069.「」
その瞬間、グランダムは勝利を疑わなかった。
直前、戦鎚を避けきれなかったジルクリフは壁面にめり込むほど強く全身を叩きつけられ、突き立てた剣で辛うじて体を支えるのがやっとの状態。
「銀剣、ジルクリフ・ガレイアよ。貴様は最後まで己が誇りを失わず、勇猛果敢に戦い抜いた。我が名敵として、その名は深くこの魂に刻まれるであろう。誇れ、そして幕引きだ。何か言い残すことがあらば、述べよ」
これぞまさしく武将の口上みたいな、堂々たるセリフを言い放ち。
(決まった……!)
引導を渡さんとしていたところ、まさか。
まさかだ。
「ムダに残業させられた怨みもありますからあああッ!!!」
ドドドドドドと。
割ととんでもない物量で、アルメリアからの横槍がなだれ込んでくる。
せっかく恰好の付いた決着らしい雰囲気をぶち壊される。
そして――。
「……っ!?」
交戦の最中に悟ったものだ。
一見いたいけな少女に過ぎぬと思っていた少女、アルメリア・リーフレット。その正体こそが、件の荊棘の魔女に他ならなかったのだと。
『いいな、グランダム! おまえだけは絶対に――!』
同時に想起される、かつてムシウルやセレビネラから下された厳命もあった。
しかし――。
「そうか……。なればこそ、此処が我の……」
戦友の仇を討つため、グランダムはアルメリアに突進する。
そしていま、ついにこの局面を迎えたのだ。
にじり寄り、ようやく追い詰めた仇敵に戦槌を付きつけて。
「その命、頂戴するううッ!!!」
八本もある戦鎚。
そのうちの一振りをブォン、高々と振り上げた。
叩き付けようとしたのと、同時のこと。
「ああやっぱり、ぜんぜん気付いてないんですね」
得物を振り上げたグランダムの頭上。
岩窟の天井がバコンと轟音と共に、突如として粉砕する。
「なにっ!?」
そこからまたも荊棘がニュルニュルとうねり出し、戦槌ごとグランダムの剛腕を絡み取ったのは。




