067.「」
夜な夜な足を運び、忍び込んだアルメリアのポーション蔵。
そこに納められていたポーション類を片っ端からガブ飲みし、グランダムはついに"進化の琥珀"を形成させるまでに魔力を蓄えた。
そして現在。
一番盛り上がる種明かしも終わり、あとは宿敵ジルクリフを打ち倒すのみと豪快に攻め入っている。
つい先刻までは勝利も目前だったはず、なのだが。
「ぐぬ、おおおおおーッ!??」
とんでもないイレギュラー、不測の事態が直後に発生。
それによりいま、グランダムは怒涛の勢いで押し返されていた。
てっきり二人きりとばかり思っていた決闘の場。
何故かそこに居合わせていたアルメリア・リーフレット、彼女の操る妖華の荊によって。
(なんだ、これは……!? 何事だ……!? いったい何がどうなっている!?)
――ちなみに。
グランダムが"眠り"に付いたのは、ムシウルの死を知ってから間もなくのことだ。
彼と言葉を交わした最後の日、ライナルトを始末したあと。
『僕はこのまま融合魔蟲を取りに行くからな。ここで一旦、別れよう。終わったらムシで連絡を送る』
しかしいくら待てど、その音信が届くことはついぞなかった。
悟る。
何らかのイレギュラーが生じ、ムシウルもまたやられてしまったのだと。
ライナルトの可能性はなく、ジルクリフもあり得ない。
ともすれば必然的に、一人しか残らなかった。
「レドックス・ガレイア……ッ!」
グリムガルド、そしてセレビネラを討ち取ったのも、その男だったはず。
つまり――。
(かつて一堂に会した同胞たちが皆、奴一人に……!)
だから誓ったのだ、報復を。
(この一騎打ちにて何としても、銀剣ジルクリフを討ち取る! さすれば残る敵陣は、銅剣レドックスのみ! 互いに一騎ずつ、雌雄を決する決戦の刻は必然と訪れようッ!)
かつてムシウルが持ち出した7つの駒。
そのうち4つが欠けた最終局面が、グランダムの脳裏に鮮烈に浮かび上がる。
或いは三つ巴の様相を呈するのかもしれない。
いずれにせよグランダムには激アツだった。
(乱戦の果て、力をもって覇を握るのはいずれの者か! 或いは知略を巡らせ、漁夫の利を掠め取る者が現れるのか! よい、これぞ戦の興奮にして醍醐味! 我が求めてやまなんだ臨場の気迫というものではないか! 血が滾り、胸が昂る! 魂が咆哮しておるわあああッ!)
六つ腕の戦鎚を乱舞し、それそれそれぃと。
もはやかつてのものとなってしまった好敵手、ジルクリフを追い立てたものだが。
なればこそ、解せない。
何故……。
何故まだあのポーション屋――アルメリア・リーフレットがまだ生きているのかと。
(ムシウルが殺めたはずではなかったのか!? それに、この荊棘の魔は……!)
セレビネラやムシウルから話だけ聞いていた魔女の術、まさにそのようではないか。
ということは、つまり……!
つまり……!?
「どういうことだああああッ!!?」
まったく解を見出せないまま、ズシズシズズズシン。
六つ腕を一斉に振り下ろし、絡み付く荊の束縛をいったんすべて振りきるグランダムだった。
ゼェゼェと呼気を荒らげながら、眼前の敵をじっと、鋭く見据える。
絡みうねる荊棘の渦。
その中心に立つ赤毛の少女はまるで、ただ一輪の花が気高く咲き誇るかのようにも映ったが。
(やはり、見間違いなどではない……!)
見れば見るほど、それはアルメリアのものに他ならなくて。
「な、なぜ……なぜ汝がここに……!? まだ生きて……! ムシウルが手を下したはずではなかったのか!?」
「あー、やっぱりそこもグルだったんですね。まぁ、そりゃそうですよね。そうじゃないわけないから、実はさっきも少し迷ってたんですけど……。いいでしょう、いま決めました」
「……っ!?」
「あなたもここで私が排除します。奪おうとしたなら奪われる覚悟も持つべきと、そのように考えておりますので。それにあなたのせいで、ムダに……」
「な、に……!?」
「ムダに残業させられた怨みもありますからあああッ!!!」
バキバキッ、ボコォン!
轟音とともにさらに地割れが広がる。
そこからブワリと追加の荊が溢れ、また束となって一斉に遅いかかってきた。




