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第47話 見えない敵と、選ばせる側の条件

国際会議の熱が冷めきらないまま――


エルドラは、次の局面に入っていた。


「……あの男、ただ者じゃねぇ」


ロイドが腕を組む。


「南方同盟の特使、か」


セリナが笑う。


「嘘くせぇ肩書きだな」


「同感」


俺――アルクも短く答える。


「目的は?」


「探りと……」


ミレイアが言葉を引き取る。


「“侵食”よ」


沈黙。


その言葉は、軽くない。


―――


「どういう意味だ」


ロイドが聞く。


ミレイアは少しだけ笑う。


「簡単よ」


一拍。


「中に入り込んで、支配する」


「……直接じゃなくて?」


「ええ」


「気づいたら終わってるタイプ」


空気が重くなる。


「面倒だな」


セリナが呟く。


「一番な」


―――


その時。


「……アルク」


声がする。


振り向くと。


アイゼル。


少しだけ表情が違う。


「話がある」


「いいぞ」


―――


場所を変える。


中庭。


人の気配が少ない場所。


「……単刀直入に言う」


アイゼルが口を開く。


「南方同盟は危険」


「知ってる」


即答。


一拍。


「それ以上だ」


「どういう意味だ」


アイゼルは少しだけ迷い――


そして言う。


「国家じゃない」


沈黙。


「は?」


ロイドがいればそう言っただろう。


「“集合体”」


一拍。


「組織でもない」


「……思想体に近い」


ミレイアの言葉が重なる。


アイゼルが頷く。


「そう」


「だから」


「交渉が成立しない」


空気が一気に変わる。


―――


「つまり」


俺は整理する。


「ルールがない」


「ええ」


アイゼルは静かに言う。


「だから、危険」


一拍。


「でも」


その目がこちらを見る。


「あなたは止める気でしょ」


「当然だ」


即答。


その瞬間。


アイゼルがわずかに笑う。


「……やっぱり」


一瞬だけ。


感情が混じる。


―――


その様子を。


少し離れた場所から、リナが見ていた。


「……また近い」


小さな声。


だが。


今度は違う。


前みたいに揺れていない。


ゆっくり歩く。


そして。


アルクの隣に来る。


自然に。


「……話終わった?」


「ああ」


リナはアイゼルを見る。


そして。


静かに言う。


「ありがとう」


「情報」


意外な言葉。


アイゼルが少しだけ目を細める。


「……礼を言われるとは思わなかった」


「必要なことだから」


リナは迷わない。


「アルクのために」


その言葉。


真っ直ぐ。


強い。


―――


アイゼルは数秒黙り。


そして。


「……なるほど」


小さく呟く。


一拍。


「敵にしたくないタイプね」


それは、評価だった。


―――


夕方。


ミレイアが呼び出す。


「来たわよ」


「何が」


「“反応”」


紙を投げる。


受け取る。


内容を見る。


「……動いたな」


南方同盟。


すでにエルドラ周辺に“拠点”を作り始めている。


「早すぎる」


ロイドが呟く。


「侵食、開始ね」


ミレイアが笑う。


だが。


その目は真剣だ。


「どうする」


全員がこちらを見る。


―――


少しだけ考える。


そして。


「潰す」


短く言う。


「直接じゃない」


一拍。


「“選ばせる”」


ロイドが笑う。


「来たな」


セリナも笑う。


「面白い」


―――


夜。


温泉。


今日は――落ち着いている。


リナが隣に座る。


自然に寄ってくる。


もう、当たり前。


「……アルク」


「ん」


「さっき」


「うん」


「アイゼルと話してた」


「してたな」


一拍。


でも。


今回は違う。


リナは少しだけ笑う。


「もう平気」


「そうか」


「うん」


そのまま。


軽く肩に寄りかかる。


「分かったから」


「何が」


「ちゃんと、こっち見てる」


一拍。


「それでいい」


その言葉。


重くて、優しい。


―――


少しだけ手を重ねる。


「見てるよ」


「うん」


そのまま。


静かに。


触れる。


今日は穏やかに。


短く。


でも確かに。


「……安心する」


小さな声。


「それでいい」


少しだけ笑う。


―――


その頃。


南方同盟の特使は、静かに呟いていた。


「……始めようか」


一拍。


「ゆっくりと」


その目は。


完全に“侵食者”だった。


―――


エルドラは。


“見えない敵”と向き合う。


次は――


「侵食と選択」


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