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第36話 都市から国家へ、そして外の世界

クロードの失脚から、一週間。


エルドラは――


静かに、だが確実に“変わっていた”。


「もう“都市”って呼び方、違和感あるな」


ロイドが書類をめくりながら言う。


「だな」


俺――アルクも同意する。


市場は拡張され、

物流は周辺三都市を飲み込み、

軍との協力体制も安定している。


そして何より。


「正式通達だ」


エリシアが紙を差し出す。


「王国より」


受け取る。


そこに書かれていたのは――


――エルドラ準国家都市の格上げ

――自治権の大幅拡張

――対外交渉権の一部認可


リナが目を丸くする。


「……これって」


「ほぼ国家ね」


エリシアが静かに言う。


セリナが笑う。


「やりすぎだろ」


「今さらだ」


俺は小さく息を吐いた。


―――


その日の昼。


エルドラ西門。


「……来たか」


見張りの声。


遠くに見える旗。


見慣れない紋章。


銀と黒。


整った隊列。


そして――


「……他国だな」


ミレイアが静かに言う。


「早いわね」


門が開く。


使節団が入ってくる。


中央に立つのは――


一人の女。


長い黒髪。


冷たい目。


無駄のない動き。


「初めまして」


低く、落ち着いた声。


「北方連邦、外交官」


一拍。


「アイゼル・ルヴァーレン」


空気が変わる。


完全に“外の世界”だ。


―――


応接室。


全員が揃う。


俺、ロイド、セリナ、エリシア、リナ、ミレイア。


そして。


アイゼル。


「単刀直入に言う」


彼女は無駄なく言った。


「エルドラと同盟を結びたい」


沈黙。


いきなり核心だ。


「理由は?」


俺が聞く。


アイゼルは一瞬も迷わない。


「価値がある」


一拍。


「軍事、経済、技術」


「すべてが突出している」


完全に見抜かれている。


「ただし」


彼女は続ける。


「条件がある」


空気が張り詰める。


「技術共有」


「最低限でいい」


「だがゼロでは困る」


ロイドが低く言う。


「重いな」


セリナが笑う。


「当然だろ」


ミレイアは静かに観察している。


リナは少しだけ俺を見る。


その視線。


任せる、という意味。


―――


少しだけ考える。


そして。


「断る」


即答。


沈黙。


アイゼルの目がわずかに細くなる。


「理由は?」


「技術は渡さない」


一拍。


「でも」


全員の視線を受けながら言う。


「代わりに“結果”は渡す」


「?」


「完成品ならいい」


「運用も協力する」


一拍。


「中身は渡さない」


沈黙。


ロイドが小さく笑う。


「……えげつないな」


セリナが笑う。


「最高だ」


アイゼルは――


しばらく黙っていた。


そして。


「……合理的だ」


小さく頷く。


「受け入れる」


あっさりだった。


だが。


その目は変わっている。


「面白い」


小さく呟く。


―――


その日の夕方。


ミレイアが俺の隣に立つ。


「完全に“外”に出たわね」


「だな」


「もう戻れないわよ?」


「戻る気はない」


一拍。


ミレイアが少しだけ笑う。


「いい顔」


そして。


「気をつけなさい」


珍しく真面目な声。


「ここからは“国同士”のゲームよ」


重い言葉だ。


だが。


嫌いじゃない。


―――


夜。


温泉。


今日は少しだけ静かだ。


でも。


空気は柔らかい。


リナが隣に座る。


そして、自然に寄ってくる。


完全に恋人の距離。


「……アルク」


「ん?」


「遠くなった」


一瞬、止まる。


「そうか?」


「うん」


でも。


そのまま、強く寄ってくる。


抱きつくように。


柔らかい。


温もり。


「でも」


顔を上げる。


距離が近い。


かなり近い。


「ちゃんといる」


小さく笑う。


「いるよ」


そのまま。


自然に。


触れる。


もう迷いはない。


軽く。


でも確かに。


リナの手が強くなる。


「……アルク」


「ん」


「これ」


一拍。


「好き」


「知ってる」


少しだけ笑う。


そのまま、少しだけ長く。


静かな時間。


―――


エルドラは。


ついに“国家”へ踏み出した。


次は――


「世界」


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