表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/123

109.「」


「なぜ……」

「はい?」

「なぜ俺がここにいるとわかった?」

「だって、さっきライナルトさんが誰か連れてくるって言ってましたし。どうせあなたのことだろうなって」

「どうせだと……」

「そしたらドアの前で気配が止まったんですよ。ピタって。そのままいつまでも動かないで、ジッとしてて。怖いじゃないですか。もし外にいるのが本当にあなただとしたら、尚さら。それで確かめにきました」

「おまえは俺を何だと思っている?」

「逆に聞きたいですけど、何と思われてると思ってるんです? まさか安心して近くに身を置ける相手だとでも?」

「それは……」

「これくらいの警戒はされて当然でしょう。むしろ足りないくらいです。私からすればほとんど通り魔か凶悪犯みたいなものですからね、あなた。今だって正直、怖いくらいですけど」

「…………」

「私なにか、理不尽なこと言ってます?」


 久しぶりとなる対面はそんな掛け合いから始まった。

 少し畳みかけ過ぎてしまったか、ジルクリフは次第に口数を減らし、ついには黙り込んでしまう。


「……倒れたと聞いていたが、思った以上に元気そうで何よりだ」

「おかげ様でどーも」


 本音を言えば、このままそっ閉じしてしまいたい節もなくはないが。


「それで、何の用です?」


 用向きだけでも仕方なく尋ねたところ、なんと。

 なんとその手が、腰に刺された銀剣の柄にゆっくりと伸びて。


(うそでしょ……!? まさか本当にここで……!?)


 一瞬、息を呑むほどに慌てたが。

 ジルクリフはすぐに低く言った。


「違う。もうおまえと事を構えるつもりはない。これはただ、証明のためだ……」


 そして示される。

 ジルクリフがその柄をグッと強く握り込んでなお、銀剣アルシャジオがさやから抜けず、留まったままでいるその様が。


「え……? 抜け、ない……?」

「もう決して、おまえに刃を向けはしない。それがアルシャジオの意思ということだ。俺自身の答えでもある」


 そのうえでひとつ、深く息をつくと。

 静かに頭を垂れ、覚悟を固めたようにジルクリフはその謝意を表明するのだった。


「アルメリア・リーフレット。おまえに不当な嫌疑をかけてしまったことを謝罪する。本当に済まなかった」



 ◆



 それから少しだけ、ジルクリフと話をした。


「それ、本当に抜けないんです? 単に一人で勝手にプルプルして、そう見せかけてるだけとかじゃ……」

「そんな暇なことをするか」


 まず疑ったのは、ジルクリフが一人芝居を打っているだけという線だ。

 すると彼は「まだ疑うか、仕方ない」とも言いたげな顔になって、さらに力を込めて引き抜こうとする。


 今度は数センチほど白刃が見えた。

 でもたちまち刀全体が堪えるように、カタカタと小刻みに震え出して。

 まるで強力な電磁石でもついているかのように、またキッチリとさやに収まってしまう。


「ほぅ」

「これでどうだ」

「いや、どうと言われても……。丸っきりさっきのリプレイじゃないですか。あまり証明になってない気が」

「ではどうすればいい!?」


 理不尽なことだった。

 いくら力加減を変えたところで、それがパントマイムでない証明にはならない。だから疑っているだけなのに。


「失うのは一瞬、でも取り戻すには長い時間がかかる。信用ってそういうものだと思うのですが……」

「…………」

「私、何かおかしなこと言ってます?」


 返答はない。

 しかし今の実演が、物理的にちょっとおかしかったのも事実ではある。

 これ以上食ってかかるのは、こちらの片意地が悪いというものだろう。


(それに……)


 そのときアルメリアの胸に去来した感情は、ライナルトにすべてを打ち明けたときとも同じだ。こちらとしても、ジルクリフに謝罪すべき点はある。


 だから――。


「ライナルトさんからどこまで聞いてます?」


 その切り出しから、彼と少しだけ言葉を交わしたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ