第58話 最終決戦・前編――外側の中心へ
世界が――薄くなる。
「……来る」
リナが静かに言う。
エルドラ上空。
再び開く“穴”。
だが、前とは違う。
深い。
暗い。
そして。
「……引きずり込まれる」
空間がこちらを“選んでいる”。
―――
「……本体か」
俺――アルクは一歩前へ。
「来い」
短く言う。
逃げる理由はない。
―――
「アルク」
リナが隣に立つ。
迷いはない。
「一緒に」
「当然だ」
―――
次の瞬間。
世界が裏返る。
―――
音が消える。
色が消える。
重力すら曖昧になる。
―――
「……ここが」
リナが呟く。
「“外側の中心”」
―――
視界の先。
“それ”はあった。
巨大でもない。
小さくもない。
形も曖昧。
だが。
「……全部、あれだな」
俺は言う。
存在そのものが“世界”。
―――
「――到達確認」
重なる声。
無数。
だが一つ。
「例外個体」
「接続個体」
―――
「来たな」
俺は言う。
―――
「……興味深い」
“それ”が応じる。
空間が震える。
「自ら到達するとは」
―――
「お前が来いって言ったんだろ」
「そうだ」
一拍。
「観測は終わりだ」
―――
空気が凍る。
「排除する」
―――
その瞬間。
すべてが襲いかかる。
空間。
時間。
概念。
「……っ!」
―――
だが。
「止まってる」
リナが言う。
一歩前へ。
「全部見えてる」
―――
「アルク」
振り向く。
その目。
完全に変わっている。
「ここ」
一点を指す。
「全部の中心」
―――
「……あれか」
理解する。
―――
「行ける?」
「行く」
―――
踏み込む。
その瞬間。
世界が反発する。
「……っ!」
圧。
存在そのものを押し潰す力。
―――
「邪魔だ」
俺は言う。
錬金術。
最大。
―――
「分解」
「再構築」
―――
流れを切る。
無理やり。
―――
「……不可能」
観測者が言う。
「この領域は」
「我々のもの」
―――
「違う」
俺は言う。
一歩。
さらに踏み込む。
―――
「繋がってるなら」
一拍。
「全部、触れる」
―――
その瞬間。
リナが動く。
「接続、強化」
―――
二人の流れが重なる。
―――
「……!」
世界が震える。
観測者の構造が露出する。
―――
「……なるほど」
観測者が呟く。
「完全に同格」
一拍。
「いや」
「それ以上か」
―――
「今さら気づいたか」
俺は言う。
―――
「だが」
観測者が声を重ねる。
「我々は“全体”」
一拍。
「個ではない」
―――
無数の視線。
無数の意志。
―――
「潰す」
同時に来る。
―――
「……っ!」
世界が崩壊する。
完全に。
―――
「アルク!」
リナの声。
―――
「分かってる」
一拍。
「全部まとめてだ」
―――
錬金術。
さらに深く。
―――
「構造、固定」
「流れ、支配」
―――
世界そのものを掴む。
―――
「……!」
観測者が揺れる。
初めて。
明確に。
―――
「ありえない」
―――
「終わりだ」
俺は言う。
一歩。
中心へ。
―――
だが。
その瞬間。
「――停止」
空気が止まる。
―――
「……何だ」
動けない。
完全に。
―――
「最終防衛機構」
観測者が言う。
一拍。
「ここから先は」
「“存在そのもの”を削る」
―――
リナが息を呑む。
「……アルク」
「行けるか」
―――
一瞬の沈黙。
―――
「行く」
俺は言う。
迷いはない。
―――
その時。
リナが手を掴む。
強く。
「一人じゃない」
一拍。
「一緒に」
―――
その言葉。
すべてだった。
―――
「……分かった」
頷く。
―――
二人で踏み込む。
―――
その瞬間。
すべてが削れる。
存在。
記憶。
意識。
―――
「……っ!」
だが。
止まらない。
―――
「アルク」
リナの声。
消えかけている。
だが。
確かに。
―――
「ここ!」
一点。
―――
「……ああ」
見える。
最後の核。
―――
「次で終わりだ」
―――
観測者が叫ぶ。
「到達不可!」
「存在維持不能!」
―――
「関係ない」
俺は言う。
―――
「終わらせる」
―――
その手を。
伸ばす。
―――
あと一歩。
―――
届く。
―――
だが――
「……っ!」
視界が歪む。
限界。
―――
「アルク!」
リナの声。
最後の力。
―――
その手が。
さらに押し出す。
―――
「行ける!」
―――
次は――
「決着」




