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070.「」


(あれ……? なんか思ったより、手強てごわい……?)


 対グランダム戦が幕を開けて間もなく、それがアルメリアのいだいた率直な感想になる。


 正直なところ、もっと早く決着を付けられると思っていた。

 グランダムについてはジルクリフとの戦いぶりも見ていたが。


 まぁ何というか、力任せ。

 腕が六本もあるのをいいことに、ひたすら数にモノを言わせるだけのゴリ押しだったからだ。


(もし仮に覚醒……(?)したグランダムの力があまりに圧倒的とかで、この先の脅威になり得そうなら……)


 ジルクリフとの共闘。

 それも視野に、仕方なく腰をあげる展開もあったかもしれないが。


「大丈夫そうね」


 それが初期判断だった。

 やっぱり言動や見てくれ通り、グランダムの危険度はムシウルやセレビネラに比べてずっと低い。


 たとえるなら敵のなかで真っ先にやられて。


 『えっなに、アイツもうやられたの!? やだウソでしょ、マジ信じらんなーい! ちょーウケるんですけどっ!』


 とか


 『ま、しょうがなくない? アイツ、私たちの中で一番弱かったしぃ』


 とか言われてしまう脳筋のうきんキャラだ。


(このままもう少し放っておいて、お兄さんが大ピンチとかになったタイミングでテキトーに助けに入る。……それでいっか)


 だから興味関心もなく、ちょこんとその場に三角座り。

 見学を決め込んでいた。


(いいところで助けてあげれば、ヘンな疑いも晴れるでしょ。晴れるわよね……?)


 あくまでアルメリアの立場は中立なので、その場合でもグランダムには手を出さない。


(もう、早く終わんないかなー)


 ジルクリフを連れていつでも撤退できるくらいの準備しかしていなかったが。




 事情が変わった。




(それにしてもグランダムは、そんなにたくさんの魔力をいったいどこから補充したのかしら……?)


 ふと沸いた疑問の答えが、まさか自分のポーションだったことを知る。


「よくも……。よくも私が……私たちがあんなに、一生懸命作ったポーションを、そんなことのために……!」


 プチプチと青筋が浮き立つ。


 ちなみに――。

 アルメリアはポーションを一本仕立てるごとに、自身の血を二〜三滴ほど垂らしている。


 飛ぶように売れて毎日、百本単位で完売してしまう効果抜群のポーション。

 その生産を間に合わせるため毎夜、血を抜いているのだ。

 シリンダーにして数本分も。


 よって文字通り、アルメリアのポーションは身を切り売りして必死に作っている代物。楽ではない。おかげで両腕には注射針の跡だってたくさん残っている。


 なればこそ、余計に腹立たしかった。


「そんなことのためにいいいーッ!!!」


 妖華を呼び出し、怒涛の勢いで攻め入る。


(もうあったまきた! 絶対、許さないんだから! このまま一気に終わらせてやるわ……!)


 そのつもりだったが。

 これが意外とすんなりとはいかなかった。

 思いのほか手強い。(冒頭に戻る。)


 まずグランダムは大きい。

 サイズ感でいうと、教科書とかに出てくる岩壁に彫り込まれた大仏様くらいあるだろうか。


 とかく巨躯きょくを誇っていて、ずっと見上げてるとだんだん首が痛くなってくるレベルだ。


 だから荊で戦鎚を封じようとしても、伸び上がってから絡み取るまでにどうしても時間がかかる。


(おまけに腕が六本もあるせいで……!)


 下の腕を押さえ込んでも、すぐに上の腕から断ち切られてしまうのだ。


 そして厄介なことがもうひとつ。

 本人も自信たっぷりに豪語してきたことだが。


「貴様には決定打がないッ!!!」


 そう、グランダムはとてつもなく堅かった。

 荊には無数の棘があり、並みの巌であればひと打ちで粉砕し得るほどに強靭だというのに。


(嘘でしょ、これだけやってぜんぜん効いてないの……?)


 グランダムはほとんど無傷。

 唯一の傷と呼べるのは、彼の胸元――先ほどジルクリフが全力の魔力を込めて放った雷槍の痕跡くらいのものだった。


(もう2〜3発、同じくらいのを当てれば壊せそうだけど……)


 チラと見やったジルクリフはすでにボロボロの満身創痍。

 もう動かせそうもない。


 そこでアルメリアは、2つほど手を打つことに決める。


 その1つがこれだ。



「ああやっぱり、ぜんぜん気付いてないんですね」



 これでトドメとばかりに、ゆらりと戦鎚を振り上げたグランダム。

 その頭上がドゴォンと、突如として粉砕する。

 ワラワラといばらが溢れ出す。


「下から届かないのなら、上からも攻めればいいだけの話でした」


「なに、どういうことだ!? なぜ上からも荊棘いばらが!? ……はっ!?」


「当然ですよね。だってこの岩窟は、そもそも地下にあるんですから。まぁかくいう私も、さっきまですっかり見落としてましたけど」


 いて言うなら、少しだけ予想外の展開はあった。


『刮目せよ! とくと見届けるがよい! これが我の、真の姿だああああッ!!!』


 直前になってさらに腕がもう一対いっつい、増えたのだ。


『……まぁ、ありがちね』


 とても冷めた気持ちで見ていたが。


(作戦が狂うほどじゃないし、まいっか)


 ヨシとする。

 ともかく。


「おのれ、小癪こしゃくなマネを……! こんなもの、まとめて叩き潰してくれるわああッ!!!」


 どうにか振り解こうと抵抗するグランダムだった。

 しかし、それを許すアルメリアではない。


 同時にボコンと、グランダムの足元からも追加の荊が噴き出して――。



「おのれ……おのれえええええーッ!!?」



 天井から上半分の4本、地上から下半分の4本を同時に絡め取り、ようやく全ての戦鎚せんついを制圧することに成功する。


「思ったより骨は折れましたが――これで終わりですね。それともまだ、隠してる追加の腕がありますか?」


 ついにはガクンと膝を折らせ、悠々と勝利宣言を突きつけてやったが。

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