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第45話 勝利のあとに広がるもの

帝国艦が去った空は――


不気味なほど静かだった。


「……ほんとに引いたな」


ロイドが城壁の上で呟く。


「だな」


俺――アルクも短く答える。


だが。


「終わりじゃない」


その言葉に、全員が頷いた。


―――


エルドラは、生きている。


被害は出た。


外壁の一部損壊。

防壁の過負荷。

資源消費の急増。


だが。


「……立て直し、いけるな」


エリシアが資料を見ながら言う。


「回ってる」


リナが小さく笑う。


少し疲れている。


でも。


その目は充実していた。


「……やりきった顔だな」


俺が言うと。


リナは少しだけ照れた。


「だって」


一拍。


「一緒に戦えたし」


その言葉。


軽くはない。


―――


その日の昼。


エルドラ中枢。


「来てるわよ」


ミレイアが紙を投げる。


ロイドが受け取る。


「……何だこれ」


「各国からの通達」


一拍。


「全部“交渉希望”」


セリナが笑う。


「一気に来たな」


当然だ。


帝国と正面からやり合い。


そして。


勝った。


「無視できる存在じゃない」


エリシアが言う。


「むしろ」


一拍。


「最優先対象」


―――


「……めんどくせぇな」


ロイドが頭を抱える。


「増えるぞ」


「分かってる」


だが。


「悪くない」


俺は小さく言う。


全員がこちらを見る。


「選べる」


一拍。


「全部」


その言葉に。


ミレイアが笑う。


「完全に“上側”ね」


―――


その時。


「アルク」


声がする。


振り向く。


アイゼルだ。


いつも通り。


だが。


少しだけ違う。


「話がある」


「何だ」


一歩近づく。


距離が近い。


でも。


前ほどの圧はない。


「……負けたわ」


小さく言う。


意外な言葉。


「何に」


「全部」


一拍。


「力も」


「選択も」


そして。


「人も」


その視線。


一瞬だけリナを見る。


―――


リナは静かに立っている。


だが。


逃げない。


「……そうか」


俺は短く答える。


アイゼルは小さく笑う。


「でも」


一拍。


「まだ終わらない」


その目は戻っている。


冷静さを。


「次は違う形で来る」


「分かってる」


「ならいい」


そのまま。


一歩下がる。


「今回は」


一拍。


「認める」


その言葉は、重かった。


―――


夕方。


ミレイアが隣に来る。


「完全に変わったわね」


「何が」


「立場」


一拍。


「もう“辺境の街”じゃない」


「だな」


「世界の一角」


その言葉。


実感は、まだ薄い。


だが。


間違いではない。


―――


夜。


温泉。


今日は――穏やかだ。


戦いが終わった後の、静かな時間。


リナが隣に座る。


自然に寄ってくる。


もう、それが当たり前だ。


「……アルク」


「ん」


「これからどうなるの?」


少しだけ不安。


でも。


期待も混じっている。


「忙しくなる」


正直に言う。


「だよね」


小さく笑う。


そのまま。


少しだけ強く寄ってくる。


「でも」


一拍。


「一緒ならいい」


その言葉。


静かに重い。


―――


少しだけ、手を重ねる。


「一緒だ」


短く言う。


そのまま。


顔が近づく。


今日は。


穏やかに。


ゆっくり。


触れる。


戦いの時とは違う。


柔らかい時間。


「……アルク」


「ん」


「これ、好き」


「知ってる」


少しだけ笑う。


そのまま。


もう一度。


長く。


静かに。


―――


その頃。


帝国。


「……撤退を確認」


部下が報告する。


ヴェルシアは静かに頷く。


「いい」


一拍。


「面白くなってきた」


その目は。


まだ戦っている。


―――


エルドラは。


勝った。


だが。


それは終わりじゃない。


始まりだ。


次は――


「世界との本当の戦い」


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