066.「」
それから暫し、グランダムは悩んだ。
何せムシウルはもう、すっかりその気だ。
アルメリアをやる気満々。
「或いは、いっそのこと……」
本当のことを話そうかとも迷う。
『ムシウルよ、どうだ? ものの試しにそなたも一口、嗜んでみては。あれぞまさしく至高の名に恥じぬ逸品、実に美味なるぞ』
もし誘いかけるとしたら、そんな感じになるだろうが……。
控えた。
なにせムシウルは人間が大嫌いなのだ。
見通しは究極に暗い。
いっそあのポーション屋を捕らえ、我らの側に引き込んではどうか?なんて言ったところで……。
「まず応ずるまい……」
下手をすると"オマエふざけてんのか?"とか、マジのトーンで言われてしまいそうだ。
なので断念する。
しかし、そうか。
そうなると……。
「もう飲めんのかぁ……」
それだけが残念だった。
(この様子であれば、金剣ライナルト・ガレイアの出陣も遠からず……。遅くとも、数日のうちには控えよう……)
その数日でムシウルの考えが変わることは、もはや望めない。
今さらどうにもならないだろうし。
(正体を曝せばどの道、我も……)
潜入を続けることはできないのだ。
だったら。
「かくなるうえは……」
グランダムは決めた。
あくまで名目はポーションの破壊。
潜入作戦もいよいよ大詰め、その総仕上げとして敵陣に甚大なる損害を与えること。
「結びは盛大に飾ろうぞ! 最後にひと際大きな戦果を打ち立ててやろうではないか!」
もちろん表向きにはそういうことなのだが。
「今宵は、宴よ……!」
そういうことでもあった。




