第50話 奪還開始――選ばせる側の反撃
「場所は特定できた」
夜。
都市中枢。
リナの声が静かに響く。
「……確定か?」
俺――アルクが問う。
「うん」
端末に映し出されるのは――
南方同盟の拠点。
エルドラから離れた山岳地帯。
「ここに……ユークの家族が?」
「高確率でいる」
一拍。
「動くなら今」
―――
空気が張り詰める。
「正面から行くか?」
ロイドが言う。
「無理だな」
セリナが即答。
「罠だらけだ」
ミレイアが笑う。
「正面から行くのは、相手の思うツボ」
―――
「だから」
俺は言う。
「正面から行かない」
ロイドがニヤリとする。
「来たな」
―――
作戦はシンプルだ。
だが。
精密だ。
「中から崩す」
リナが説明する。
「内部構造、把握済み」
「監視網、再構築可能」
一拍。
「“見えない形で侵入する”」
―――
「……お前、ほんと便利だな」
ロイドが笑う。
リナは少しだけ頬を膨らませる。
「便利って言うな」
「強いって言え」
セリナが横から言う。
「そうそう」
ミレイアも笑う。
リナは少しだけ照れて。
でも。
すぐに真剣な顔に戻る。
―――
「時間は?」
「夜明け前」
「理由は」
「交代の隙ができる」
完璧だ。
―――
「よし」
俺は立ち上がる。
「行くぞ」
その一言で。
空気が変わる。
完全に“攻め”に入る。
―――
夜。
山岳地帯。
冷たい風。
静かな闇。
その中で――
「……見えた」
ロイドが低く言う。
遠くに、拠点。
灯りが揺れている。
「思ったよりデカいな」
セリナが呟く。
「だからこそ」
ミレイアが笑う。
「壊しがいがある」
―――
「リナ」
「準備できてる」
一拍。
「いける」
その声に迷いはない。
―――
「開始だ」
俺の合図。
その瞬間。
世界が変わる。
―――
音が消える。
光が歪む。
リナの術式が展開される。
「……すげぇな」
ロイドが小さく言う。
完全に“見えない”。
「侵入」
俺たちは動く。
静かに。
確実に。
―――
内部。
警備はある。
だが。
「……ズレてるな」
セリナが呟く。
「誘導されてる」
「リナ」
「やってる」
その声。
集中している。
「全部、見えてる」
―――
奥へ進む。
一つの部屋。
「……ここだ」
扉の前。
中に気配。
複数。
―――
「開けるぞ」
ロイドが構える。
「待て」
俺が止める。
一拍。
「静かにやる」
―――
錬金術式。
音を消す。
鍵を分解。
ゆっくり。
扉が開く。
―――
中。
人影。
「……!」
怯えた声。
ユークの家族だ。
「安心しろ」
俺は静かに言う。
「迎えに来た」
沈黙。
そして。
「……本当に?」
震える声。
「本当だ」
―――
その瞬間。
外で音。
「……バレたか」
セリナが笑う。
「遅ぇよ」
―――
警備が動く。
だが。
「ここからは強引だ」
ロイドが笑う。
「任せろ」
―――
戦闘。
短い。
だが。
圧倒的。
「遅い」
「甘い」
次々と倒れる。
―――
「脱出ルート確保」
リナの声。
「こっち」
迷いなく誘導。
「行くぞ!」
―――
外へ。
夜明け前。
薄い光。
「……間に合ったな」
ロイドが笑う。
「ギリギリ」
セリナも笑う。
―――
振り返る。
拠点。
まだ動いている。
だが。
「今回はここまでだ」
俺は言う。
一拍。
「目的は達成した」
―――
帰還。
エルドラ。
ユークが駆け寄る。
「……!」
家族の姿を見る。
そのまま。
崩れる。
「……ありがとう……!」
声が震える。
「本当に……!」
―――
「約束しただろ」
俺は短く言う。
ユークは何度も頷く。
―――
その様子を。
リナが静かに見ている。
そして。
少しだけ笑う。
―――
夜。
温泉。
今日は――少しだけ安心した空気。
リナが隣に座る。
自然に寄ってくる。
「……終わったね」
「まだ途中だ」
「うん」
一拍。
でも。
「一歩進んだ」
「そうだな」
―――
そのまま。
軽く肩に寄りかかる。
「……アルク」
「ん」
「かっこよかった」
「そうか?」
「うん」
少しだけ顔を上げる。
「ちゃんと助けた」
一拍。
「それが好き」
―――
少しだけ手を重ねる。
そのまま。
静かに触れる。
短く。
でも。
確かに。
「……これで満タン」
小さく笑う。
「便利だな」
「でしょ」
―――
その頃。
南方同盟の特使は、静かに言う。
「……やられたか」
一拍。
だが。
笑う。
「いい」
「本気でいこう」
その目は。
完全に戦っていた。
―――
エルドラは。
“守る側”から
“攻める側”へ変わった。
次は――
「全面戦」




