102.「」
要塞ギルド【ガレイア】をめぐる攻防は、およそ終息を見たと言ってよいだろう。
蠱毒のムシウル。
戦鎚のグランダム。
夢喰いのセレビネラ。
狂哭のグリムガルド。
付近を勢力圏としていた敵軍の幹部格たちはすべて討ち払われた。
(残党もまだ少しいるようだが……。通常の冒険者たちでも十分、対処可能な範囲。掃滅は時間の問題だ)
よって、これはクリアと見る。
そして――。
その正体がアルメリア・リーフレットと判明した“荊棘の魔女”も先日、銅剣レドックス・ガレイアの手によりついに討たれたと――そういうことにした。
『そうでもしないと話が宙ぶらりんになっちゃうので。あとは魔女をやっつけるだけだー!とか張り切られても、困りますしね』
アルメリアたっての希望だったのもあり、そうさせてもらった。
それにしても――。
「まさか本当に、擬人化魔樹だったとはなぁ……」
執務室の椅子にもたれかかり、ぼやくようにライナルトは呟く。
ちなみに最初にその仮説を口にしたのはルミナリスだ。
『おいおいルミ、何を言い出すんだ。いくら何でもそれは……』
ないと思ったんだけど。
言われてみたら思い当たる節が何点かあるし、いろいろと辻褄もあってくる。
(待ってくれよ、冗談だろ……? でも、これはもういよいよ……!)
何らかの擬人化魔樹であることは間違いない。
そう確信を得たのは、目のまえで酒を浴びたアルメリアが、そのままバタンキューと倒れ込んだときだったが、まさか……。
「よりによって、マンドラゴラそのものだったとは……」
(道理で……)
最初から警戒心バチバチ。
話もろくに聞いてもらえず、ほとんど門前払いで追い返されるわけだ。
(知らなかったとはいえ……。「羊はどこだ?」って、狼がそう羊飼いに尋ねに来たようなもんだもんなぁ……)
当時を思い返しながら、やれやれと首を横振りするライナルトだった。それが結局、まんま狼のレドックスと一番上手くやっていけてたというあたりがまた珍妙ではあるが。
さておき、魔女の件もクリアだ。
ついでに。
『しかし、その仲間のマンドラゴラたちというのはどうするんだ? 魔女がいなくなったとなれば、狩りに向かう冒険者たちも必ず出てくると思うんだが』
『その点はご心配なく。彼らはもう安全なところに避難させてありますから。場所は明かせませんが、頃合いを見て私の故郷に連れていくつもりです。あそこなら少なくとも此処よりは安全でしょうから』
とのこと。
なのでまぁ、通常マンドラゴラたちのことも任せておけば良いのだろう。
ということで、残る問題は1つだった。
それについて今、ライナルトはとても神妙な面持ちで悩んでいるところになる。
目下には王都から届いた、それなりに大事なものが入っているのだろうと一目で分かる、とても荘重そうな箱。
蓋はすでに空いていて、中央にはそこそこゴツくて重い、錆びた鉄製の首輪のようなアイテムが形どおりにきっちりと納められている。
その名も"従魔の首輪"というのだが。
「これをレドに、ねぇ……」
装着しないといけなくて。




