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088.「」


 それから間もなく。


「じゃあねアルー、また明日ー!」


 手を振りギルダたちと別れたアルメリアは1人、夜の森へと足を向けていた。


(まさか、こんなことになるだなんて……)


 さすがに予想外だ。

 ちょっと行って帰ってくるつもりのはずが、こんなアクシデントに見舞われようとは。


 ため息が出る。

 おかげで洗いざらい、白状せざるを得なくなってしまったではないかと。


(だけど……)


 それで良かったことがひとつだけある。


『私のせい、なんです……』


 ちゃんと直接、謝意を伝えられたことだ。

 そうすべきなのではないかと思いはずっと、心のどこかに抱え続けていたから。


 でも言えなかったのは……。

 それをすれば否応なく、この身がマンドラゴラにつらなる存在だという事実に触れざるを得なくなるからで。


 それでいつまでも遠ざけてしまった。

 ついに打ち明けることができないまま、ズルズルと今日まで。


 だからその点についてだけは良かったと思う。

 また1人、秘密を知られることにはなってしまったけれど。


(これで良かったんだよね……)


 遅かれ早かれ、こうなっていた。

 こうすべきだったのだと、少し吹っ切れた気持ちでもいた、そのときだ。



「なァに辛気しんきくせぇツラしてやがる?」



 頭上から声がしたのは。

 野獣がグルルと唸るような、それは低く、くぐもった声。


 しかし、なかなかに的を射た例えだろう。

 なにしろ見上げたそこにあったのは。



「――ピィスケ」



 黒々とした毛並みに覆われ、今にも牙を剥いて飛びかかってきそうな狼の頭なのだから。


 ちなみにその呼ばわれ方はとても不本意なのだが。

 何度言っても直してくれないので、もう諦めている。


 故にそこは触れずに、スルーして。



「ううん、なんでもない。ちょっと考えごとしてただけ」



 今やすっかりお馴染なじみにして、お決まり。



「こんばんは。お待たせ、レド」



 夜ごと交わされるようになったそのフレーズを、今宵こよいもまた挨拶代わりとするのだった。

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