084.「」
「……あぅ?」
夢を見ていた。
パチリと目を覚ますと、そこにあったのは見慣れない天井だ。
見知らぬ間取りの一室。
その片隅にあるベッドに寝かされていると、最初はてっきりそう思ったのだが。
「あれ、ここって……?」
よくよく見返せば、そうでもない。
調度品はわずかで、整然と置かれているだけにしろ。
(どことなく見覚えというか、既視感があるような……?)
気がする。でも、どこで?
少し記憶を辿れば思い出せた。
そういえばここは過去に一度、忍び込んだことのある病室だと。
(そっか、ライナルトさんを解毒しにいったときに……)
ついでに装いは変わらず、ギルダに借りたドレスのままだった。
おかげで直前の記憶もすぐに繋がる。
「そうだ、私……」
(お酒を頭から被って……)
そのまま昏倒してしまったのだったか。
気を付けていたことだ。
なにせ自分はお酒にめっぽう弱い。
元から酔いやすいのもそうだが、肌にかけられただけでも体内に吸収されてしまうから。
『ところでそのパーティって、お酒をかけあったりしないよね……?』
『え、お酒ですか? えぇ、さすがにそこまでハメを外す催しではないと思いますが』
念のため、事前にそんな確認もとっておいたほどなのに。
(まさか、あんな……)
アクシデントに見舞われようとは。
心なしか、少し頭も重い。
とりあえず体を起こそうとする。
あたたと頭痛を抑えかけたのだが。
そのときようやく気付いた。
ジャラリと金属音に加え、なにか動き辛いと思ったら。
「うんっ?」
――手錠。
らしき拘束具が両手首にガッチリ巻きついていることに。
「え、ちょっと……! なにこれ……!?」
またガキンとなって見てみれば、両足もしっかりベッドに括り付けられているではないか。
(拘束されてる!?)
しばらくガチャガチャやったけど、外れない。
魔法も使えなかった。
それもそのはず。
「無駄さ、その手錠は魔封石で造られてる。外さない限り、荒っぽいこともできないよ」
言いながら部屋に入ってきたのは金髪の青年、ライナルト・ガレイアだ。
近くにあった丸椅子を引き寄せ。
「よっこらせ」
いまいち緊張感に欠けるかけ声と共に、ゆるやかに腰を下ろす。
それから視線をアルメリアへと定めつつ、とても落ち着いた声音で告げるのだった。
「これでようやく、君と落ち着いて話ができそうだ」




