068.「」
もはや疑いようもなく。
眼前の敵はアルメリア・リーフレットに他ならないらしいが。
「ぐぬぅ……ッ!? お、おおおおおおッ!!?」
六つ腕を振り乱し、押し寄せる物量をひたすら手数で捌きながら。
(落ち着け、落ち着くのだああ……ッ!)
グランダムは必死に、自身に冷静さを言い聞かせていた。
意表こそ突かれはしたが。
状況は決して、劣勢とも言い切れないからだ。
(たしかにこれら荊棘は夥しく、一本ごとにして侮れぬ強靭さだ……! ひとたび絡め取られようものなら、我とて振り解くことは至難であろう……!)
しかぁしッ!
「所詮はそれまでのことよォッ!!!」
ついに踏みとどまり、目まぐるしく戦鎚を乱舞させながら。
「この勝負、勝気は我にありッ!!!」
ズンと踏み出した一歩とともに高々と言い放ったのは、如何にしてもアルメリアがこちらを堕としきれないと確信を得たからだ。
第一に。
「貴様には決定打がないッ!!!」
押し寄せる荊、そのすべてを打ち払うことはとても叶わないが……。
「事実、一部の掠めた荊棘とて、我にいささかの傷を残すには能っておらぬ!!!」
琥珀のなかで進化を遂げたグランダムの全身は、もはや以前までと比較にならないほど強化されていた。
全体的なステータスの底上げもそうだが、何より。
結晶と鉱石に覆われた肉体は極限まで硬質化し、鉄壁の防御を誇っている。
「そのような草縄ごときで、この難攻不落の城を崩せるものか。笑止千万にして愚の骨頂よ! 片腹痛いわあああッ!」
ズンとまた一歩、まえに踏み出す。
そして第二に。
「して、見誤るでないぞ! 我はまだ力の底を見せてはおらぬ!」
グランダムの形態には、まだ先があった。
「刮目せよ! とくと見届けるがよい! これが我の、真の姿だああああッ!!!」
ズムンと肩の肉が膨らみ、さらにもう一対の腕と戦鎚が顕現する。
計8本。
ただでさえ目まぐるしかった乱舞がさらに加速すれば。
「どうだああ! もはや付け入る隙もなかろう! これぞ究極の攻守を兼ね備えた、我の最終形態ッ! とくと見よ! 恐れ慄けッ! 恐怖に打ち震えるが良いわあああッ!!!」
ズンと一歩、また一歩。
荒れる雨風を凌ぐように、グランダムはジリジリとアルメリアとの距離を詰めていく。
(できれば"この姿を見せるのは貴様で~人目だ”とか言いたかったが、もう数えてないのでそこは断念。)
そのうえでグランダムは、さっきのアルメリアの言を反芻していた。
聞き逃しはしない。
『あなたもここで私が始末します』
つまり――。
「貴様がムシウルをやったのだな、荊棘の魔女よ」
「驚きました。とんでもなく頑丈なんですね、その体」
強がっているのか。
いよいよ眼前に仁王立ちしても、アルメリアは態度を崩さなかった。
「答えよ! ムシウルを討ったのは、汝に相違ないか!?」
「そんなに大きな声を出さなくても聞こえてますが……そうですね」
そこでアルメリアは視線を宙へと泳がせ、なにか考えるような素ぶり。
「そうだと言ったらどうするんです?」
「命乞いはおろか、反省の弁もなしか……!」
「先に手を出してきたのは、あなたのお友だちの方なので。そこら辺はちゃんとスジを通してるつもりですけど?」
「何より貴様は、互いの誇りと全霊をかけた武人の一騎打ちを穢し、踏みにじった……! その罪、万死に値するッ! 女とて容赦はせん!」
「聞いてないし……思いっきり男尊女卑。時代遅れだと思いますけど、そういうの」
「取らせてもらうぞ。我が戦友の仇」
見上げるアルメリアのまえで、物々しく戦鎚が持ち上げられて。
「その命、頂戴するううッ!!!」




