第43話 限界の先で、守るもの
爆煙が、空を覆っていた。
帝国艦への反撃は確かに通った。
だが――
「……まだ落ちねぇか」
セリナが舌打ちする。
上空。
損傷はある。
だが、沈んではいない。
「装甲が異常だ」
ロイドが言う。
「普通じゃない」
「普通じゃないのは分かってる」
俺――アルクは短く答える。
「問題は、まだ来るってことだ」
―――
帝国艦。
内部。
「……損傷率、二十三%」
部下が報告する。
ヴェルシアは、静かに頷く。
「許容範囲」
一拍。
「では、次」
その声に、迷いはない。
「“第三段階”を解放する」
空気が変わる。
「……本気ですか」
部下の声。
「当然だ」
ヴェルシアは微かに笑う。
「ここまで来て、遊ぶ気はない」
―――
空。
再び歪む。
だが、今度は違う。
「……何だ、あれ」
ロイドの声が震える。
空間が“裂ける”。
そこから現れたのは――
黒い巨影。
だが。
先ほどの巨兵とは違う。
形が歪んでいる。
生きているような動き。
「……融合体?」
エリシアが呟く。
「魔導と生体の……」
セリナが笑う。
「最悪じゃねぇか」
―――
“それ”が、動く。
一瞬で。
速い。
異常な速度。
「……っ!」
視認できない。
次の瞬間。
都市外壁に衝突。
――破壊。
「防壁、削られた!?」
ロイドが叫ぶ。
「嘘だろ……!」
一撃で。
削られた。
「……耐えられないぞ」
エリシアの声。
冷静だが、緊張が混じる。
―――
「アルク!」
リナの声が通信越しに響く。
「ライン、持たない!」
「どれくらいだ」
「あと数分で崩れる!」
短い。
致命的だ。
―――
一瞬で理解する。
このままじゃ、終わる。
「……なら」
一歩前へ。
「潰す」
―――
錬金術式展開。
だが。
今度は違う。
“領域”をさらに広げる。
強引に。
無理やり。
「……おい、それ」
ロイドが気づく。
「ヤバいぞ」
セリナも笑う。
「壊れるな」
分かってる。
でも。
止めない。
―――
「領域、拡張」
空間が歪む。
広がる。
だが。
「……っ!」
負荷が来る。
重い。
視界が揺れる。
血の味。
「アルク!」
リナの声。
「無理しないで!」
「無理じゃない」
即答。
「必要だ」
―――
融合体が再び突っ込んでくる。
速い。
だが。
今は見える。
「……捕まえた」
空間固定。
だが――
「……!?」
止まらない。
「効いてねぇ!」
ロイドが叫ぶ。
「干渉耐性……!」
最悪だ。
―――
「なら」
一瞬で思考を切り替える。
「壊す」
術式を変える。
構造ではなく。
“概念”に干渉する。
「……それ、やばい領域だぞ」
ミレイアが呟く。
「知ってる」
―――
一歩踏み込む。
距離を詰める。
融合体が吠える。
迫る。
「……来い」
その瞬間。
衝突。
衝撃。
だが。
止める。
素手で。
「……止めた!?」
ロイドが叫ぶ。
あり得ない。
だが――
止めている。
―――
「構造、否定」
一言。
融合体が歪む。
崩れる。
だが。
同時に。
「……っ!」
反動。
強い。
視界が白くなる。
「アルク!!」
リナの声。
遠い。
―――
その瞬間。
都市中枢。
リナが歯を食いしばる。
「……止めない」
ラインが揺れる。
崩れかける。
だが。
「繋ぐ」
必死に。
全部を。
「アルクが戦ってるなら」
一拍。
「私も、落ちない」
その瞬間。
流れが戻る。
エネルギーが再び巡る。
「……戻った!?」
ロイドが叫ぶ。
「持ち直した!」
―――
その力が。
アルクへ流れる。
「……助かった」
小さく呟く。
再び、立つ。
―――
融合体は、まだ動いている。
だが。
もう見える。
「終わりだ」
術式、再展開。
今度は。
完全に。
「消えろ」
一言。
融合体が――消滅する。
完全に。
―――
静寂。
誰も動けない。
「……マジかよ」
ロイドが呟く。
セリナが笑う。
「やっぱバケモンだな」
―――
だが。
終わらない。
帝国艦は、まだある。
そして。
アルクは――
「……っ」
膝をつく。
「アルク!!」
リナの声。
「大丈夫だ」
だが。
明らかに限界が近い。
―――
帝国艦。
ヴェルシアが静かに言う。
「……ここまでか」
一拍。
だが。
その目はまだ死んでいない。
「いい」
小さく笑う。
「最後に、もう一つ見せてあげる」
―――
エルドラは。
まだ終わらない。
次は――
「決着」




