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第6話 ミレレ


最初の一週間、あっという間に時が過ぎて金曜日


今日が終わったら週末で休みという空気の中


たわいのない朝の数分間を過ごす社員食堂での会話も


少しだけ、いつもとは違う単語が口から出ている人が多い



そんな中、昨日と同じように

歴史データをAIに登録する入力作業スタート。


指示メールで送られてきた今日、精査するのは

ミレレ・ナ・ミレレというフォルダにあるデータ


[ milele : ミレレ ] 永遠


それを繰り返すと


[ milele na milele : ミレレ ナ ミレレ ] いつまでも、ずっと


プロポーズの言葉みたいなフォルダ名だなー


と想いつつ作業開始。



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人的要因 2b : オレ・サ・マーダー・ジュニア首相


[ milele na milele: ミレレ ナ ミレレ ]


 いつまでも、ずっと


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ザイスタン歴10年に政権樹立した

オレ・サ・マーダー一族はジロ族であった



ザイスタン国内の民族問題は植民地時代から続いていた


大きなくくりではハンデュ系民族しかいないのだが

植民地政府に都合のいい人々をジロ族として社会構造の上部に

都合の悪い人々をサブ族として被差別民族として分離した


その結果、帝国の国教による道徳観を受け入れたジロ族と

伝統的土着信仰のサブ族は、基本的な生活習慣が違うものになっていった



 ジロ族は一夫一妻制で避妊具や中絶で出産制限を良しとし

 女性は結婚したら家庭で家事に専念させ、子供は大きくなったら親離れ、

 年齢に関係なく実力者が出世するのが当たり前で

 人生で一番大事なものは、仕事と財産



 サブ族は一夫多妻制で、出産は全てを自然に任せるべき

 結婚した女性でも労働者として働かせ

 基本的に一族全員が同じ場所で一緒に生活、長老制で年功序列

 人生で一番大事なものは、宗教と家族



というように、色んな常識が逆であり

少数民族はサブ族に近い常識を抱えていたので

国内は完全に分断された状態となっていた。



ザイスタンでは独立後、公官庁で働く公務員は全てジロ族だった


サブ族は、ヤシ油、ゴム、コーヒー、木材、綿花などを栽培する農民や

半遊牧民などの底辺労働者



宗教的倫理観の違いにより善悪道徳などが違う民族が

同じ地域に居住した事が原因で発生した民族間紛争が頻発していた



ザイスタン歴8年から11年にかけて

ザイスタン東部に居住するフンデ、ナンデなど

複数の少数民族が居住する自治地域に

ザイスタン政府が流入してきた


少数民族はジロ族に対し、


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[ sijui maana kila kitu ni tofauti

 スィジ マーナ キラ キツ ニ トファウニ]


 何もかもが違うから わからない

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と政府の統治方針を受け入れようとはせず

ザイスタン歴12年に内戦へと発展したが


少数民族集合体ゲリラによる反政府活動を抑え

ザイスタン東部支配を目論んだ政府側の軍警察によって



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[ maisha yaliyotolewa dhabihu kwa shetani

 マイシャ ヤリヨトレワナ デハビフ クワ シャタニ]


 悪魔に捧げるための命

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というスローガンが繰り返された


 ここでいう命とは少数民族の命の事で

 国内に存在する悪魔への生贄として捧げる事で

 我等に平穏が訪れる


といった意味のスローガンだった。



排他的な少数民族が一方的に虐殺され滅ぼされる事で

ザイスタン東部の少数民族問題は解決した。


その時に軍警察の総司令官となったのも

主力部隊の兵隊も、増員採用されたサブ族だった。


サブ族は少数民族よりは社会構造ピラミッドの上位にいる

という意識を保守支配層となったジロ族により植え付けられていった。




ジロ族の多数派による民族問題に関する意識は、


 帝国がザイスタンを植民地にする以前に

 既に居住していた我等が先住民であり、国土は我等のもの


 他民族は隣国の革命などで流入してきた外国人


 ”ヨソモーノ”や ”イミーン”として

 ザイスタン国籍を与えられたとはいえ


 しょせんは外国人、いつかは母国へ帰国して

 国内からは、いなくなる民族。


 国は未来永劫、自国民として国内に居住する

 ジロ族を優先するのが当たり前だろう!


 ジロ族だけがザイスタン国民である


多民族への差別意識などの強弱はあったものの

ジロ族の、ほぼ全員に、この民族意識は浸透していた。



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[ Ukiingiliana na wajinga,

 maisha yako yatakwisha


 ウキンギリアナ ナ ワジンガ、

 マイシャ ヤコ ヤタクウィシャ]


 馬鹿と関わったら人生は終わりだ

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という、国民差別化を煽るスワヒリ語の格言すら語られた

この格言で言うところの馬鹿とは

サブ族や少数派民族を指していたのであろう。




ザイスタン歴26年、オレ・サ・マーダー大統領は


友好国として交流していた隣国アミーンと同じような

民族主義政策を施行した


サブ族の市民権制限が行われ

元少数民族の市民権と全ての参政権が抹消


ジロ族だけが、高級軍人と閣僚に増加する事になり

サブ族は軍からも政府からも見せしめのように排除


サブ族は、ジロ族のオレ・サ・マーダー大統領により

植民地政府時代より過酷な被差別民族に転落した。




ザイスタン歴36年初頭にヨソモーノはアミーン国内を拠点とする

サブ族を主要構成員とする反政府組織との連携を構築した。


ザイスタン歴38年から41年にかけて

少数民族の生き残りであるゲリラ組織が

各地でテロ行為をすることが常態となり、14,000人が死亡。


ザイスタン歴39年、ザイスタン国会は、ヨソモーノを含む

ルワスタン及びブルジにルーツを持つ全ての人々の

国外退去、強制送還を決定した。



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市場環境要因 2γ : オレ・サ・マーダー軍需産業会社


[ Mchezo kifo na Gangster mpya

 チェゾ・キホ ナ ギャングスター・ンピャ ]



デス・ゲーム & ニュー・ギャングスター 


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オレ・サ・マーダーは30年間に渡り

軍独裁政権の最高権力者として君臨していたが

アメカ・ロアシ間の冷戦終結と同時に

軍独裁政権による強権政治体系は前時代の遺物となった



ザイスタン歴40年、アフリコ指導者交代を望んだアメカは

オレ・サ・マーダー政府軍への支援を打ち切った。


国内総生産がマーダー政権下の32年間で

65%もの減少を見た事などの経済政策について無策な事が語られ

軍需産業だけが肥大化した経済システムへの不信から

国民は闇経済に依存している現状を憂う国内世論が流れた。


そのため、オレ・サ・マーダーは

軍独裁政権による一党独裁制の終了を公約として

経済構造改革を打ち出したものの


軍需産業での利権を所有する保守支配層による主張や策謀などが原因で

大規模な改革は進まず。支持者の離反を招くことになった。




アフリコに広がった民主化の流れは、内外からの圧力としてザイスタンにも及んだ


中央政府は弱体化し、オレ・サ・マーダー政権に対する内部からの抵抗もあって


首都キシャサからは距離があり

主要産業である鉱業の中心地であるザイスタン東部で反政府主義者が勢力を確立


最終的にこの戦争に勝利したローラン・マ・ダーニもまた、その一人であった。


他国支援もあって東部における反政府運動は活発化


オレ・サ・マーダー政権による統制がもはや不可能となりつつあった。


それぞれの思惑から周辺諸国が介入し、

反オレ・サ・マーダー勢力に対して工作を行うなど積極的に関与。



ザイスタン歴41年1月にザイスタン政府は東部の統制を失い


8月にオレ・サ・マーダー・シニアが前立腺癌を患って

帝国の病院に入院したあたりから事態は加速していく。


ザイスタン歴41年10月、人民革命党のローラン・マ・ダーニが

反政府勢力を結集して解放民主勢力連合 (AFDL) を結成

ザイスタン東部の結集地からキシャサに向かって進撃を開始した。



第一次ザイスタン戦争がザイスタンで勃発

ザイスタン歴41年11月から42年5月まで戦争は続き



武装蜂起当時、オレ・サ・マーダー・シニアは帝国で静養中で

ザイスタン歴42年5月まで、ザイスタンに帰国しなかったが


5月7日から8日にザイスタン情勢を協議するため

「中部アフリコ帝国連合7ヶ国首脳会議」が開催され

オレ・サ・マーダー・ジュニア首相が出席した。

オレ・サ・マーダー・シニアは、健康上の理由で

次期大統領選挙には出馬しないことを確認する声明を発表。


5月16日、首都キシャサに戻ったオレ・サ・マーダー・シニアは北部の宮殿に逃れ、

ローラン・マ・ダーニ議長が率いる内閣に権力が移譲され

オレ・サ・マーダーの一族は、一切国政に関与しない旨を発表


5月17日AFDL軍はキシャサに入城し

マ・ダーニ議長は「ザイスタン民主共和国」の樹立と国家元首就任を宣言


5月18日 オレ・サ・マーダー・シニア、モロコへ出国


9月7日 オレ・サ・マーダー・シニア、モロコで暗殺



・・・



オレ・サ・マーダー・シニア政権への支援は、


支援を打ち切ったアメカ撤収後に

支援してきたロアシと華国によるものであったが、


その物量は不明であり、敵勢力の進撃を阻止するに足るものでは無く

オレ・サ・マーダーが不正蓄財してきた

私財を巻き上げる程度のものだったと言われている。


オレ・サ・マーダー・シニアの不正蓄財は総額およそ50億ドルといわれ、

海外などに、豪華別荘や古城・豪邸を保有し、隠し銀行口座を設けた。

オレ・サ・マーダーに私物化された政権を揶揄する言葉として、

「オレ・サ・マーダー・シニアの個人資産は、ザイスタンの対外債務に等しい」といわれた。


国内では、中央アフリコとの北部国境付近の高原に自家用飛行場つきの巨大な宮殿を建設した。

この宮殿は「ジャングルのユーロッペ宮殿」と呼ばれ、

オレ・サ・マーダー・シニアが失脚間際に逃げ込むことになる。


また、カウレにも豪華な華国庭園と住宅を所有していた。

「アフリコ独裁者の典型」と評されていた。


それらの私財を、どこかの国の武器商人が権力維持のための

最期の悪あがきのための武器購入などに消えたとも


一族の長であるオレ・サ・マーダー・ジュニア首相が

父親を売って確保した帝国へ亡命し

グローバル資源取引商社の経営者や管理職に一族を組み入れ

一族を存続されるための費用に充当したとも語られている


オレ・サ・マーダー・シニアが

どこの勢力下の人員によって暗殺されたのは不明だった


あまりに色んな国の色んな勢力に憎まれ

排除すべき暗殺ターゲットとされていたからだった。



後年、オレ・サ・マーダー・ジュニアは語った。


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[ kifo ni ukimya wa milele

 キホ ニ ウキミャ ワ ミレレ ]


 死は永遠の沈黙

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「オレ・サマーダー・シニア大統領の死によって


 時代が産んだ色んな不都合な事実は永遠に葬られ

 誰にも語られる事は無くなった


 あの時代には、ああするしか国が運営できなかった

 最善な選択を父はしたと思う


 だが、あの時代は過去のものとなり

 当時、時代が産んだ統治流行は

 悪しき物として批判されるべき統治手法と


 二度と実行に移す為政者が存在しては ならない


 そう国際世論で語られている


 死者は反論しようにも、最早、反論できない


 全ては過ぎ去った過去の事となったのだ 


 ほとんどの人々の現在の現実には関係無い事で

 誰もが無関心になっていくのだろう


 そして、父の存在も過去のものとして忘れさられる


 だが、それで、いいと私は想う。」


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