065.「」
なればこそ口惜しかったものだ。
「なに、殺す!? 殺すだと……!? 待て、ムシウルよ! そのポーション屋とはもしや――アルメリア・リーフレット、あの赤毛の娘のことではないか……!?」
ムシウルからそうと方針を告げられたときは。
「あぁ……?」
すると、とても不機嫌そうに聞き返される。
「なにそんな慌ててんだよ。文句なんかないだろ」
「なんだ、随分と不機嫌そうであるな。その、やはりあれか……? ムシの居所でも悪いのか?」
「……悪いが、グランダム。いまオマエのくだらないダジャレに付き合ってやれるほど、僕の機嫌は良くないぞ」
「す、すまん! しかしどういうことかと、仔細を聞きたくてな」
「どういうこともクソもあるかッ!!?」
声を荒らげる。珍しくムシウルは怒っていた。
聞けばアルメリアの解毒ポーションのせいで、ムシウルの眷属――毒蟲たちが大量に駆除されているらしい。
ただでさえこのところ、ムシウルは機嫌が悪かった。
セレビネラが失敗し、引き継いだ魔女の説得だが。
ムシウルでも太刀打ちできず、追い返されてしまったのが先日のことで。
むしゃくしゃ、ピリピリしている。
(むっ……! むしゃくしゃ……! いや、流石にイマイチか……)
「……なんだよ」
「い、いやすまん。なんでもない、こっちの話だ」
ともかくアルメリアが邪魔なので、一刻も早く始末したいそうだ。
「大体、オマエにしたって何してるんだよ……!? 連中のポーションを壊すためにわざわざ冒険者のフリまでして街に潜伏してるんじゃないのか!? ちゃんと仕事はしてるのか!? 怠けてるんじゃないだろうなぁ!?」
飛び火もしたけれど。
出禁になったなんて言えない。
「む、無論だ! きっちりやっている! 奴のポーションには、我とて一目置いていたのだ!」
別の意味合いも込み込みで。
「名を記憶しているのがその証であろう!?」
「……そう言えば、たしかに珍しいな。グランダム、おまえがまともに人の名前を覚えてるなんて」
「当然よ! 云うであろう、敵を知るならばまず名前からだとッ!!」
「聞いたことないぞ。しかもなんだそのアタマ悪そうなフレーズ。大体、僕がしてるのはキャパの話だけどな」
「……ぬ、キャパ? なんだ、キャパとは」
「もういい、こっちの話だ」
そんなやり取りをしている間に、ムシウルの怒りも幾分か鎮んだらしい。
疲れたようにため息をつく。
「とにかく、そういうことだ。あのポーション屋を排除しない限り、これ以上はこっちがムダに消耗するだけ。もうやってられるか、ウンザリだ。――さっきアルメリアとか言ってたか? ソイツの優先順位を引き上げる。さっさとやるぞ」
「お、女子を手に掛けるは武士として、その……誇りを汚す行いとなるが故だな……」
「はっ、安心しろよ」
吐き捨てるようにムシウルは言った。
「こっちは散々、鬱憤を溜めさせられたんだ。あのポーション屋も僕がやる。直々に手を下してやるよ、あのクソ女が……! クソ女2号だッ!!!」
「……い、今から行くのか?」
「いや、どうせ崩すならいっぺんにやる。ヘタに動いて警戒されても面倒だしな。金剣もそろそろ釣れる頃合いだろう」
そうしてアルメリアの処刑期日は定められたのだった。
「奴を片付けたら、すぐにでもやるぞ……!」




