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第35話 最後の一手と、折れない理由

巨兵の残骸は、朝までに片付けられた。


だが――


「終わってないな」


俺――アルクは瓦礫の跡地を見ながら言った。


ロイドが頷く。


「むしろここからだ」


セリナが笑う。


「だろうな」


リナは少しだけ不安そうだ。


「また来る……?」


「来る」


即答。


「しかも、もっと陰湿なのが」


―――


その日の昼。


エルドラ中央区。


「……静かすぎる」


ミレイアが低く呟く。


「この感じ、嫌いじゃないでしょ?」


セリナが言う。


「嫌いよ」


一拍。


「でも慣れてる」


その時だった。


風が変わる。


「――伏せて!」


ミレイアの声。


同時に。


空気が裂ける。


黒い影。


速い。


異常な速度。


「ちっ!」


セリナが反応する。


だが間に合わない。


影は一直線に――


「アルク!!」


リナの叫び。


その瞬間。


俺は動いていた。


――錬金術式、即時展開。


空間固定。


衝撃分散。


だが――


「……!」


刃が、止まらない。


「魔術耐性か……!」


ギリギリで軌道を逸らす。


頬が切れる。


血が流れる。


「アルク!!」


リナが駆け寄る。


影はすでに離脱。


消えた。


完全に。


「……暗殺者」


ミレイアが低く言う。


「しかも一流ね」


セリナが歯を鳴らす。


「面倒なもん出してきたな」


ロイドが顔を歪める。


「クロードか」


「確定ね」


ミレイアが即答する。


―――


その夜。


会議室。


空気は重い。


「政治じゃ止まらないと判断した」


俺が言う。


「だから直接来た」


ロイドが頷く。


「分かりやすい」


セリナが笑う。


「逆に楽だな」


リナは静かに座っている。


だが。


手は震えている。


「……アルク」


小さな声。


「大丈夫だ」


俺は短く言う。


でも。


分かっている。


これは――


「最後の一手だ」


―――


その時。


扉が開く。


「遅くなったわね」


ミレイア。


だが今回は違う。


空気が違う。


完全に。


「決めたのか」


俺が聞く。


ミレイアは笑う。


「ええ」


一歩前に出る。


「私、こっちにする」


沈黙。


「いいのか?」


「いいのよ」


一拍。


「負ける側にいる趣味はないの」


その言葉。


軽いようでいて――


重い。


「で?」


セリナが聞く。


「何持ってきた」


ミレイアが紙を出す。


「クロードの“裏”」


空気が変わる。


「……これ」


ロイドが目を見開く。


「全部違法取引じゃねぇか」


「証拠付きよ」


エリシアが静かに言う。


「これ、出せば終わる」


「ええ」


ミレイアは笑う。


「完全にね」


―――


翌日。


王都。


その情報は、一気に広がった。


クロードの不正。


違法資金。


非合法取引。


「……終わりだな」


ゼルヴァインが静かに言う。


一拍。


「切る」


その一言で、すべてが決まった。


―――


エルドラ。


「終わったか」


俺は空を見ながら言った。


ロイドが頷く。


「完全にな」


セリナが笑う。


「長かったな」


リナは――


少しだけ安心した顔をしていた。


「……よかった」


小さな声。


そのまま、近づいてくる。


―――


夜。


温泉。


今日は、完全に空気が違う。


戦いが終わった後の、静けさ。


リナが隣に座る。


そして。


迷わず寄ってくる。


完全に密着。


「……アルク」


「ん?」


「終わったね」


「ああ」


「ほんとに?」


「ほんとにだ」


その言葉に。


リナの力が抜ける。


そのまま、預けるように寄りかかる。


柔らかい。


温もり。


「……怖かった」


小さな声。


「知ってる」


「でも」


顔を上げる。


距離が近い。


かなり近い。


「もういいよね」


一拍。


「我慢しなくて」


その意味。


分からないわけがない。


少しだけ間。


でも。


もう迷わない。


「いいぞ」


その瞬間。


距離がゼロになる。


軽く触れる。


でも。


今回は違う。


離れない。


長く。


静かに。


リナの手が強くなる。


呼吸が混ざる。


「……アルク」


「ん」


「好き」


「知ってる」


少しだけ笑う。


そのまま、もう一度。


今度は自然に。


――誰も邪魔しない。


―――


エルドラは。


完全に勝った。


そして――


次は。


「その先」


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