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101.「」


 本当に耳を疑ったものだ。


「こいつに紛れて街に入っちまえば、バレねぇだろ」


 レドックスからそんな提案を受けたときは。


(いやいや、いくら何でもそれは……)


 顔をゆがめて難色を示したものだが。

 結局、その約半月後――。


「ほんとに来ちゃった……」


 ようやく声の調子が戻ってきたところで、アルメリアが足を向けたのは、そう――要塞ギルド【ガレイア】である。


 そびえ立つ入場ゲートをまえに、我ながら何をしているのかと苦笑を浮かべながら。


 立ち止まってから、ペラリ。

 とりあえず見下ろしたのは、例のレドックスが持ってきたチラシだ。


 みんなで手を繋いだような手書きイラストのせいで、あまり緊張感が感じられない仕上がりとなっているが。


 要はポーション類が足らず、急いで人手を集めたいとのこと。


 またこの先、戦いが激化することに備えてだろう。

 冒険者や調合師をはじめ、さまざまな職種の人々がそこにガヤガヤと集まっていた。


「なぁ聞いたか? この辺りにいたっていう四人の幹部格たちのうち、二人はもう倒されたみたいだぞ」

「そりゃデケェな。誰がやったんだ?」

「レドックスさんとジルクリフさんだそうだ。ただ、そのときにレドックスさんが……」


 あるところでは。


「ところで本当なのか? この森のどこかにマンドラゴラが生えてるって」

「そういう話だが、どうだかな。俺は信じてないぜ?」

「でもその噂、どうやらマジみたいだぞ。なんでも魔女が守ってるとかって」

「魔女!?」

「おっかねぇらしいぞ。少なくともライナルトさんやジルクリフさんじゃ歯が立たなかったそうだ」


 またあるところでは。


「にしてもやけに人が多いな。こんなに集まったのか?」

「えぇ。なんでも"死の森"に立ち込めていた霧が晴れて、使えなくなってた街道が通れるようになったとかで。まぁ、そのおかげでわたくしも狩り出されてしまったのですけれど」

「道理で。おかしいと思ったんだ。ティーンレイク家つったらそっちの方面だもんな。しかし、なんでまた?」

「さぁ。詳しいことはまだ分からないそうです。穿うがった見方をしなければ森の主が倒されたと、そのような見解になるのでしょうが」

「そんなことあるのかねぇ。ま、とりあえず着いたぜ。道案内はここまでだ。それで良かったらだが、今度うちの店にも来てくれよ。ちょうどあんたと同じくらいの娘がいてな。何となくだが、アンタとは馬が合いそうな気がすんだよ」

「ええ。この度のお礼も兼ねて、必ずうかがわせていただきますわ。ハルジオンさん……でしたよね。本当に助かりました」


 あちこちでそんな話題が飛び交っている。


(魔女じゃないんだけどなぁ……)


 そこだけは何とも言えない気持ちとなりつつ。


「そこの御仁、少しよろしいか。この掲示に記された参集の場が、この地点で相違ないかを尋ねたいのだが」


(うわっ、あのフルメイルの人おっきいぃ……! 背もレドと同じくらいありそうね)


 遠目に見かけた屈強そうな冒険者に、そんなことを思ったりもした。


 さておき、気を取り直す。

 ちょっと緊張はあるが、今までほとんど人として生活してきたのだ。


(よほどおかしなことでもしない限り……)


 バレる心配はそうそうないはず。

 唯一の懸念点はライナルトとジルクリフにだけは顔が割れてしまっていることだが。


 それもこれほど大所帯に紛れ込めば、何とかなる気はした。

 そこは魔女と勘違いされているあたりを逆手に取ろう。


(大丈夫、自然に……。できるだけ目立たないようにしてれば……)


 胸に手を置き、スーハー。

 そう言い聞かせながら、アルメリアはそろそろと入場審査の列に並ぶのだった。


 骨折はまだ完治してはないけれど。

 研修期間とやらが終わるまでにはまぁ、なんとかなっているだろうと見込みで。


「アルメリア・リーフレットか。よし、書類は問題ない。入場の目的は?」


 聞かれたので、自然なにっこり笑顔で受け答える。


「ポーション屋です!」

ここいらで折り返していきます!

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