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気まぐれしょうもナイト【更新不定期】  作者: すっとぼけん太
29/30

029 その日、500円玉は無力だった

休日の午後。


欲しかったゲームが中古で安かったので、

2本まとめて買ってきた。


――いい買い物をした。


そう思いながら、財布を開くと。


紙幣、なし。

500円玉、ひとつ。


……まあ、いい。

帰るだけだし。


――◇――


駅に着いたあたりで、小腹がすいた。


いい仕事をすると、いつも腹が減る。


(なんかほしいな)


駅前のコンビニへ。


おにぎりを2つ手に取り、

ついでにポテトチップス(小)もカゴへ。


合計、450円。


(……いける)


(いや、むしろお釣りでブラックサンダーいける説まである)


そう確信して、レジへ。


バイト風のお兄さんが、いつもの笑顔で言った。


「673円です」


――え?


一瞬、時間が止まった。

そして、財布の中で500円玉をつかんだ指も止まった。


(いやいやいや)


頭の中で即計算。


・おにぎり2つ → 300円くらい

・ポテチ → 150円くらい


合計、450円。


(……あと、太っ腹で袋もつけてって言っちまった)


(いやいやいや)


(袋が200円のわけがない)


もう一度、表示を見る。


673円。


……。


(……負けてるやん)


――◇――


500円玉を握っていた指を、静かに離す。


慌ててケツのポケットからスマホを取り出す。


「PayPayで……」


封印を、破った。


そう、PayPay。


最初は使っていたが、

小遣い制の俺には危険すぎる存在。


クレジット連動で、


「どんだけでも買える」


という、悪魔のシステム。


一度、軽く地獄を見てから、

現金主義に戻したはずだった。


だが今回、やむなく再解禁。


ピッ。


(家計の崩壊音)

(※SE:ドォォォォン……)


――支払い完了。


(くっ……俺は今、未来の俺に借金した……)


――◇――


帰り道、考える。


まさか――


おにぎり2つで、500円を超える日が来るとは思わなかった。


コンビニのおにぎりなんて、

数年前は「軽く済ませる食事」だったはずだ。


それが今や、主役級の価格。


しかも俺は最近、

値段を見ないで買い物するようになっていた。


……いや、違う。


見えなくなっただけだ。


近くが。


そう、自然現象として。


――◇――


それにしても、色々と高くなった。


上がるのは物価。


下がるのは俺の可処分所得。


そして変わらないのは、小遣い。


……いや、むしろ体感では減ってる。


そんな中で思った。


食パン、強すぎないか?


あのクオリティで、150円。


6枚入り。


一方、おにぎり。


1個、250円。


(戦わせる相手、間違えてないか?)


もはや、


食パン=庶民の最終防衛ラインじゃね。


(俺の中の経済がバグってきた)


――◇――


【今日の教訓】


・PayPayは便利だが、

 「今月あといくら使えるか分からない」のが一番怖い


・価格表示が(あえて)小さいのは、

 たぶん気のせいじゃない(高齢社会の企業戦略?)


・おにぎり2つで300円の時代は、

 静かに終わっていた


・そして――食パンは、最後まで俺たちの味方だった



……6枚切りなら1枚25円。


明日の朝は、食パンにしとこ。


(たぶん、ジャムはなしで)


【了】

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― 新着の感想 ―
 そうですよね、今はブラックサンダーですら値上がりしていて気軽に買えない時代で、コンビニエンスストアのおにぎりはいつの間にか高級品になっていました。惣菜パンも……。  食パンは、チーズとマヨネーズを乗…
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