第61話 新しい世界の入口
朝。
エルドラは、いつも通り動いていた。
「……相変わらずだな」
城壁の上。
俺――アルクは、街を見下ろす。
人が動き。
流れが回る。
完璧に近い。
―――
「完成してるよね」
隣で、リナが言う。
少しだけ風に髪を揺らしながら。
「そうだな」
短く答える。
―――
一拍。
―――
「でも」
リナが続ける。
「まだ、外がある」
―――
その言葉。
自然すぎるほど自然だった。
―――
「……ああ」
俺は頷く。
「あるな」
―――
観測者を倒したあの日。
世界は“閉じた構造”じゃなくなった。
―――
つまり。
「どこにでも行ける」
―――
「行く?」
リナが聞く。
少しだけ楽しそうに。
―――
「行くか」
迷いはない。
―――
その日の昼。
中枢。
「……マジで行くのか?」
ロイドが呆れた顔をする。
「せっかく安定したのによ」
「だからだ」
俺は言う。
「今しかない」
―――
セリナが笑う。
「いいじゃねぇか」
「面白そうだ」
―――
ミレイアも肩をすくめる。
「止めても無駄ね」
一拍。
「どうせ行くでしょ」
「行く」
即答。
―――
エリシアが静かに言う。
「なら」
一拍。
「戻る場所は守る」
―――
その言葉。
重い。
―――
「頼む」
俺は言う。
―――
夕方。
エルドラ上空。
かつての“穴”。
今は安定している。
―――
「……行ける」
リナが言う。
目を閉じて。
流れを読む。
―――
「今回は」
一拍。
「自分たちで開く」
―――
手を伸ばす。
光が広がる。
空間が裂ける。
―――
「……すげぇな」
ロイドが呟く。
「完全にゲートだな」
―――
その先。
見える。
―――
“別の世界”。
―――
色が違う。
空気が違う。
―――
「……行こう」
リナが手を差し出す。
少しだけ緊張している。
でも。
楽しそうだ。
―――
その手を取る。
「行くぞ」
―――
一歩。
踏み込む。
―――
世界が変わる。
―――
風。
強い。
重い。
―――
「……ここ」
リナが呟く。
周囲を見渡す。
―――
荒野。
だが。
ただの荒野じゃない。
―――
「……壊れてるな」
俺は言う。
―――
地面が歪んでいる。
空が不安定。
流れが乱れている。
―――
「……未完成?」
リナが言う。
―――
その時。
遠くで。
“何か”が動く。
―――
「……あれ」
影。
巨大。
―――
「来るな」
俺は言う。
―――
その瞬間。
それが吠える。
―――
空間が震える。
―――
「……いきなりかよ」
ロイドがいれば笑ってた。
―――
「アルク」
リナが言う。
少しだけ楽しそうに。
―――
「やる?」
―――
少しだけ笑う。
―――
「軽くな」
―――
一歩前へ。
―――
錬金術。
展開。
―――
だが。
―――
「……ん?」
違和感。
―――
「……効きが弱い?」
―――
リナが目を見開く。
「……ルールが違う!」
―――
その瞬間。
理解する。
―――
ここは。
「“俺たちの世界じゃない”」
―――
そして。
―――
「だから面白い」
―――
その瞬間。
アルクの力が――
“さらに変わる”。
―――
第二の物語が。
動き出す。




