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083.「」


 少し……。

 ほんの少しだけ、夢を見ていた。


 それはアルメリアがある男と出会い、なぜか生活を共にするようになるまでの、ちょっと不可思議な成り行き。


 キッカケは些末なことだった。

 彼はこちらに随分なケンカ腰で挑みかかってきて、ものの見事に返り討ちにされてしまったわけだが。


「あと言っておきますけど、私にはまだ今日使わなかった最後の奥の手もありますからね」

「あァ? 奥の手だァ?」


 そのときアルメリアが思い付きで言ったことを、彼がそのまま間に受けてしまったのである。


「そう、私の最終奥義よ。これを受けて生きて帰れた人なんていない必殺技なんだから」


(とか何とか言っとけば、もう近づいて来ないでしょ!)


 なんて思いながらテキトウに吹いたホラなのだが。

 どうもそれが完全なる逆効果で、彼の闘争心に火を付けてしまったらしい。


 とんでもなく負けず嫌いな彼は、その後もしつこく挑みかかってくるようになってしまった。


 それが関係の始まりだ。

 そこからもまぁ、いろいろあった。

 かなりズルズルいった末、アルメリアは体調不良に。

 最終的には。


「わざわざ通うのもダリぃし、二度手間だかんな。俺も今日からこっちに棲みつくぜ。いいな?」

「えっ?」

「庭借りんぞ」

「ちょ、ちょっと待って。住むってここに!? 庭で寝るの!?」


 一個屋根の下でこそないものの、ズカズカと生活スペースを共有するようにまでなってしまう。朝起きてカーテンをシャッと開ければ、半裸で木刀を素振りをしている彼がいるのだ。


「なんでこうなっちゃったんだろ……」


 いまいち現実味が伴わないまま、たまに零してしまう口癖とともに頭を抱えたもの。


 しかし、そんなある日のこと。

 事件は起こる。


 ずっと狙われていたのだろう。

 暗い水底を這うように、地中奥深くからジワジワと領域を広げながら――。


 彼女・・がすぐそこまで忍び寄ってきていることに、アルメリアはまるで気付けていなかった。


 そして簡単な話だ。

 その窮地をアルメリアは、他ならぬ彼に救われたのである。


 無数のとげに裂かれた肌は血に濡れ、荊の檻に吊された姿はまさしく見せしめそのものだった。



(どう、して……?)



 こんなことになってしまったのか。

 どうすればよかったのか。


 答えが見えず、ポタリと涙が零れた。

 意識が闇に沈みかけた、そのとき。



「よぉ、オメェ……。やっと見つけたと思ったらよォ」



 見上げた頭上から低く、その声が響く。



「何を勝手にくたばりかけてやがる」

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