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第5話 オシォ・ウマ

木曜日、朝っぱらから、大きな声で叩き起こされた


なんか知らんけれど、宿舎の隣人の宗教では

木曜日に、自分の周囲にいる人々に聞こえるような大きな声で


”今日も朝陽を見る事が出来た事を神に感謝します”


というような言葉から始まる、全部を唱えると90分くらいかかる

長い呪文を暗唱する習慣があるという事だった。


しっかし、これを、毎週木曜朝に?


ちょっと、誰か文句を言って、やめさせないかなぁ


と思ったのだけれども、朝礼の挨拶に


「各自、自分の信じる神に、今日も無事に仕事が捗る事を祈りましょう。」


という言葉があるくらい、


各自の宗教に関しては敬意を持つ事になっているので誰も何も言わない。


んー、なんだかなぁ、その暗黙の了解を壊してやろうかと思ったが


「まあ、いいかあ、目覚まし時計だとでも思えば」


と呟いて、自分に言い聞かせ、場の空気を読んで諦めた。



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人的要因 2a : オレ・サ・マーダー



[osyo umma : オシォ・ウマ] 非公開


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ザイスタン歴10年12月、セイ・ジーン病気療養中


暫定大統領代行という肩書きだったオレ・サ・マーダー陸軍司令官は


正式にザイスタン2代目大統領に就任した。



オレ・サ・マーダーが、ルンバのようにロアシや華国と接触して


親密な関係となる事を恐れたアメカ軍と軍需産業企業群は


冷戦状態にあったロアシとの勢力争いに勝つために


オレ・サ・マーダー政権下のザイスタン軍を支援


アメカ軍需企業は大量の軍用装備を売りまくった。



首相に任命された大統領の息子オレ・サ・マーダー・ジュニアは


ザイスタン歴14年にかけての国策事業推進でのテレビ演説などで


政治に関心と義務を持つ事が可能な国民階層に向け説いて回った



「偉大なる国家の父である


 オレ・サ・マーダー・シニア大統領が就任後に打ち出した素晴らしい思想



 オレサマイズムにより、ザイスタンでは


 子供からお年寄りまでの全国民がザイリアンとして


 国のために働く優秀で勤勉な労働者となって


 国内産業の発展に貢献する事が可能な愛国者となりました



 帝国植民地時代は、国内に国民による産業団体が存在する事が許されず


 労働者にすらなれない人々が人身売買で


 外国に作業用奴隷として売られる事すらあった時代からすれば


 これは素晴らしい進歩です。



 オレ・サ・マーダー大統領が率いる革命人民運動党、MPRは


 ザイスタン歴11年に独立後のザイスタンにおける


 唯一の合法的な政党として設立されました。



 今まで我が国を蹂躙してきた


 一部の大企業と利権所有者だけが得をする資本主義国や


 国や地域の幹部公務員だけが繁栄する共産主義国



 その主義や思想は、我が国に入ってくるべきでは無かった思想であり


 それを何も考えずに受け入れて国内に導入する事は

 我が国にとって自殺行為だったのです



 ザイスタン歴12年に始まった全国的な文化復興プログラムでは


 馬鹿みたいな文化である植民地時代に入ってきた帝国文化が一掃され、


 伝統的なアフリコ文化の素晴らしさを再発見しています



 我が国のための我が国による国家革命を支持するオレサマイズムこそが


 真に国家革命であり、本当に我等にとって必要な唯一の思想なのです



 優秀な我等の代表であるオレ・サ・マーダーの下、


 労働水準の向上、国の経済的自立が成されれば、


 我等は優秀で勤勉な真の愛国者として


 我が祖国の発展に貢献し、希望の持てる未来を手にできるのです


 我等の新しい歴史は誇りに感じられるものになり


 新しい素晴らしき伝統を作り上げ


 我等の旗の下に愛国者である国民すべてのエネルギーを


 我等の繁栄のために集めることが、今こそ必要な時なのです。



 クリスト教を信じた農村地区の皆さん


 クリスト教への宗教的献身が何かを皆さんにもたらしましたか?



 植民地政府の嘘を信じこまされてきた皆さん


 帝国は、この国から奪うだけで何も与えてはくれなかったでしょう



 オレ・サ・マーダー大統領こそが私たちの解放者でありメシアです


 今、私たちが信じるべきなのはオレサマイズムであり


 MPR、その首長であるオレ・サ・マーダー大統領です



 オレ・サ・マーダー大統領こそが我等の現人神なのです。」




オレ・サ・マーダー政権の最初の5年間に展開された

オレサマイズム運動は


その思想に反発を抱えたと判定された人々や地域首長を


見せしめに犯罪者として投獄したり、国外追放したりで


社会的に抹殺して強制排除を繰り返し


オレサマイズムという方針を受け入れた


従順な愛国者となった国民を国内に増殖させた。




・・・




オレ・サ・マーダー大統領時代、国民的娯楽は格闘技だった



キック・ボクシングとプロレスを一緒にしたようなコローシアイという


なんでもありといった感じの1対1勝負の格闘技が


唯一の娯楽であり国民的イベントであり


チャンピオンになれば国民的スーパースターとなった




スーパースターを夢見て子供時代から鍛錬をする男が大勢いたが


チャンピオンになれたり、挑戦者の座まで到達して

高額なファイト・マネーを手にするのは一握りの勝者



たいがいは、国内各地をドサ回りする挑戦者決定戦の予選イベントや


10代の子供を集めての地域別の格闘技大会で弱さを思い知らされ



警察軍という警察と軍が一緒になったような組織に警察兵として入隊したり



鉱山を経営する国営企業を頂点にした同業者団体傘下の


下請け孫請け会社に所属して力作業をする肉体労働者になったり



国内での一般消費者向け販売業のセールスになったり


というのがパターンであった。




男性国民は誰もが自分がなれなかった人気格闘家の事を語り


チャンピオンに憧れを抱き、強く勝てる男になる事を子供に語り



女性国民は、とにかく強くて勝てる男を賛美して


自分に息子が生まれたら、とにかく強く勝てる人間となるように育て


娘には、少なくとも同業者の内輪もめに勝てる男と関わる事を勧めた



何は無くとも家族の男に警察兵や肉体労働の作業員になれる体力があれば


最低限の暮らしは可能だし



安く使われて差別される奴隷のような弱い父親を持つ娘は


その巻き添えを受けて、強い父親を持つ一族に差別されて育ったため


自分の父親のような弱い男を嫌う女が多かった




一般消費者向け販売をする同業者団体から


鉱山を経営する国営企業と、その傘下の下請け孫請けまで


内輪揉めに勝ち抜ける同業者に舐められない強い勝てる労働者が


優秀な労働者として称賛されるようになるのが当たり前な風潮



それすら駄目ならば、一生、底辺労働者として


餓死しないギリギリの生活を送る日常が待っていたし


その家族も同じ日常を送る事になるからだった。




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市場環境要因 2β : オレ・サ・マーダー資源開発会社



[ Wale wanaoamini maneno yangu watafanikiwa,


  wale wasioamini wataangamia :



 ワレ ワナオアミニ マネノ ヤング ワタファニキワ、


 ワレ ワシオアミニ ワタアンガミア ]



 俺の言葉を信じる者は繁栄する


 信じない奴は滅ぶ



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国営資源開発会社のオーナーがセイ・ジーンから、オレ・サ・マーダーになってから


何が変わったかと言えば、それらの会社の管理職だった


それまでは、基本的に有能な働き者が一番出世して


次に無能な働き者を使うのが上手な有能な怠け者が出世していたが



オレ・サ・マーダーは有能な人間ではなく


自分が抱えた思惑通りに動く無能な人間を好んだ



 地下資源さえ枯渇しなければ、誰がやっても鉱山経営なんて同じ


 なら、自分の言う事を聞いて権力を持たせても大丈夫な


 自分の操り人形が最高経営責任者になればいい



 事業計画や経営基本管理、んなもんは、どうでもいい


 人間が集まって利害関係やら謀略やらを消化できる


 実際の内輪駆け引きで勝てる強いのが


 不平不満を黙らせれば、それでいい



というようなマーダー基本ポリシーの下、


嘘と内輪の駆け引きだけが上手な、実務では無能な働き者が出世して


国営企業のマネージメント層に増殖して


そいつらが更に同じような仲間を増やし



その部下は、どうやったら上司に好かれるかだけを考える


指示待ち型の仕事しかしないで、内輪もめに明け暮れる社員が増えた




会議で語られる事は、同じ内容



[ Mafanikio ni deni langu,  kushindwa ni jukumu lako ]


 マファニキオ ニ デニ ラング、クシンドゥワ ニ ドゥクム ラコ



 成功は私の功績、失敗は貴方の責任




言い方や表現は少し違うものの、誰もが同じような事を


同じように主張しているのが繰り返された。




政治も原始は呪術だったと言われるが


そういった部分が強くなって社会常識となって定着したのも、この頃だ




たとえば、唯一のスポーツ・ビジネスとして


全国で興行されていたコローシアイにおいても



医学的根拠に基づいたスポーツ医学によるトレーニング


などは金がかかるので不可能



なので、精神論と呪術に基づいて勝つためには、なんでもやる精神で


金のかからない強くなる方法論とトレーニングをしよう



といった常識が定着していた




政府に都合の悪い発言をした人間は


国を呪うような呪術の呪文を唱えた国賊の非国民として逮捕


社会的に抹殺され、刑務所に収監された事が


数日おきに新聞やニュースで報道されるのが当たり前になったため



余計な事をやらない人間が生き残れるという風潮が加速し



国や地方自治体の公官庁会計システムや


国営企業の社内管理会計システムなどは


帝国植民地時代やセイ・ジーン時代の踏襲で


様々な社内管理、品質管理や生産管理などは全く進歩せず



従業員の労働環境を整備する労務管理に至っては概念自体が無く



国に法人税などを納めるための税務会計をする部署や


相談先の税務署だけが立派な建物で所属員が優遇されたので



優秀な学生が就職先として選択するのは


税務署を頂点にした税集金システムのスタッフである公務員で


次が国営企業の管理職候補であった。




また、この頃になると債権を発行する国営銀行が設立され


ザイスタン国債や、地方自治体の債権、国営企業社債などを


発行するようになったが


それらの債権を所有しようとする海外投資家は皆無だった



いつ、またクーデターが発生して紙屑になりそうな


ババ抜きに使われる程度の債権な上に金利だけは帝国債権なみ


当たり前なように人気は集まらず



国営銀行が、一般国民から集めた預金で一般銀行に買わせる


マネーサプライなどの道具にする程度のものでしか無かった。



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