音楽の授業
軍需産業大学付属の第二高校という女子高に通う高校一年生
そこで文化委員というクラス委員になった長野です
地域名じゃありません、苗字です、ファミリーネームです。
文化委員とは音楽・美術とかの主要教科じゃない授業の
準備とかを手伝うクラス委員です
頑張っても内申書とかに関係無いからと
押し付けられたような気すらします
色々と面倒なので誰もやりたがらない役職です。
今日は音楽の授業です。とはいえ、そこは軍需産業大学付属高校
普通の高校じゃないので少し変わっています。
音響と言っても、色んな目的で発展してきました
たとえば、政治家が大勢の人間を集めて演説をするためのPA装置
他の地域では人気スターのコンサートとかで使用されていますが
軍需産業大学の学校区では
洗脳効果や扇動効果が、どれだけあるPA装置かを検証するために
”完全なる政治無関心層”
という状態な人々を集めて
扇動音周波数を仕込んだプロパガンダ映画を
一番、洗脳効果がある音域を出力できる音響装置で見せます
そして
”政治無関心層から、愛国義務保有層へ”
という目論見通りに洗脳できるかの実証実験などのために
独自PA装置のテストなどが音楽授業に組み込まれていたりします。
文化委員として音楽授業準備という名目での
雑務を押しつけられています。
授業は、”扇動音操作DJリミック合戦” です
扇動音周波数というものが世にはあって
”へーい、れっつ、だんす、べいべ 踊れや御前等”
という言葉を、扇動音周波数とともに流すと
聴いた人間が本当に踊ってしまう周波数について
先生が前回の授業で説明したので
今回の授業では、扇動音操作を
誰が一番上手に出来るかを競うようです
音楽の先生とともに長野は昼休みというのに
午後イチでの音楽授業のための準備のため音楽室にいました。
「まったくなー、一応、一通り理論を教えたのにな
理解してできる奴は少ないんだろーなー
わかってないだろうな。浅い・・人間が浅いからなぁ
そもそも扇動音を使う イコール ダンス
とかいう浅い考えなのが多いんだろうな
若いうちに深い熟考というものが出来るようになるのが
いい大人として生きていくためのコツだ
とはいえ、思想押し付けも違うと言えば違う」
何を期待したのでしょうか?
それは何か間違ってませんか。
と突っ込みそうになりますが言葉を飲み込みます。
それで少し嫌味を言ってみます。
「でも、ですよ? おかしな扇動をしたら問題なんでしょう?
学年主任とか監督不行き届きだとか騒ぎませんかぁ?」
「……長野、都合の悪い現実は見ない方がいいぞ」
呪いの言葉が浮かびます。笑顔のまま心の中だけで罵倒しました。
「それでなんでしたっけ。今回は扇動音の逆を流しておくんでしたっけ?」
「まあ、そうだな。扇動周波数音の逆効果のある癒しの周波数な音を
聞こえるか聞こえないかって程度の小さなBGMで流しておく
でな、どれだけ、それを押しのけて扇動できるかってワケだ」
そう言うと数分後のために、扇動妨害周波数な音が
教室内の全ての席で聞こえるかを確認します。
「長野のいる一番はじの席でも聴こえるか」
「えー。一応、聞こえてますけど」
・・・
というワケで音楽の授業が終わりました
最初に、どんな扇動をするかの目論見を先生にだけ宣言
最終的に誰が一番、効果的なDJプレイをしたかの判定は
先生によって判定され、授業の最後に発表されます。
今日の最優秀DJプレイは、暴露扇動
”クラスメイトの秘密を大声で暴露したいだろ御前等
言うたれ 言うたれ 言いたくなったら 言えーい”
というような、スローガンを完璧な扇動周波数でDJプレイして
音楽室内を暴露合戦の渦に巻き込んだDJが最優秀でした。
「しかし、クラス全員に自分の言う事で自己暗示をかけさせるとか
なかなかに色々といたな」
「大丈夫なんですか? 先生?
こんな暴露合戦を扇動って人間関係が壊れてません?」
終わった後、気になって質問します。
「いや、大丈夫、モスキート音に近い
ギリ聞こえる小さな音の洗脳周波数音を
あれ、今日、音楽の授業で何があったんだっけ?
で忘れるように
休み時間中から放課後まで
クラス内に流れるように音響設定したから
明日になったら全員忘れている・・はずだ。」
「……」
私は押し黙りました。
忘れさせるの? 強制的に?
んじゃ、この授業で勉強した事の意味って?
目の前が真っ白になって色んな言葉が浮かびます。
「どうした長野? いきなり黙って」
「ナンデモ ナイデスヨ」
「そうか、なんでもないなら、いいんだ。じゃあな」
先生が職員室へと戻っていきます。
来週からの士気高揚マーチング・バンド練習準備まで
さようならです。




