086.「」
結局――。
それからアルメリアが、ライナルトと言葉を交わした時間はさほど長くない。
途中でコンコンとノック。
「どうした?」
「それが……」
ライナルトが応じると、衛兵らしき人から耳打ちでごにょごにょされる。
戻ってくるなり。
「残念だが、そろそろ時間切れだな。君の友人たちが心配して、会わせてほしいと申し出ている」
とのこと。
きっとギルダたちだろう。
ライナルトが一番気になっていただろうことは、かなりのダイジェスト版とはなったがすでに話し終えている。
パーティはまだ続いており、その主役であるライナルトが長く戻らないのも不自然だ。
「今日はいったん、ここまでにしよう」
そういうことになって、ようやくガチャリと手足の錠を外してもらえた。
「……そうだ、ところでまだ一番肝心なことを言っていなかった」
帰り道。
少し一緒に歩いていたところ、思い出したようにライナルトが言う。
「肝心なこと?」
「ああいや、すまない。君にとって不都合なこととかではないんだ。ただ、お礼が言いたくて」
何かと思えば。
「アルさんのポーションのおかげで助かった。サンキューな」
今さらだった。
「ずっと伝えたかったんだが、なかなか言うタイミングがなくて」
「いいえ、お気になさらず。避けてたのは私ですから。それにすぐ治してあげることも結局できませんでしたしね。思ったより毒が強力だったみたいで」
「いや、それでも十分過ぎるくらい助かったよ。それに、ジルのことも……」
都合、公にはされなかったが。
岩窟で何があったのか、彼もライナルトにだけはその真相を打ち明けていたのだろう。
だがそれも、モノのついでにすぎない。
「それはまぁ、こっちにも残業の恨みがありましたから」
「え、残業……?」
「いろいろあったんですよ。とにかく成り行きですので、お気になさらず。……ところでさっきから気になってたんですが、アルさんってなんです?」
「決まってるじゃないか。親しみを込めて、愛称だよ。ダメか?」
「まぁいいですけど」
そんな雑談をしているうちに、パーティ会場に付く。
いったん一次会はそろそろお開きといった雰囲気か。
「では今日のところはこれで失礼しますが……。ところであの、このことってジルクリフさんには……?」
「安心してくれ。部分的に話す内容もあるとは思うが、君の不利益とならない範囲に必ず留める。とくに……」
そこで言葉を切って、キョロキョロ。
わざわざ付近に人目がないことを確かめてからライナルトは続ける。
「君が実は"例のアレ"って辺りは絶対にな」
「では、そのようにお願いします」
そうして言葉を交わし終えると、アルメリアから先にパーティの賑わいへと戻っていくのだった。
「あっアル、心配したよ! 大丈夫だった!?」
見つけるなり駆け寄ってきた友人たちの迎え入れに「ごめんごめん。うん、大丈夫だよ」と笑顔で応じて。




