091.「」
死闘を征したのはレドックスだ。
結果だけ語るならそうなのだが……。
経過はそんなに単純でも、一方的なものでもない。
たしかに先に押していたのはレドックスの方だった。
まるで生まれ持った本能を解き放つかのように、獣性をむき出しに。
荒れ狂う野獣のごとく、牙を突き立て爪を振るい、そのままイズンを圧倒していく。
このままではまずい。
想定を上回る力に、イズンは内心で焦りを覚えたのだろう。
やがて始められたのは、荊に絡め取ったアルメリアからさらなる血の収奪だ。
すると一気に力を増し、今度は逆にレドックスを追い込んでいく。
喉が潰れてまともに声を出せず、アルメリアはその状況をレドックスに伝えることができなかった。
もういいから逃げてと、そう訴えることさえも叶わない。
そして――。
『口ほどにもないねぇ』
ついにレドックスが捕らわれ、首で持ち上げられたとき。
勝敗は決してしまったものとアルメリアは疑わなかった。
このまま彼がどうなってしまうのか。
結末を思うと恐ろしくて、とても直視できず。
(レド……!)
顔を背けかけた、そのときだ。
「チッ、しゃあねぇな。さすがに飛ばしすぎだろーが、こうなったらやるしかねぇ。――まァ、いけんだろ。多少なり荒っぽくはなんだろうが……」
握っていた錆刀、それをレドックスが高々と持ち上げたのは。
『はァん? 何をさっきからブツブツと……遺言かい?』
『ウダウダうっせぇ。オメェも気張れ、腹くくれ』
訝しげにしているイズンの問いかけに低く唸るように告げ。
「――ぶちかませ、シャンバラ」
それが決着の合図となった。




