。


―――


少しだけ、風が強くなる。


この世界の“流れ”が、わずかに見えるようになる。


―――


「……面白いな」


小さく呟く。


―――


今までとは違う。


“完成された力”じゃない。


―――


「試されてる」


―――


その感覚。


―――


「いいじゃねぇか」


―――


その時。


リナが少しだけ近づく。


「……アルク」


「ん」


―――


「さっき、ちょっと焦った」


珍しい言葉。


―――


「そうか」


「うん」


一拍。


「でも」


少しだけ笑う。


―――


「楽しい」


―――


その言葉に、少しだけ笑う。


―――


「同じだな」


―――


そのまま。


軽く手を重ねる。


―――


「いける」


リナが言う。


「ここでも」


―――


「ああ」


―――


「どこでもな」


―――


その瞬間。


遠くで、また咆哮が響く。


―――


新しい世界。


新しい敵。


新しいルール。


―――


だが。


―――


「全部、越える」


―――


第二の物語は。


まだ始まったばかりだ。


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