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073.「」


 魔樹の根が体の奥深くにまで侵入し、魔力を絞り尽くされたことの結果だろう。


 戦鎚のグランダム。

 最後の言葉とともに力を失うと、その身はやがて音もなく硬直する石像へと変じていった。


 石化したそのハ腕の巨躯きょくを見上げれば、表面からパラパラと砂粒がこぼれ落ちてくる。


「ふぅ……」


 その最期さいごを見届け、ひとつ短く息を吐くと、アルメリアはくるりときびすを返した。


 気を取り直すように向かったのは、剣を支えに辛うじて膝立ち。

 なおも倒れまいと踏ん張っていたジルクリフのもとである。


 彼は見ていただろう。

 己が身を稲妻と化し、ついにグランダムの胸元にほころびを穿うがった。しかし代償に振るわれた戦鎚を避けきれず、深傷を負ってしまう。そうしてトドメを刺されそうになってから自分が乱入し、グランダムを打ち倒すまでの始終を。



(成り行きとはいえ、大ピンチのところを助けてあげたんだから、しおらしくお礼の一言くらいは聞けるのかしら……? 最低でも疑ってゴメンくらいは欲しいわよね)



 なんて皮算用していたところ。

 まさかだった。


「ぐっ……!」


 シャリン。

 体に鞭を打つように立ち上がり、なおも剣を向けられたもので。


 もはや驚きを通り越して呆れる。


「あの……一応私、命の恩人のつもりなんですけど。なんで刃物を向けられてるんですか? 見てましたよね。私があの大きい人をやっつけるの。それとも実は、膝を付いたまま気を失ってたんでしょうか?」


「たしかに見ていたが……。それは貴様が敵でない証明にはならんだろう」


「はぁ、つまり……。このまま私が、あなたにも手を下すのではないかと? 何のために?」


「魔女の考えなど知らん。とにかく警戒はしておくべきだ」


「ま、一理くらいはありますかね。もっとも、今のあなたじゃ警戒したところでどうにもならないと思いますけど、それはさておき」



 残念そうに眉根を曇らせ、一定の理解は示しつつアルメリアは続ける。



「2つ、あなたにお伝えしておきたいことがあります」


「伝えたいことだと……?」


「……いえ、今のやり取りで3つに増えましたね。とりあえず追加分から伝えると、私はあなたの敵ではありません。べつに何もしませんから、ひとまずそれを下ろしてほしいですね。ていうか、はぁほんと……。なんでこんな警戒心マックスの野良犬を宥めるようなこと、私が言わなくちゃならないんだろ」


「野良……っ! 誰が……!?」


「ほら、はやくー。どうせ今のあなたじゃ逆立ちしたって私には勝てないんだから、ちゃっちゃっとしまって杖代わりにしてください。辛いでしょ、立ってるの」


 手をぱんぱんやってうながすと、とても渋々そうにしながらジルクリフは応じた。


「よろしい。二つ目はまぁ、一応お礼……というかねぎらいですね」


「労い?」


「あなたがグランダムの胸元に付けた傷、あれがなかったらもう少し手間取ってたと思いますので。お疲れ様でした。はい、3つ目〜」


 もう少し詳細には、その傷が突破口になって根が入りやすかった的な話だが。


 時間もあまりなさそうなので、そこはさらっと。

 端折って、いちばん大事な3つ目に進む。


「たぶんもうすぐ此処が崩れます」

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